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航空経営研究所「航空業界の“眺め”」

全日空、羽田発着枠優遇の「隠れた政府援助」で巨額利益…でも日航との不公平を訴え

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 現在検討が開始されている羽田空港の第5滑走路増設が2030年代には完成すると想定し、それまでの間は同空港の発着枠の逼迫が継続、新規発着枠の捻出がほとんど困難とするならば、全日空が政府から獲得した180~360億円の無形固定資産は、同社にとっては毎年大きな収入を生み出してくれるキャッシュカウ(金のなる木)となる。

 日本航空の場合は、破綻からわずか2年7カ月で再上場を果たし、このわずかな期間に公金3,500億円を出資した企業再生支援機構は、3000億円ほどの売却益を得た。これは同機構にとって過去最大の売却益となる。

 事実、全日空の17年3月期決算見通しは、売上高1兆7400億円、営業利益1450億円と、過去5年間で23%の増収、49%の増益となるのに対し、日本航空は売上高1兆2800億円、営業利益1700億円と、過去5年間では6%の増収となる一方で17%の減益となる見通しだ。全日空は16年度決算で2年連続の最高益を更新する模様だ。財務諸表上からは、明らかに羽田の発着枠を確保した全日空の業績が、日本航空に比べ著しく向上していることが窺える。



いまだに「不公平な競争」を強調


 全日空では4月1日、平子裕志が新社長に就任した。3月31日付毎日新聞によれば、

 平子社長は「(公的支援の結果)財務的に体力格差が生まれた。(日本航空との)最終損益に差がある限り、内部留保の差も開いていく。ここを逆転しないことには縮まっていかない」と述べ、優位性のある羽田空港の国際線網の活用などで日本航空に対抗する考えを示したという。また、平子氏は「日航とこれだけ体力格差があるなか、航空業界で不公平、不公正なことが起きないか見ていきたい。(4月以降、日航が)何をやってくるのか、我々としても分析しなくてはいけない」と述べ、ライバルの動向を注視する考えを強調したという。

 全日空は社長が交代しても、いまだに日本航空との不公平な競争を強いられていると言い続けている。今や日本航空を追い抜き収入規模で1.4倍である日本最大の航空会社となった全日空が、1985年まで国際線参入を制限されて【編注2】、不公平に耐えてきた臥薪嘗胆の感情はわからないでもないが、今でも狭い国内の競争に執着しているようにみえてしょうがない。

 そんな井の中の蛙の発想から脱却し、もっと大海における競争を考え、日本の航空業界全体の繁栄と発展を考える横綱相撲をとってほしいものだ。
(文=牛場春夫/航空経営研究所副所長) 

【編注1】全日空は、AIRDOに13.6%、スターフライヤーに18%、ソラシドエアに17%それぞれ出資している。出資比率が抑えられているのは、議決権株の20%以上となった場合は、被出資航空会社が政府の新規発着枠の配分対象から排除されることになるからだ。

【編注2】政府は1972年の大臣通達により、日本航空は国際線の一元的運航と国内幹線の運航、全日空は国内幹線とローカル線、国際チャーター便の運航に規制した。これは、昭和45年の閣議了解、47年の大臣通達が出された年次をとって「45/47体制」とも呼ばれている。1985年に見直され、以来、規制緩和が進められている。

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