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筈井利人「一刀両断エコノミクス」

「英国のEU離脱で孤立=欧州の悲劇」論のデタラメ…欧州経済全体に多大な利益

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グローバル化には2種類


 前出のFT紙社説は離脱派を批判し、大量に発生する貿易をスムーズにするためには、EU加盟各国の間で「膨大な数の規制を調和させる必要」があると主張する。しかし現実には、規制の「調和」には時間がかかるうえ、ようやくでき上がった規制はさらに複雑で、しかも現実にすぐに対応できなくなる。貿易をスムーズにするどころか、かえって妨げる。
 
 これに対し多数の独立した小国が存在する社会では、市民は規制や税負担の少ない国に移動しやすい。いわゆる「足による投票」である。政府は市民が他の国に逃げ出すことを恐れ、より多くの市民を呼び寄せようと、規制や税を減らし、市民の自由や財産権を尊重するようになる。もともと規制が少なければ、それらを「調和」させる必要もない。

 英国EU離脱を「グローバル化の終わり」だとする表現も、主流メディアには目立つ。だがここでも言葉の意味がわざとあいまいにされている。
 
 グローバル化には2種類ある。政治のグローバル化と経済のグローバル化だ。経済のグローバル化は、言い換えれば国境を越えた分業である。現代の世界では、ほとんどの国は自国の需要を満たすためだけに生産するのでなく、他国の生産者や消費者のためにも生産する。各国はそれぞれ最も得意な分野に力を注ぐことにより、生産性を向上させる。それによって世界の貧困は過去数十年にわたり改善してきた。

 これに対し政治のグローバル化は、世界の諸問題は自由な貿易や分業ではなく、政治権力によって解決できるし解決すべきだと信じる。ただし、これまでの国家はもはや時代後れであり、それらを政治統合によって束ねた超国家が必要だと考える。

歓迎すべき出来事


 経済のグローバル化を支える思想が個人主義と自由主義だとすれば、政治のグローバル化の背後にある考えは国家主義と社会主義である。両者は水と油といいっていい。

 政治統合をめざすEUは、明らかに政治のグローバル化の一種だ。経済のグローバル化とは関係ない。ところが主流メディアはこの区別をあいまいにし、あたかも英国のEU離脱がグローバル経済にとってのリスクであり、保護貿易をもたらすかのように危機感を煽る。

 しかしすでに述べた通り、政治のグローバル化に歯止めがかかることは、経済のグローバル化にはむしろプラスである。

 英国のEU離脱で政治のグローバル化が後退することは、一部の政治エリートや彼らと癒着した特権的企業、その応援団を務めるメディアにとっては、自分たちの存在意義を脅かす危機だろう。しかし一般の人々にとっては何も恐れる必要はない。むしろ歓迎すべき出来事なのだ。
(文=筈井利人/経済ジャーナリスト)

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