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『母になる』、エリカ様の熱演も台無し!脚本家のせいでイヤミたっぷりなラストに

文=吉川織部/ドラマウォッチャー
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『母になる』、エリカ様の熱演も台無し!脚本家のせいでイヤミたっぷりなラストにの画像1『母になる』公式サイトより

 沢尻エリカ主演の水曜ドラマ『母になる』(日本テレビ系)の最終回が6月14日に放送され、平均視聴率が9.7%(関東地区平均、ビデオリサーチ調べ)だったことがわかった。前回からは1.3ポイントの増加で、後半のぐだぐだ展開にもかかわらず最終回に期待する視聴者が少なくなかったことがわかる。

 このドラマは、誘拐事件によって9年間別離していた結衣(沢尻)と広(関西ジャニーズJr. 道枝駿佑)の親子を中心としたストーリー。7年にわたって広を育てた麻子(小池栄子)と広の関係や、結衣と麻子の対立、広が本当の家族の一員となる姿などが描き出された。

 最終回の結末については「お母さんて2人いちゃいけないのかな」と広に言わせた前回のラストや公式サイトの予告などから、結衣と麻子が和解に至るオチは見えていた。このため、「最終回は結衣と麻子が笑って並び、そろって広に『お母さんだよ』と呼びかけるような、ありきたりなラストになるのではないか」と心配する視聴者も多かったし、筆者もそう思っていた。

 実際の最終回は、さすがにこんな見え見えのオチにはならず、結衣は麻子に「あなたを許したわけじゃありません。許せるわけありません」とあらためて伝えた。だが、誰かを憎んだまま子育てをしたくないとも語り、「あなたを許せる時が来たら、広を連れて会いに行きます」と和解の意思を示した。麻子も、自分がいる奥能登は天気が変わりやすいので傘を忘れないようにと応じる。しかし、麻子は過去の罪が原因で勤め先の旅館をクビになってしまったため、結衣と広が麻子を訪ねた時には、もうそこにはいなかった。身勝手ゆえに9年間も実の親子を引き裂いてしまった罪を噛み締めた麻子が、黙って身を引いたことを思わせるラストとなった。

 まあまあ悪くはないオチではあったが、結衣の台詞にはかなりの違和感があった。「いつか私はあなたを許さなきゃいけない」「いつかあなたに何を言われてもびくともしないで笑っていられるような母になりたい」など、いちいち偉そうなのだ。極めつきは、「なんでもない日常がどんなに幸せか。(略)あなたに奪われた9年間がなければ気付かなかった。ありがとう」と麻子に語り掛けた場面。感動のシーンのように演出していたが、どう聞いてもイヤミにしか聞こえない。

 結衣は以前にも「かわいそうに」と不用意に麻子につぶやいて彼女をキレさせたが、あれはあれでストーリー上の必然性があった。だが今回は、麻子への敵対心や対抗心を捨て去ろうと決意して語り掛けた場面であり、結衣にそんな意図はないはず。それなのに、脚本家の言葉選びがおかしいせいで、最後まで結衣がイヤミっぽくていやな人間に見えてしまう。感動のラストとなるはずのシーンを台無しにした脚本は、完全に失敗といってよいだろう。

役者たちの次回作に期待大

 結衣の友人である莉沙子(板谷由夏)についても、ドラマを通して何を描きたかったのかよくわからない。子育てを夫が担当し、母親は外で仕事に専念するという新たな家族の形を見せてくれるのかと思ったら、結局は「やっぱり子どもが成長するまでは仕事をセーブして子育てするのが母親の道」みたいなありきたりな話に着地した。最終回なのに、結構な尺を取ってそんなつまらない話を繰り広げたのは、このドラマで描かれる3人の「母」のうちの1人という位置付けなのに、ほとんど描かれなかったことのつじつま合わせでしかない。

 このドラマには、実の母子である結衣と広の親子関係構築、育ての母である麻子と広との別れ、広の両親である結衣と陽一(藤木直人)の関係修復、結衣と麻子の対立など、主要な登場人物だけでも数多くの描くべき要素があり、本来ならその一つひとつにかなりの展開があったはずだ。このうち、かろうじて掘り下げることができたのは結衣と麻子の関係のみ。明らかに手を広げすぎて失敗した作品だといえる。

 とはいえ、沢尻と小池の演技は評判となり、道枝はかわいらしいビジュアルで一躍注目を浴びた。藤木のちょっとふんわりした父親ぶりもおもしろく、過去を引きずりながらも子どもたちの幸せを願って仕事にまい進する児童福祉司・木野を好演した中島裕翔も、若手らしからぬ存在感を発揮した。脚本はいまひとつ出来が良くなかったものの、役者陣の演技力と優れたビジュアルでなんとか持ちこたえたドラマとして評価したい。今作の役者たちに、また違う作品で出会えるのが楽しみだ。
(文=吉川織部/ドラマウォッチャー)

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