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押尾学の保釈金を用立てたあの人物、関係企業が破産!三井住友銀行が所得隠しに関与か

文=編集部
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押尾学の保釈金を用立てたあの人物、関係企業が破産!三井住友銀行が所得隠しに関与かの画像1ペブルビーチ(「Thinkstock」より)

「政財界のフィクサー」と呼ばれた熊取谷稔氏が久々に表舞台に登場した。

 熊取谷氏はバブル時代、当時の自民党副総裁、金丸信氏や自民党幹事長、小沢一郎氏と近かったといわれ、1988年に発覚したリクルート事件で有罪判決を受けたNTT元会長、真藤恒氏の側近として名前が挙がったこともある。

 パチンコ機製造販売のコスモ・イーシーを中核とする企業グループのオーナーである熊取谷氏は、そうした政界人脈を生かしてパチンコ業界にプリペイドカードを導入しようと監督官庁の警察庁に働きかけたことも有名だ。

 人脈は芸能界にも広がる。「麻薬取締法で起訴された元俳優の押尾学(2012年2月に懲役2年6月の実刑が確定、現在仮釈放中)の保釈金を用立てたのが熊取谷氏だった」として週刊誌などを賑わした。

 その熊取谷氏が再びクローズアップされたきっかけは、グループ会社の脱税事件である。

国税から所得隠しを指摘された直後に、会社は破産申請

 ゴルフ場運営会社やパチンコ関連会社など、熊取谷氏は約30社を実質的に経営しており、そのグループ企業のうち数社が東京国税局の税務調査を受け、不動産管理会社のインターナショナルイーシーが11年5月期に約200億円の所得隠しを指摘され、他のグループ企業も計30億円の所得隠しを指摘された。

 インター社は自社の不良債務を第三者に買い取らせた上で、ペーパーカンパニーを使って安値で買い戻す手口によって債務を大幅に圧縮したと認定された。法人税の追徴税額は、重加算税を含め約90億円。インター社は修正申告したが、国税から指摘を受けた後の昨年12月、東京地方裁判所に自己破産を申請して、同月5日に破産手続きの開始決定を受けた。負債総額は債権者17人で485億円。追徴課税については納税されないままとなった。

 熊取谷氏は破産に至った経緯について「国税当局とはまったくの見解の相違があった。破産させたくなかったが、課税されて税金を払えないなら、破産させるしかなかった」(15年3月5日付朝日新聞デジタル記事より)と説明している。

米西海岸の名門ゴルフ場、ペブルビーチを買収

 インター社の破産はバブルの清算を意味した。前身のコスモ・ワールドは84年に設立され、バブル期にゴルフ場の開発や買収を積極的に手掛けた。コスモ・ワールドというより、ゴルフ場関係者の間ではゼネラル・コースト・エンタープライズ(GCE)グループといったほうが馴染み深いだろう。GCEグループのゴルフ場の会員権を一手に販売していたのがイトマン(旧社名:伊藤萬)だ。戦後最大の経済事件といわれた住友銀行・イトマン事件の舞台となった会社だ。イトマンは事件後の93年、住金物産に吸収合併され消滅した。その後、13年10月に日鐵商事と住金物産が合併し、鉄鋼が主体の日鉄住金物産となっている。

 コスモ社は90年に、米カリフォルニア州の名門ゴルフ場、ペブルビーチの経営会社を約1200億円で買収した。80年代半ばから90年代前半にかけて、株高や土地高が永遠に続くとの幻想に取り憑かれた日本企業は“アメリカ買い”に狂奔した。例えば、ソニーが名門映画会社のコロムビア・ピクチャーズ・エンタテインメントを、三菱地所がロックフェラー財閥の不動産会社を、松下電器産業(現パナソニック)が映画・娯楽会社のMCAを買収した。

 全米オープンを2度にわたって開催した名門ゴルフ場を買収した熊取谷氏は、ジャパンマネーの象徴とされ、一躍有名人になった。その熊取谷氏のパトロンになったのが住友銀行である。86年に平和相互銀行を吸収合併した住友銀行は、合併の負の遺産として平和相互銀行の経済人脈を取り込むことになる。

 熊取谷氏は住友銀行と手を組んで、三井信託銀行(現三井住友トラスト・ホールディングス)から買収資金の融資を受け、世界的ブランドのペブルビーチを買収した。1億円の会員権を売り出す計画だったが、地元のゴルフ場業界団体からストップがかかり頓挫。住友銀行は三井信託銀行に融資を代理弁済した。

 コスモ社はペブルビーチを買収した18カ月後の92年に、住友銀行が仲介して旧平和相互銀行の関連会社、太平洋クラブに800億円で売却した。買収額との差額400億円が負債として熊取谷氏の手元に残った。この不良債務の処理をめぐる債権転がしが、今回、多額の所得隠しと指摘されることになったわけだ。

米ゴルフ場買収に踊った各社のバブル処理

 米名門ゴルフ場買収に関わった各社の、バブルの処理について触れておこう。

 ペブルビーチは太平洋クラブのゴルフ場として運営されていたが、「米国の企業に戻してほしい」という米国側の要請で、99年に転売された。住友銀行は買収資金を回収したうえに400億円の売却益を得た。ペブルビーチの買収で熊取谷氏は400億円損をしたが、住友銀行は400億円儲けた勘定になる。

 住友銀行とさくら銀行(旧三井銀行)が合併して生まれた三井住友銀行は、旧平和相互銀行の負の遺産である太平洋クラブを処理する。太平洋クラブは12年1月に民事再生法を申請し、パチンコホール最大手のマルハンの手に落ちた。

 熊取谷氏が率いるグループ会社の所得隠し事件と、三井住友銀行が手を切った太平洋クラブの経営破綻は、ペブルビーチの買収騒動が根底にある。企業も経営者も熱気に踊ったバブルの清算が、こんな結末を迎えたのだ。
(文=編集部)

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