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トヨタ、組織改革で「自滅行為」進行か…強さの源泉・生産技術基盤が破壊の兆候

文=井上隆一郎/桜美林大学教授
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組織改革が失速をもたらしたか

 筆者が注目するのは、16年4月のカンパニー制への移行である。また、同時に想起したのが、カンパニー制に移行したのと同時期に経営不振に陥った1990年代末の出井伸之CEO(最高経営責任者)率いたソニーである。

 もちろん、ソニーの凋落にはエレクトロニクス技術のデジタル化にともなって、日本企業が得意なインテグラル(すり合わせ)型から、米国、中国企業が得意なモジュラー(組合せ)型に製品技術のアーキテクチャー(設計)が変化したことも忘れてはならない。しかしソニーの場合、カンパニー制移行に伴い研究開発、生産、販売が、製品別にバラバラにされ、深い基礎研究、各製品で蓄えられていた要素技術などを、、魅力ある製品に組み合わせる組織的基盤が破壊されたと、筆者は見立てている。これと同様な事態がトヨタでも進行していないか。
 
 企業規模も業種も違うソニーとトヨタを同列に扱うことは誤解を招くだろう。しかし、次のことを感じるのは筆者だけではないだろう。

 トヨタは世界最大クラスの自動車メーカーである。その持てる経営資源は、統合すれば世界のどこのメーカーもかなわないパワーを持っている。それをわざわざ分割して、それぞれが中規模メーカーのように振る舞うことは現実には難しいだろう。カンパニーのプレジデントはしょせん、中規模メーカーの社長にはなり切れないからだ。

生産技術部隊弱体化の組織改革

 しかし、もっと重大な問題をこの組織改革は内包している。生産技術部隊の分断、あるいはその存在感のなさである。

 トヨタの強さは、これまで他に類を見なかった生産の強さ、品質と生産性の両立を高次元で実現してきた点にある。その基盤はトヨタ生産方式(TPS)による日々の改善の愚直なまでの実行と、その成果の「横展開」である。この横展開は、トヨタ社内はもちろん、車体メーカー、部品メーカーにまで及んだ。

 カンパニー制の結果、とてもすっきりした製品別の組織が出来上がったのだが、TPS生産技術部隊もバラバラになってしまったのではないか。かつてのTPSの全社展開であれば、販売減、為替変動程度の外部環境は、全社、全グループ、さらには取引先企業を挙げて「乾いた雑巾を絞って」利益の水準を維持した。そのような展開が困難な事態を、昨年来の組織改革により自ら招いているのではないか。

 これは筆者の仮説でしかない。トヨタの実態はそうでないことを、ぜひとも豊田章男社長には示してもらいたいと願っている。
(文=井上隆一郎/桜美林大学教授)

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