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赤ちゃんポスト、設置が進まない日本…賛否両論の狭間で孤立し苦悩する母親たち

文=ヘルスプレス編集部
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安易な遺棄が増える?子どもの親を知る権利を奪う?

 赤ちゃんポストは、幼い命を救う最後の手段と位置づけつつ、慈恵病院は「まずは相談を!」と粘り強く呼びかけてきた。だが、赤ちゃんポストの賛否は大きく割れる。

 新生児の殺害・虐待・育児放棄を防止できる、望まない妊娠中絶から子どもを救える、子どもが生きるための選択肢が増えるなどの賛同の声が上がる。

 一方、安直な遺棄が増える、子どもが親を知る権利を奪う、全国に養子縁組支援組織があり、匿名制の理由が不明、新生児の死体遺棄は年間で数件しかなく、特別措置を講じる必要性は低いなど、批判や反対意見も根強い。

 このような状況のなか2017年2月、関西の医師や助産師などが活動するNPO法人「こうのとりのゆりかごin関西」は、神戸市北区の助産院に国内2番目の赤ちゃんポストを開設すると発表した。

 しかし、神戸市が医師がいない助産院で子どもを匿名で受け入れることは、医師でなければ医療行為を行えないと定めた医師法に抵触する可能性があると指摘。「こうのとりのゆりかごin関西」は、計画を断念したと報じられた。

日本の赤ちゃんポストは立ち遅れている!?

 1994年、インドのタミル・ナードゥ州は子殺しを撲滅するために、ゆりかご赤ちゃん (Thottil Kuzhanthai)を開設。赤ちゃんは国費で養育され、無料の教育が提供されている。

 1999年、米国のテキサス州は、親が合法的かつ匿名で新生児(生後72時間以内)を放棄し、病院や消防署などの安全な避難所に届けることを許可する「安全な避難所の法」 (safe haven law) を可決。その後、カリフォルニア州の「赤ちゃん安全環境法」の立法化を皮切りに、全米47州に広がる。

 インディアナ州では、2015年、生後間もなく病院に置き去りにされたモニカ・ケルシー消防士らの活動が結実し「赤ちゃんポスト設置法」を可決、100カ所の設置をめざしている。

 2000年、ドイツのハンブルクのNPO法人が赤ちゃんポスト(Babyklappe/ベビークラッペ)を立ち上げ、公私立病院約100カ所に拡大中。養子縁組が盛んで、匿名出産(母親が匿名で入院・出産し、赤ちゃんを養子縁組できる制度)や、内密出産(母親が匿名で入院・出産し、子どもは16歳で自分の出自を知ることができる制度)の法整備が進んでいる。

 2000年、南アフリカの非営利団体「希望のドア」 (Door Of Hope) がヨハネスブルグの教会堂に「壁の穴」 (hole in the wall) を創設。ベルギーの母親の母 (Moeder voor Moeder) 協会、スイスのアインジーデルン病院、オーストリアの6都市の主要病院が、それぞれ赤ちゃんポストを開設、多くの赤ちゃんを保護している。

 2006年、イタリアのいのちの行動 (Movement for Life) はローマやバチカンなどに8カ所を新設。パキスタンのEdhi財団は国内約250ヵ所に匿名で預けるJhoola(中にマットが敷いてあるブリキ製のぶら下げ型ゆりかご)を設置。親はベルで知らせ、スタッフが1時間ごとにゆりかごを確認している。

 フィリピンのマニラのサンジョーズ病院には「ここで赤ん坊を受け取ります」と書かれた回転式ゆりかごがある。2009年、韓国でもカトリック教会の牧師が初めて立ち上げ、夥しい数の乳幼児に手を差しのべている。

 日本の赤ちゃんポストは、なぜ立ち遅れているのか。何か解決・改善につながる糸口はないのか。

 乳児院を含む児童養護施設に預けられている0~17歳までの子どもはおよそ4万人。乳児院に預けられている0~3歳までの乳幼児はおよそ3000人だ(厚生労働省 児童養護施設入所児童等調査の結果 平成25年2月1日http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000071187.html)。

 背景には、性の暴走がある。性意識の破綻もある。望まぬ妊娠に困惑し、中絶を覚悟した母親がいる。私が育てると決意した母親もいる。「なんで捨てられたの」「要らなかったの」と問う子どもがいる。実親との出会いを待つ子どもがいる。再会に戸惑う子どももいる。命を助け、家族になった子どもに感謝する養父母がいる。引き取りたいと現われた実親に向き合い、苦悩する養父母もいる。

 ドイツの哲学者、アルトゥル・ショーペンハウエルはこう書いた。

「真実を人々が真実だと認めるまでに3つの段階を通過する。第一段階では、嘲笑する。第二段階では、激しく反対する。第三段階では、当然のこととして受け入れる」

 子どもは地球の宝だ。無垢な瞳の輝きを拒む人はない。暖かい家庭で育ってほしいと願わない親はない。
(文=ヘルスプレス編集部)

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