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山田修「間違いだらけのビジネス戦略」

ソニー、倒産危機から完全復活…「魅了する家電製品」不在を嘆く人々の時代錯誤

文=山田修/ビジネス評論家、経営コンサルタント

総合電気メーカーではない、タコ足コングロマリット

 吉田氏は続けて「17年度セグメント別業績見通し」を発表した。ソニーが展開しているすべてのビジネスを8つのセグメント(事業部門)に分解して、それぞれの売上と営業利益の見通しを示したのである。総売上が8兆円、営業利益が5000億円となることは前述の通りだ。

 その発表によると、営業利益でもっとも金額が大きいのは「金融」と「ゲーム&ネットワークサービス」の2事業部門で、それぞれが1700億円。後者にはプレイステーションが属する。それに次ぐのが「半導体」の1200億円。これらの3事業で17年度営業利益総額合計の5000億円のうち4600億円となるという。

 これらの利益構造をみると、ソニーを総合電機メーカーと呼ぶわけにはいかない、とますます思う。つまり従来型のコンシューマー(個人)向けハード機器による利益貢献など、この会社にはないに等しいのだ。

 具体的には、携帯電話(「モバイル・コミュニケーション」セグメント)の17年度予想利益はわずか50億円だし、代表的な家電製品であるテレビが含まれる「ホームエンタテインメント&サウンド」セグメントのそれは580億円にすぎない。

 テレビに関しては、5月に入りソニーが有機ELテレビに10年ぶりに参入すると大きく喧伝されたが、実際には韓国LGエレクトロニクスなどからパネルを外部調達することによる展開で、自社による本格的な製造展開ではない。「ブラビア」の主製品である液晶テレビのパネルも、以前から外部調達なのである。

 そもそもソニーはテレビ製造販売から撤退するのではないかとの観測も、昨年まではささやかれていた。15年2月にテレビ事業が分社化された時、私は事業売却の準備の可能性があると指摘した。そんな事業部門が、会社の主流に返り咲くことは考えられない。

電気「製品」から離れていくことで利益が向上する構造

 ソニーは1997年度に最高益を記録して以来、業績凋落の傾向が続き、多くの批判を集めてきた。2011年度に4567億円という過去最大の赤字を計上した直後の12年に平井一夫社長がその舵取りを任され、現在に至っている。

 平井社長は12年に「第1次中期経営計画」を発表、実施したのだが、それにより1万人もの社員削減、本社ビルの売却、パソコンなど複数の事業売却などを推し進めた。

山田修/経営コンサルタント、MBA経営代表取締役

山田修/経営コンサルタント、MBA経営代表取締役

経営コンサルタント、MBA経営代表取締役。20年以上にわたり外資4社及び日系2社で社長を歴任。業態・規模にかかわらず、不調業績をすべて回復させ「企業再生経営者」と評される。実践的な経営戦略の立案指導が専門。「戦略カードとシナリオ・ライティング」で各自が戦略を創る「経営者ブートキャンプ第12期」が10月より開講。1949年生まれ。学習院大学修士。米国サンダーバードMBA、元同校准教授・日本同窓会長。法政大学博士課程(経営学)。国際経営戦略研究学会員。著書に 『本当に使える戦略の立て方 5つのステップ』、『本当に使える経営戦略・使えない経営戦略』(共にぱる出版)、『あなたの会社は部長がつぶす!』(フォレスト出版)、『MBA社長の実践 社会人勉強心得帖』(プレジデント社)、『MBA社長の「ロジカル・マネジメント」-私の方法』(講談社)ほか多数。
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