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土屋健「楽しい古生物・化石の世界」

魚?未知の生物?実在する「見た目がヤバすぎる」モンスター…正体めぐり世界で一大論争勃発

文=土屋健/オフィス ジオパレオント代表、サイエンスライター
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 今回は、不思議な古生物を紹介しよう。

 はるか太古の昔に絶滅した古生物の中には、どうにも奇天烈な姿をしたものが少なくない。前回の記事で紹介した「異常巻きアンモナイト」も、そうした古生物の仲間ではあるが、長い長い生命史には、ほかにも“ブッ飛んだ姿”の古生物がたくさんいる。その中から、今回は「モンスター」と呼ばれる動物を紹介しよう。

所属も生態も不明…お前はいったい何者だ?

 アメリカ・イリノイ州にある約3億1000万年前(古生代石炭紀後期)の地層からは、たくさんの動植物の化石が、焦げ茶色の岩塊の中に含まれるかたちで見つかっている。その中には、サカナやカニ、エビの化石もあれば、通常はきわめて化石に残りにくいとされるクラゲの化石もある(一般に、骨や殻などの硬組織ほど化石に残りやすい。クラゲはまさにその対極的な存在なので、化石に残りにくい)。これらは、かつての浅海域~河川にかけて堆積したものとみられている。

 さて、そんな化石群の中に一際変わった姿のものがある。平たく細長い胴体を持つこの動物は、大きなもので全長40cmほど。細長い胴体の一端からは、さらに細長いチューブのようなつくりが伸び、その先には細かな突起が並ぶハサミのようなつくりがある。

 そのチューブのようなつくりのつけ根の近くでは、胴体の左右から、これまた棒状の構造が伸びており、その先には、なんと眼がついていた。細長い胴体の他方の端には大きなひれがある。こうした特徴から推測された往時の姿は、横に平たいからだを上下にくねらせながら、水中を泳いで、チューブの先にあるハサミで獲物をとらえる、というものだった。

魚?未知の生物?実在する「見た目がヤバすぎる」モンスター…正体めぐり世界で一大論争勃発の画像1イラスト=服部雅人

 このなんとも珍妙な動物の名前は「ツリモンストラムTullimonstrum)」という。発見者のアマチュア化石収集家である「フランシス・ターリー」にちなみ、「ターリーモンスター」とも呼ばれる動物だ。

 ターリーモンスターは、1966年に初めて報告されてから、ずっと謎の動物だった。その化石は決して希少なわけではなく、数としてはそれなりに見つかる。しかし、どの標本を調べてみても、わかることは少なかった。既知のどの動物とも似ておらず、所属分類不明。水棲動物であることは確かだが、いったいどのように暮らしていたのか、何を食べていたのか。その生態の予想がつかない。もちろん、祖先や子孫といった系統関係も謎である。まさに「モンスター」だったのだ。

ターリーモンスターはサカナ?その正体とは

「謎の塊」ともいえたターリーモンスター。「その正体がわかった」という趣旨の研究が発表されたのは、つい最近。2016年3月のことである。

 イギリスの学術誌「nature」に「The ‘Tully monster’ is a vertebrate」(「ターリーモンスター」は脊椎動物だ)というタイトルの論文が掲載されたのだ。研究にあたったのはアメリカ・イェール大学のヴィクトリア・E・マッコイたちで、論文の執筆者には実に16名もの研究者が並んだ。シンプルな論文タイトルといい、研究者の人数といい、この研究発表がいかにインパクトのあるものかを物語っている。

土屋健/オフィス ジオパレオント代表、サイエンスライター

土屋健/オフィス ジオパレオント代表、サイエンスライター

修士(理学) 日本古生物学会会員 日本地質学会会員 日本文藝家協会会員
日本地質学会刊行一般向け広報誌『ジオルジュ』デスク
オフィス ジオパレオント

Twitter:@paleont_kt

『石炭紀・ペルム紀の生物』 恐竜時代の前の時代に当たる石炭紀とペルム紀。 この二つの時代に一体何が起こったのか? 地球上の生命史において、石炭紀・ペルム紀はどういう意味を成していたのか? 二つの紀の化石をひもときながら、この時代を懸命に生きた古生物の姿に迫ります。 amazon_associate_logo.jpg

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