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有馬賢治「日本を読み解くマーケティング・パースペクティブ」

ドミノ・ピザ「地獄絵図」事件の真相…PR戦略が「秀逸過ぎ&効果出過ぎ」の異例事態

文・構成=編集部
ドミノ・ピザ「地獄絵図」事件の真相…PR戦略が「秀逸過ぎ&効果出過ぎ」の異例事態の画像1「Thinkstock」より

 今から約3カ月前の昨年12月24日のクリスマス・イブ、大手宅配ピザチェーンドミノ・ピザ」をめぐる“ある事件”が世間を騒がせた。

 大幅な配達遅延や、店頭でも予約した時間に客が商品を受け取れず数時間も待たされるという混乱が起きたのだが、ドミノ・ピザは詳細な原因を説明することを頑なに拒み、当サイトの取材に対しても「ドミノ・ピザではHPにお詫びを掲載しておりまして、申し訳ありませんが、それ以上にお答えすることはできかねます」と回答するのみであった。

 ドミノ・ピザ側の想定以上の注文が殺到した原因としては、同チェーンが大々的に打ったインターネットを中心としたクリスマス商戦のCMが挙げられるが、結果としてはその手法が「効果があり過ぎ」といえるほど大成功だったとも評価できる。

 ドミノ・ピザのCMが「効き過ぎ」といえるほどの効果を上げた理由は何なのだろうか。立教大学経営学部教授の有馬賢治氏に解説してもらった。

競争が激しい宅配ピザ市場

「まず、背景として現代の宅配ピザ市場の競争が熾烈であることはご存知のとおりです。また、宅配ピザ企業のマーケティング・ミックスの主な手段は、

・Place(場所・配達):基本となる時間内での宅配サービスは、各社横並びの水準
・Price(価格):各種クーポンや、デリバリーではなく受け取りに行く場合の大幅なディスカウントも定着してきている
・Product(製品):ピザ自体の差別化は難しく、どこの企業のピザも大きな差を消費者が感じることができるだけの差別化はできていない

といった具合に大きな差別化ができない状況にあることも押さえる必要があります。」(有馬氏)

プロモーション戦略として秀逸

 このような市場で各社が独自性を発揮するのは非常に困難である。では、何がドミノ・ピザに注目を集めさせる要因となったのであろうか。

「ここで差別化のポイントとなるのは、インターネット上での話題づくりです。つまり、他社に対して差別化を消費者に認知させることができるマーケティング手段がプロモーション(コミュニケーション)戦略に限られていることに注目する必要があるでしょう。そのなかで主要ターゲットである若者の注目を集めるには、ネット上で話題となり、SNS上での拡散が期待できる話題提供が必要となります。

 この場合に、単発の話題提供では、一時的に注目を集めてもすぐに忘れられてしまいますが、ストーリー性があると、どの時点で消費者が話題に触れても、前後を含めて検索してもらえる可能性が高まります。今回の事例では以下のような段階を追ったストーリー性があったために、マスコミの注目度も高く、取材のネタとなるパブリシティ効果が生まれたと分析できます。

(1)トナカイを使うという時点での話題提供
(2)トナカイの調教という話題提供
(3)トナカイによるデリバリーのための機材の試行錯誤という話題提供
(4)トナカイでは失敗したが、トナカイ風のバイクによるデリバリーで代替するという話題提供

 今回は、トナカイでのデリバリーが成功しても失敗しても、マスコミの注目を集める仕掛けが含まれていた点が、プロモーション戦略として秀逸であったと評価できます」(同)

 インターネットの話題が最も浸透しやすい現代において、ドミノ・ピザの戦略は大きな効果が出過ぎた珍しい事例といえるかもしれない。しかし、こうした話題つくりの工夫や、企業としての新たな挑戦の姿勢を持たなければ、現代の苛烈な競争市場で生き残れない時代に突入したともいえよう。
(解説=有馬賢治/立教大学経営学部教授、構成=編集部)

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