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売上1兆円の大ヒット薬品、臨床データ改ざんを認定…有名医大が舞台、「謝礼」4億円

文=編集部

 ノバ社から元教授には、少なくとも3億7900万円の寄付金が渡されたことが判明している。元教授も「KHSの成功はディオバン有利の結果」と証言しており、意図的な改ざんへの関与は別としても、ノバ社が気に入る結果を出そうという空気があったのは間違いない。

 実際、参加した滋賀県内の医師は、ディオバン有利になるように虚偽のデータを登録したことが明らかになっている。教授からの指示ではなく“自発的”な行動と説明したが、「ディオバン有利の症例をたくさん報告したら、人事異動で便宜を図ってもらえると思った」と証言した。

不正論文で売上1兆円を超えたディオバン

 ノバ社の側を見ると、02年頃から社内で「100B計画」と称するディオバン売り上げ1000億円を目指す販売促進計画が立てられていた。寄付金を多くの大学に配り、ディオバン関連の論文を量産させた。

 日本高血圧学会の幹部たちが登場する座談会や講演会をたびたび企画し、「ディオバン有利」という研究結果を使ったプロモーション活動を展開。09年には売り上げ1400億円を突破、日本で1兆円以上を売り上げたブロックバスター(大ヒット薬)になった。

 元社員は有力教授と信頼関係を構築し、自社に有利なデータをたくさんつくったとして、09年11月にノバ社初の社長賞を受賞。高級時計を贈呈されたほか、1年8カ月後の定年後も、年収1500万円で2年間の契約社員として雇用することが約束された。社内講演会では「俺は失敗したことがない」などと豪語していたという。

 裁判所は、データ改ざんについては検察側の主張をほぼ認定。しかし、広告を規制する薬事法は学術論文を作成する行為には適用できないとして、無罪を言い渡した。

 だが、医薬品のプロモーションには学術論文による裏付けが不可欠で、実態としては広告材料として使われていたことが誰の目にも明らかだ。だからこそ、薬事法を所管する厚労省が同法違反で刑事告発し、東京地検特捜部も立件した。

 裁判所の判断は紙一重な部分もあり、辻川裁判長の「不正な関与が原因とはいえ、長い間勾留され、大変お疲れさまでした」という発言には、そんな意が込められているのかもしれない。しかし、前述したように検察は控訴している。

 裁判に出廷した学会幹部は、一連の問題で「日本の臨床研究は世界的に信頼をなくし、海外の医学雑誌などに投稿しても採用されづらくなった」と証言している。

 今国会では臨床研究を規制する臨床研究法案が成立する見込みだが、これは委員会を作成したり大量の書類を用意したりすることを研究者に求めるもので、現場の負担増は否めない。はたして、日本の臨床研究はどうなるのか。高裁のゆくえからも目が離せない。
(文=編集部)

BusinessJournal編集部

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