現在、全国に300ほどある「女性外来」。病院内に開設されているケースもあれば、専門クリニックもあり、スタイルはさまざまだが、基本的な成り立ちは病気や症状の性差(男女差)を考慮した「性差医学」に基づく診療だ。
そこには「紹介状は不要」「症状は問わない」「初診に30分かける」という共通するモットーがある。
ちなみに、「レディースクリニック」と呼ばれる医療機関も非常に多くなってきたが、ほとんどが産科、婦人科の医師が診療を行うもので、性差医療を基本とする女性外来とは異なる。
ドクターショッピングの末にたどり着いた「語らせる」医療
腰が痛い、膝が痛いといった、はっきりした自覚症状がなくとも、生活の質を低下させるような不調を感じているならば、医師は診察し改善策を探す。そのためには、初診でじっくりと話を聞くことが必要であるという。
「女性外来を始めて、まず驚いたのが、患者さんが皆『こんなに話を聞いてもらったのは初めて』とおっしゃることです」(女性外来の担当医)
女性外来を受診する患者は、ほかの医療機関ですでに検査や治療を受けてもよくならず、いわゆるドクターショッピングの末にたどり着いたという人が少なくない。
しかし、よく話を聞いて原因を探ってみると、医師とのコミュニケーション不足、あるいは医師の知識不足のために改善せず困っている例が圧倒的に多かったという。
「性差医療の実践の場として女性外来を立ち上げたものの、蓋を開けてみると、患者さんが苦しんでいたのは、実は『性差を考慮して対応することが必要な問題』というより、それ以前の『話を聞いてもらえない』ことからくるものでした。日本の医療がいかに貧しいか、あらためて気づかされました。時間をかけて丁寧に対応することで、多くの患者さんが立ち直るきっかけを得られるのに、それができていないのです」(同)
改善の一歩は自分の状態を知ること
特に更年期には、女性ホルモンの変化によって多彩な症状が現れる。比較的広く知られている、発汗、のぼせ、ほてり、動悸、イライラといった症状だけでなく、高血圧、糖尿病、高脂血症、胸痛、認知機能の衰えなどの症状が現れることも珍しくない。
しかし、そういった情報を医師が患者に伝えていないため、患者は「悪い病気ではないか」と思い詰めて、病院を渡り歩くことになる。
「更年期障害のような、病気には至らない不調に向き合うための第一歩は『知る』ことです。更年期にはこういう症状が起こる可能性があるという情報を、医師がしっかりと伝えることが必要です。自分の置かれている状況がわかれば、心の準備もでき、対応策もみえてきます」(同)