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筈井利人「一刀両断エコノミクス」

「英国のEU離脱で孤立=欧州の悲劇」論のデタラメ…欧州経済全体に多大な利益

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「Thinkstock」より

 英国政府が欧州連合(EU)に離脱を正式に通知した。昨年6月の国民投票で決定した方針に従うものだ。通知から離脱までは原則2年で、期間延長がなければ、2019年3月にEUを離脱する。同国のメイ首相は離脱交渉の基盤を固めるため、6月8日に総選挙に踏み切る。

 英国のEU離脱について、主流メディアではほぼ批判一色だ。たとえば英フィナンシャル・タイムズ(FT)紙は離脱通知を論評する3月30日付の社説で「離脱は英国にとって悲劇となるが、欧州にとっても悲劇となる」と述べた。

 しかし、EU離脱を非難する主流メディアの主張は正しくない。そこでは言葉の意味が意図的にぼかされている。

 主流メディアでよく見かける表現は、「離脱によって英国は欧州で孤立する」というものだ。EUを離れることは欧州を離れるに等しく、欧州の経済から切り離されるに等しいというイメージが煽り立てられる。

 だが政治的な独立は、経済的な孤立を意味しない。EUは欧州と同じではないし、EUを離れても欧州の経済と縁を切ることにはならない。EU非加盟のノルウェーは、主要貿易相手国に英国、ドイツ、オランダ、スウェーデン、フランスなどEU加盟国が並ぶ。同じくスイスも、ドイツ、イタリア、フランスなどと活発に貿易を行う。

 むしろ主流メディアの主張とは逆に、欧州の政治統合をめざすEUを離れ、政治的に独立する国が増えれば、欧州の経済には有益といえる。政治的な独立は、経済的な相互依存を強めるからだ。

 EUによる政治統合を支持する人々は、中央集権化が貿易と平和を促進すると主張する。だが実際には、政治統合で事実上の国家の規模が大きくなるほど、保護主義と戦争のリスクが高まる。政治統合で巨大な超国家が成立すると、貿易戦争に伴う経済的孤立に耐えられるようになる。超国家を構成する一部の国が他の国を戦争に引き込み、自国の対立のコストを他の国に押しつけやすくなる。

 これに対し、小規模な国家は経済的に孤立する余裕がない。自国の資源や人材だけでは経済を支えられないからだ。だから他の国と経済的な相互依存の関係を築く。この関係を断つことは経済的な自滅を意味するから、戦争を抑制するようになる。

 巨大な超国家はそれを構成する諸国家に対し、政策の国際的な「調和」を求める。だから超国家のなかで生きる市民は、ブリュッセルにあるEU本部の官僚たちが絶えず発する規則のような、面倒で複雑なルールから逃げることができない。

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