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『小さな巨人』、「デタラメ」「警察の実態から乖離しすぎ」と批判噴出…所轄との対立もウソ

文=深笛義也/ライター
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「むしろ高卒のほうが多いです。警視庁に奉職してから、働きながら夜間大学へ行く人が多いです。例外的に高卒からの叩き上げが捜査一課長に昇進したとなっていますが、例外でもなんでもない。捜査一課長になるのは、人事や総務、広報出身者が多いと、ドラマ内でご丁寧にも図解されていましたけど、これもまったくのウソ。捜査一課でバリバリ捜査畑の人が、捜査一課長になるのが普通です。

 最近は、大卒で警視庁に入る人も増えました。昇進試験というのは、巡査部長になって何年か経てば警部補試験を受けられ、警部補になって何年か経てば警部試験が受けられるというかたちになっており、高卒と大卒で受けられる年齢が違うんですね。だから、大卒のほうが昇進のペースは速い。一発で受かっていけば抜きんでて早く出世するというのは当然ある。だけど、そういう人は人事や総務に行くことが多くて、捜査一課にいる可能性はあまりない。刑事から見ると、『試験勉強ばっかりして、なんだあいつらは』という感じです」(同)

警視庁vs.所轄

 香坂が、元上司である捜査一課長の小野田に呼び出され、翌日行われる昇格試験を受験して名前だけを書けば、小野田の力で合格させ、香坂を捜査第一課に戻してやると告げられるシーンがある。

「名前だけ書けば合格させてやるっていうのは、もちろんあり得ません。面接まで行けば、筆記試験でのトータル点数は微妙だったけど、実績があってどうしても必要だからということで引き上げるということは、あるでしょう。論文に名前だけ書いて、合格点をつけられるわけがありません」(同)

 ドラマの第1話では、芝署管内で起きた事件で、捜査一課長が部下を引き連れて芝署に乗り込んでいく。芝署の刑事は「何もするな」と言われるなどして、ここでも「警視庁vs.所轄」の構図が描かれる。

「VIPの誘拐事件なので、警視庁本部が乗り込んでくることはあります。だけど、管理官級、捜査一課長の下にいる警視級が行くのが普通。警視庁は全部で9つの方面に分けられていて、たとえば目白署、池袋署、巣鴨署、大塚署、富坂署、駒込署、本富士署が、第5方面となっています。大きな事件が起きたら、同じ方面の署から何人かずつ応援に行くという態勢を取る。被害者がVIPなので、捜査一課長が行くというのも、あり得ない話ではない。

 でも、まずおかしいのは、芝署の署長は前捜査一課長です。現捜査一課長を立てるというのはあり得るが、ドラマで描かれているほど立場は弱くない。むしろ前捜査一課長のほうが強い。

 昔、渋谷で女子大生が誘拐された事件がありましたが、その時に現捜査一課長と前捜査一課長である渋谷署長の意見が対立したということがありました。おそらく、それをどこかから聞いてモデルにしたのでしょうが、聞きかじっただけで掘り下げて調べていないのがバレバレです。『所轄の刑事は後ろに下がってろ』などと待機を命じられるというのも、あり得ません。一課だけじゃ何もできないので、聞き込みは一課と所轄の人間がセットで行ったりもします」(同)

誘拐事件

 第1話のラストでは、誘拐犯が被害者を拘束している建物に、捜査第一課は突入するという方針を立てる。誘拐犯と面識のある芝署の刑事、渡部久志(安田顕)がメールを通じて自首するように説得を試みる。それを知った香坂が捜査第一課長に土下座して、踏み込むのを待ってほしいと嘆願する。

「誘拐事件から立てこもりに変わっているので、SITという特殊事件捜査係が出てくる。SITは、身柄を安全に確保するというのが第一優先です。人質がいる場合は当然ですが、犯人が1人で立てこもっている場合でも、生きたまま逮捕して裁判にかけるというのが基本。追い込んじゃって犯人が自殺してしまえば、完全な失態です。立てこもり事件の中継を視たことのある方はわかると思いますが、イライラするくらい説得を続けます。辞めた今だから言えますが、私自身も『もう行っちゃえよ』と思うくらい説得が続けられたこともありました。

 強行突入というのは最後の最後の手段です。ドラマでは、犯人は娘さんに死なれて、奥さんもいなくて天涯孤独でしょう。香坂が土下座して頼むまでもなく、犯人から相談を受けたことがある渡部刑事に説得に当たらせるというのが、自然な流れです。あんな乱暴なことは、絶対にやるはずがありません」(同)

 ドラマでは人質は助かったが、説得に応じようとしていた犯人は、強行突入によって自殺を図り、意識不明の重体になってしまう。

 ドラマゆえに当然ながらフィクションの部分はあるだろうが、警察関係者からの評判はいまいちのようだ。
(文=深笛義也/ライター)

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