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湯之上隆「電機・半導体業界こぼれ話」

リストラに怯える日本の半導体技術者を、海外企業は年収数億円出しても欲しがっている

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電機や半導体産業の給料とは


 日本の大学生が電機や半導体産業に行きたくない理由がもう一つある。それは、この業種は概して給料が高くないということである。古い話で恐縮だが、私が修士課程を卒業して日立に入社した1987年は、バブル経済の始まりの頃だった。私の記憶では、最初にもらったボーナスが30万円くらいだった。全額を銀行に預金しに行ったら、窓口の女性から、「今度の冬のボーナスは、半分じゃなくて全部持ってきてくださいね」と言われてショックを受けたことを覚えている。

 その後、バブルが到来するのだが、給料はほとんど上がらず、バブルを享受できたという実感はまるでない。当時の電機メーカーは入社5年目くらいまでは給料がほとんど上がらないシステムだったからだ。もし今も電機メーカーが入社して5年くらいは給料があまり上がらないシステムが継続されているとしたら、2年連続不祥事を起こし、経営幹部を信用できなくなった東芝の若手社員は、「こんな会社に入ったのは間違いだった」と見切りをつけて、可及的速やかに転職していくのではないか。

外資系企業では


「電機や半導体産業の給料は低い」というのは、実は日本だけのことだと思い知る出来事があった。

 私は、2002年に日立を退職し、同志社大学の経営学の教員となるとともに、長岡技術科学大学工学部の客員教授にもなった。同志社大学では、半導体産業の経営学研究を行ったが、長岡技大では修士や博士の学生の指導を行った。

 あるとき、長岡技大に外資系半導体製造装置メーカーのリクルーターがやってきた。学生に会社案内のプレゼンをしたいというので、学部4年生、修士課程、博士課程などの学生を数十人集めた。その外資系企業のリクルーターは、「博士課程のエース級の人材をマーケッターとして採用したい」と切り出した。普通、理工学部の修士や博士課程卒は研究職や技術職を希望するので、「マーケッター」ということに学生たちも私も驚いた。

 そしてその待遇は、「博士課程卒の27~28歳の場合、入社初年度の年俸は900万円。仕事はシリコンバレーでのマーケティング。幹部候補生として育成する予定で、順調にいけば32歳頃には年俸は2倍になっている」と説明された。このプレゼンを受けた学生は、「マーケッター」という今まで考えたこともない職種にも驚いたが、その待遇にも驚いていた。恐らく日本の企業の年俸の2倍以上だったからだ。

 質疑応答の際、このプレゼンを企画した客員教授の私自ら「僕が行きたい」と志願したが、「湯之上先生は歳を食いすぎているからダメだ」と却下された。まったく残念だ。また結果的には、私の教え子で、この企業に応募したものはいなかった。

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