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米国、支配層とFBIによるトランプ政権転覆活動の内実…ロシア工作説の真相

構成=深笛義也/ライター

トランプに反対するということで、署名が公開されています。ここには、過去に司法副長官(Deputy Attorney General)、国務省法律顧問(Legal Adviser of the Department of State)、国家安全保障担当大統領補佐官(National Security Advisor)、国務省参事官(Counselor of Department of State)だった人々、司法省(Departmennt of Justice)にいた人など、すごいメンバーが並んでいるんです。マイケル・グリーンやマイケル・オースリンなど、知日派で知られる政治学者も名を連ねています。これは皆、共和党の系統の人々です。ブッシュ政権を支えた中核になっていた人たちで、本来は政府の中心にいるはずの人たちですが、あからさまにトランプに反旗を翻しているわけです。

 何が起こっているかというと、共和党は勝ったけれども、たぶんこの人たちは、政府の要職に就けていないのです。このグループは、ヒラリーが絶対勝つと思っていて、トランプを攻撃することによって、ヒラリーの政権になったときになだれ込もうとしていた。その目論見が外れたということです。そういうこともあって、安全保障、司法、金融を中心としたエスタブリッシュメントが、トランプに非常に強く反対しています。アメリカン・エンタープライズ公共政策研究所(AEI)の著名な人間も、『1年以内にトランプは大統領から降ろさなくてはいけない』ということを言っている。

 そういう大きな流れのなかに、FBIの捜査はあるのです。普通は“忖度”してやらない。大統領権限に刃向かうようなことを、司法関係はまずやりません。あるとしたら、『この人間は終わりだ』というような世論になったとき。まさにニクソンのようなときですね」

アメリカの基本政策

 共和党の有能な人材が政権には入れないということは、トランプ政権の省庁人事がなかなか確定せず、不安定であることにつながっているのだろうか。

「トランプはそれでいいのです。ホワイトハウスで全部やるから。自分のコントロールの利かないところに勝手に動かれるよりは、すべてホワイトハウスが決めればいいと考えています。大統領令の発令は過去最高ぐらいにやっていて、全然困ってない。トランプは、下からの積み上げを何も必要としていません。

 ただし、ホワイトハウスのなかでも、政策をめぐっての大きな争いがあります。今、クシュナーが基本的には全部を牛耳るようなかたちになっていて、これにバノン主席戦略官が抵抗しています。バノン自身が切られるかもしれないという状況です。そうしたなかで、クシュナーもロシアとの関係があるとして、クシュナーの勢力を排除しようとする動きがあるわけです」

 つまり、トランプ降ろしのためにロシアとの関係が取りざたされているのか、もしくはトランプとロシアとの関係がやはり問題なのか。

「過去のビジネスを通じてトランプがロシアと近しいのは事実ですし、選挙期間中からずっとロシアとは協調するということを言ってきました。しかし、安全保障はロシアとの緊張を前提として考えるというのが、アメリカの基本政策です。ロシアの脅威を強調することによって、ヨーロッパの軍事化を進めていくというのが、外交政策の柱のひとつです。

 トランプがロシアとの融和を進めたら、その柱が崩れるのではないかという恐れがあるのです。アメリカが主導してNATO(北大西洋条約機構)諸国は、GDPの2%を国防費に使うという目標を決めています。ところが、たとえばドイツは1.2%で、アメリカはずっとドイツに対し『国防費を増やせ』と言ってきた。

 しかし、ロシアとの平和的関係ができれば、意味がなくなってしまう。1991年にソ連が崩壊してロシアになって以降、NATO諸国は国防費を削減してきました。そして5年前くらいに、ロシアはもはや我々の敵ではないという方針をNATOは出した。そうなると、さらなる国防費の削減になり、米軍基地の撤退ということにもなりかねない。アメリカの軍需産業にも打撃です。そこで、共和党内のネオコングループが仕掛けて起きたのがウクライナ問題で、ロシアがクリミアを強硬的に併呑することで、ロシアの脅威は存在し続けているということになったわけです」

(構成=深笛義也/ライター)

※次回に続く

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