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車を運転中に突然意識を失い事故…糖尿病患者の意識消失リスクに備える

ヘルスプレス編集部
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糖尿病の人が安全に運転するには……事前チェックで防ぐ、クルマに常備すべきモノの画像1糖尿病患者は発作で事故を起こす可能性が(depositphotos.com)

 糖尿病の患者は、運転中の低血糖発作で事故を起こすことがある。

 大阪市中央区の御堂筋で平成26年6月、乗用車が暴走し3人が重軽傷を負った事故が発生。糖尿病に伴う低血糖症で意識が低下した状態で車を運転したとして、運転手は自動車運転処罰法違反(危険運転致傷)の罪に問われた。

 大阪地裁で開かれた判決公判では、同法の過失致傷罪を適用して禁錮1年6カ月、執行猶予3年を言い渡された。判決理由の中で「こまめに血糖値を測定していれば事故は防げた」として過失があったと結論づけた。

 その後、同裁判は控訴審判決公判が今年3月16日に大阪高裁で開かれ、「事案の解明がなされておらず、さらに審理を尽くすべきだ」として1審大阪地裁判決を破棄。審理を同地裁に差し戻された。

 このような事故は氷山の一角かもしれない――交通事故の原因には、運転者の体調不良が隠れている可能性が疑われるケースが少なくないからだ。
*関連記事「自動車事故の陰に潜む『失神』の正体!? 事故原因の約1割が運転者の体調変化」

 このような事故は、海の向こうアメリカでも懸念されている。そこで、米バージニア大学医学部教授のDaniel Cox氏らは、質問票の活用で事故につながる運転ミスを起こしやすい患者を特定できるという新しい研究を報告。詳細は『Diabetes Care』(オンライン版)に4月12日掲載された。

心疾患やナルコレプシー(過眠症)と同じくらい運転に支障があると認識すべき

 糖尿病患者は、インスリン治療や血糖降下薬の影響で、血糖値が下がり過ぎて低血糖を起こし、意識消失やけいれんを起こす可能性がある。

 Cox氏は「糖尿病患者は、糖尿病が心疾患やナルコレプシー(過眠症)などと同様に運転に支障がある病気だと認識すべきだ」と述べ、「パイロットがフライト前にチェックリストを用いて自身の健康状態を確認するように、1型糖尿病患者も運転できる状態であるかを事前に確認する必要がある」と説明している。

 同氏によると、糖尿病患者のなかでも次のような人は、運転中にトラブルを起こすリスクが平均よりも高いという。

「運転中に重症低血糖を起こしたことがある」
「低血糖リスクが高い」
「運転する機会が多い」
「糖尿病神経障害で下肢の感覚が鈍っている」

 ところが、事故リスクが高い患者を区別する標準的な検査法は、今のところ存在しない。

 そこで、同氏らは11の質問項目から成る「糖尿病を持つドライバーのリスク評価(Risk Assessment of Diabetic Drivers;RADD)」と名付けた質問票を作成。事故リスクの高い患者を事前に特定できるかどうかを調べた。

 まず、米国の3地域(ボストン、バージニア州中央部、ミニアポリス)の1型糖尿病患者1371人を対象に、RADD質問票に回答してもらった。

 その後、12カ月間の運転中の事故や事故につながりかねない危険な運転ミスの有無を調べた。その結果、このRADD質問票によって事故を起こすリスクが高い人では60%、リスクが低い人では75%を事前に特定できることがわかった。

オンライン上の介入で運転中の低血糖を回避

 次に、全米の1型糖尿病患者1737人を対象にオンライン上で回答したRADD質問票スコアを基に調査した。

 事故リスクが高いと判定された372人の半数と低リスク判定の118人には通常ケア、高リスク者の残り半数には、インターネットサイト『DiabetesDriving.com』によるオンライン上での介入を2カ月間実施。その後、12カ月間の事故記録を調べた。

 この介入は、低血糖を予防し、検出して治療するものだ。対象者には、低血糖を管理するためのツールキット一式(血糖測定器・運転前のチェックリスト・血糖値が下がった場合の注意事項を記したキーホルダー・錠剤やゼリーの即効性のあるブドウ糖製品など)を提供した。

 結果、こうしたオンライン上の介入は、1型糖尿病患者が運転中の低血糖を回避するのに有効なことがわかった。

車内に炭水化物を常備することを推奨

 Cox氏は、「1型糖尿病患者の多くは、低血糖への正しい対処法を知らず、脂肪やタンパク質が多い食品を摂りがちだ。しかし、それでは血糖値はすぐには上がらない」と指摘。車内には血糖値を上げるのに即効性がある炭水化物を常備するよう勧めている。

 米モンテフィオーレ医療センター(ニューヨーク市)臨床糖尿病センター長のJoel Zonszein氏は、「糖尿病患者の運転の安全性を判断するには、オンラインテストなどで患者が自己判断するよりも医師や専門家が検査するほうがよいと指摘している。

 また、別の専門家も、インターネット上での匿名性という利点はあるが、医師がテスト結果を閲覧できるようにすることが重要だとしている。
(文=ヘルスプレス編集部)

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