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小笠原泰「コンピュータ技術の進歩と日本の雇用の未来を考える」

人間が雇用されない「沈黙の解雇」が進行…高度な専門性やサービス業でも機械に置き換え加速

文=小笠原泰/明治大学国際日本学部教授
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 この状況は、真核生物がミトコンドリアを取り込んで好気性に転じ、急激な生息領域の拡大と多様化を行ったカンブリア大爆発に近似している。現在のデジタルテクノロジーはミトコンドリアに相当するものであり、個人にとっても企業にとっても大きなチャンスをもたらすのだが、逆にいえば、リスクを取らない守りの姿勢が最もリスクが高いともいえる。

 歴史的に考えれば、18世紀の産業革命では、機械に代替えされた労働者は拡大した産業に吸収され、農業社会は産業社会に転じた。今回も同じことが起こらないとはいえない。価値の源泉が農耕時代の土地、産業化時代の鉄となったように、情報化時代のデータへと変わるので、産業社会から情報社会に転じるわけである。このように能動的に前向きに考えることも可能である。

 しかし、今回の変化は、百年単位の時間がかかった産業革命とは異なり、そのスピードが急であり、影響を受ける領域もはるかに広範囲であり、新しい労働に求められる知識や技術・技能の難易度も高い。加速化するデジタルテクノロジーの進歩がもたらす価値とは、有用性、迅速性、正確性の高次化であり、そのような環境のなかで、仕事は複雑・高度化し、そのスピードは速まる。

変化への適応

 多くのワーカーやワーカー予備軍が考えるべきは、蒸気機関の発達でその必要性を喪失した馬にならないようにすることではないか。読者諸兄姉が馬にならない保証はない。しかし、馬は何もできず、変化に対して受動的であるしかなかった。馬は役目を終えるのをただ待つしかなかったのである。

 しかし、人間は時代を先読みして、先んじて適応へのステップを歩み出すことができる。私たちは真剣に今回の構造的変化を見極め、その変化への適応を考えなければならない。

 変化への適応を考えるに当たって、「弱いAI」がある領域に限り、自己学習し、人間の能力を超えた量の情報と高速な処理(人間と違いコンピュータは経験をすぐに共有できる)を精密に行うことができることをまず認識する必要がある。「弱いAI」の得意とする領域で競っても、勝ち目はないのである。

 確かに、「弱いAI」がコンビを組み、その能力を急速に向上させている最近のチェスプレーヤーのように、これまでの能力の限界を超えていくことも可能であろうが、それは多くのワーカーにとって現実的な選択肢ではなかろう。

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