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石堂徹生「危ない食品の時代、何を食べればよいのか」

安倍政権、米の安定供給を放棄…専門家の議論なし、突然の種子法廃止が波紋

文=石堂徹生/農業・食品ジャーナリスト

 意見交換会では発言を求めて挙手が相次ぎ、若い女性看護師が涙ぐみながら「種子法廃止で民間や外資が入ると、安全面への配慮が遅れがちに。安心・安全な未来をつくれるか、今が転換期だ」と訴え、共感を呼んだ。それに対し、農水省担当者は「安全性のリスクが高まる心配は理解でき、そうならないようにしたい」といいながら、「(民間種子が主力の)野菜でも、必ずしも問題があるわけではない。(米などの)多種多様な種子が育成されるように、体制を構築したい」など説得力のない説明に終始し、参加者の懸念を払拭できなかった。

厳しくも新しい門出を迎え

 そもそも、この種子法とは何か。種子法は1952(昭和27)年5月1日に公布・施行された。それは戦後、日本が独立を回復したサンフランシスコ平和条約【編注2】が発効(同4月28日)した、その3日後のことだ。当時、食糧難が続き、同2月末には農林省が「食糧増産5カ年計画で年間500億円以上を投入、合計2000万石(約300万トン)の食糧増産を行う」と発表していた。

 その厳しくも新しい門出を迎えるなかで、「主要農作物の優良な種子の生産及び普及を促進するため、種子の生産についてほ場審査【編注3】その他の措置を行うことを目的とする(第一条)」として、種子法が制定された。これについては、「主要農作物種子制度運用基本要綱」【編注4】にわかりやすく、こう書かれている。

「(種子法に基づく)主要農作物種子制度は、我が国の基本的な食糧であり、かつ、基幹的な作物である主要農作物(稲<米>【編注5】、大麦、はだか麦、小麦及び大豆をいう)の優良な種子の生産及び普及を促進し、もって主要農作物の生産性の向上及び品質の改善を図ることを目的としている」

 さらに、こう説明する。この種子制度を運用するには、主要農作物の優良種子の生産・普及が、その基礎の品種選定から最終的に種子が農業者に引き渡されるまで専門的な知識・技術と周到な管理が必要だ。そのために品種の優良性の判別方法や、優良種子の適正・円滑な生産流通の方法などについて、周知させる必要がある。そこで種子法では、都道府県に対して以下について義務付けた。

(1)主要農作物の種子生産者のほ場(田畑)の「指定種子生産ほ場指定」
(2)「生産物審査」(種子の発芽良否、不良種子・異物混入状況などの審査)
(3)主要農作物の原種・原原種【編注6】の生産
(4)種子計画の策定
(5)優良種子生産・普及のための勧告・助言・指導

 そのなかで特に重要なのが、(6)別名・奨励品種と呼ばれる優良品種の決定【編注7】で、先の「基本要綱」【編注8】では、こうなっている。

「都道府県は、当該都道府県に普及すべき主要農作物の優良な品種(以下「奨励品種」という)を決定するに当たっては、当該都道府県における気象、土壌、農業者の経営内容及び技術水準、主要農作物の需要動向等を十分考慮する」

石堂徹生/農業・食品ジャーナリスト

石堂徹生/農業・食品ジャーナリスト

1945年、宮城県生まれ。東北大学農学部卒。養鶏業界紙記者、市場調査会社などを経て、フリーに。現在、農業・食品ジャーナリスト

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