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白井美由里「消費者行動のインサイト」

日常でより多くの幸福感を得る諸条件とメカニズムの研究結果…フローと消費者行動分析

文=白井美由里/慶應義塾大学商学部教授

 オンラインの消費者行動は、「目的志向の行動」と「経験的行動」の2タイプに分けられます【註4、註7】。前者は、商品購入などの明確な目的を達成するために開始され、意識的かつ意図的に情報探索と商品購買が行われます。後者は、主に新しい情報や経験への欲求から習慣的かつ進行的に情報探索が行われます。必ずしも購買にはつながりませんが、行われるとしたら衝動買いに近いものとなります。フローはどちらの行動にも生じますが、目的志向の行動のほうがより多く発生することが実証されています【註7】。

 消費者をフロー状態に導ける最適なサイトのデザインは、この2つの行動では異なると考えられますが、今日の消費者のオンライン情報探索には経験的行動が多いので、どちらにも合わせられるような、優れた検索機能を持ち、消費者との継続的な関係性の構築ができるサイトのデザインを検討されるといいかもしれません。

日常生活の質を高める

 フローが得られる活動をしている人は、他のことでもフローが得られる活動をしている傾向にあり、自分の人生に幸福や満足を感じる機会が多いようです。チクセントミハイは、適切な要素が存在するならば、どんな活動でもフローをもたらすことができ、生活の質を高められると述べています【註2】。毎日の生活が素晴らしいものになるかどうかは、「何を」するかではなく、「どのように」するかにかかっているそうです。

 日常の活動の中にはやる気を感じない、つまらないものがあるかもしれません。しかし、それらの活動に、実現可能でフィードバックがすぐに得られる目標を設定するだけで、不満や嫌気のある活動をより充実した活動へと変換できると説明しています。オンラインの消費者行動では経験よりも目的志向のほうがフローを体験しやすいことを前述しましたが、それは明確な目標があるからです。

 たとえば、主婦にとってスーパーでの買い物は、面倒でストレスの多いものかもしれません。もしもここに、まだつくったことのない料理に挑戦する、健康にいい食材を買う、食べたことのない食品を試してみる、がんばっている自分へのご褒美を買うといった具体的な目標を立てると、買い物はチャレンジ性があって集中できる意義のあるものになり、フローを体験しやすくなるのです。
(文=白井美由里/慶應義塾大学商学部教授)

・参考文献
【註1】Csikszentmihalyi, M. (1975), Beyond Boredom and Anxiety, Jossey-Bass.
【註2】Csikszentmihalyi, M. (1997), Finding Flow: The Psychology of Engagement with Everyday Life, Basic Books (ミハイ・チクセントミハイ (20109『フロー体験入門 -楽しみと創造の心理学』、大森弘監訳、世界思想社).
【註3】Esteban-Millat, I., F. J. Martinez-Lopez, D. Luna, and I. Rodriguez-Ardura (2013), “The Concept of Flow in Online Consumer Behavior,” in F. J. Martinez-Lopez (Ed.), Handbook of Strategic e-Business Management (pp. 371-402), Springer.
【註4】Hoffman, D. L. and T. P. Novak (1996), “Marketing in Hypermedia Computer-Mediated Environments: Conceptual Foundations,” Journal of Marketing, 60 (July), pp. 50-68.
【註5】Novak, T. P., D. L. Hoffman, and Y. Yung (2000), “Measuring the Customer Experience in Online Environments: A Structural Modeling Approach, Marketing Science, 19 (1), P.P.22-42.
【註6】Hoffman, D. L. and T. P. Novak (2009), “Flow Online: Lessons Learned and Future Prospects,” Journal of Interactive Marketing, 23 (1), pp. 23-34.
【註7】Novak, T. P. and D. L. Hoffman (2003), “The Influence of Goal-Directed and Experiential Activities on Online Flow Experiences,” Journal of Consumer Psychology, 13 (1 & 2), pp. 3-16.

白井美由里/慶應義塾大学商学部教授

白井美由里/慶應義塾大学商学部教授

学部
カリフォルニア大学サンタクルーズ校 1987年卒業
大学院
明治大学大学院経営学研究科
1993年 経営学修士
東京大学大学院経済学研究科
1998年 単位取得退学
2004年 博士(経済学)
慶応義塾大学 教員紹介 白井美由里 教授

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