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新見正則「医療の極論、常識、非常識」

長寿命で絶望しないために…「ボケても体元気」は家族にとって不幸?医師が考察

文=新見正則/医学博士、医師
長寿命で絶望しないために…「ボケても体元気」は家族にとって不幸?医師が考察の画像1「Thinkstock」より

 今回は「死ぬまで元気でいたい」という話題で盛り上がっています。

 さっそく“常識君”の解説です。

「厚生労働省の報告によると、2010年の平均寿命は女性が86.3歳、男性が79.6歳です。ところが、健康寿命は女性が73.6歳、男性が70.4歳となっています。平均寿命と健康寿命の差は女性で12.7年、男性で9.1年です。この差は日常生活に制限のある不健康な期間と記載されています。この不健康な期間をなるべく短くしたいというのが、みんなの切なる願いなのです」

 常識君の解説の続きです。

「07年に日本整形外科学会がロコモティブ症候群という概念を提唱しました。運動器の障害や衰えによって、歩行困難などの要介護になるリスクが高まる状態のことです。一言でいえば運動機能不全で、これを予防して健康寿命を延ばそうという作戦です。また、14年に日本老年医学会が『フレイル』という言葉を提唱しました。海外の老年医学の分野で使用されている『Frailty』の日本語訳なのですが、直訳すると『虚弱/老衰/脆弱』という訳語になるのですが、『正しく介入すれば戻る』という意味を強調したく、多くの議論の結果、フレイルとしたそうです。

 高齢者が増えている現代社会で、フレイルに早く気づき、正しく介入して要介護となる人を減らし、要介護になる時期を延ばして、平均寿命と健康寿命の差を短くしようという作戦なのです。そしてフレイルの定義はいろいろとありますが、下記の5つのうち3つ以上を満たす場合です。

・体重減少:意図せずに年間 4.5kgまたは5%以上
・疲れやすい:何をするのも面倒だと、週に3~4日以上感じる日がある
・歩行速度の低下:1m/秒未満
・握力の低下:男性では26kg未満 女性では18kg未満
・身体活動の低下 」

いくら身体が元気でも

 ここで“極論君”の発言です。

「ロコモティブ症候群とかフレイルとか、医学的な概念よりも、ともかく死ぬまで人の手助けは借りたくないのです。死ぬまで歩きたいのです。若いときから筋力や骨の強さを鍛えておくために、適度で長期的な運動が大切と思っています。水泳を週に2回やって、そしてジムでランニングマシンの上を毎月100km走ることにしています」

“非常識君”のコメントです。

「極論君のようにストイックに健康のためだけに運動を励行できる人は一握りです。ですから、僕には散歩を毎日したり、すすんで階段を利用したりする日常的な運動負荷が大切に思えます」

新見正則/医学博士・医師

新見正則/医学博士・医師

1959年生まれ
1985年 慶應義塾大学医学部卒業
1985年~ 慶應義塾大学医学部外科
1993~1998年 英国オックスフォード大学医学部博士課程
1998年~ 帝京大学医学部外科に勤務

 幅広い知識を持つ臨床医で、移植免疫学のサイエンティスト、そしてセカンドオピニオンのパイオニアで、モダン・カンポウやメディカルヨガの啓蒙者、趣味はトライアスロン。著書多数。なお、診察希望者は帝京大学医学部付属病院または公益財団法人愛世会愛誠病院で受診してください。大学病院は紹介状が必要です。

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