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土屋健「楽しい古生物・化石の世界」

恐竜、進化の「定説」覆す新仮説が波紋…分類や教科書は大幅書き換えの必要?

文=土屋健/オフィス ジオパレオント代表、サイエンスライター
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 各種報道では、さも明日にでも恐竜類の分類に変更が必要な物言いだったが、まずは、今回の論文のタイトルに注目してみてほしい。「A new hypothesis of dinosaur relationships and early dinosaur evolution」である。

「A new hypothesis 」(ひとつの新仮説)

 つまり、いかにインパクトのある論文であったとしても、これは「仮説」であり、教科書の書き換えを迫るような、いわゆる「定説」ではない。筆者に問い合わせてきた業界関係者にも、まずはそのことを説明し、「まぁ、落ち着いてくださいよ」と説明した(ほかにも、内々にいくつかの安心できる要素は伝えている)。もっとも、報道でも「仮説」であることには触れているのだが……。

 そもそも論文とは、発表された段階でそれが“決まり”になるというものではなく、その後、長い議論が続いて教科書に載るような“みんなが納得する定説”へと昇華していく。

 まさに小林准教授が指摘するように、今回の発表は「議論の呼び水」となることはあったとしても、それ以上のものでは決してなく、一般向けの図鑑などで書き換えが必要になるものではない。「強いて言えば、コラムに載せる」あたりが妥当なところだろう。もっとも、それも「強いて言えば」という段階である(発表される論文のすべてをコラム化していたら、ページ数がいくらあっても足るまい)。

 いずれにしろ、こうした論文が出たことは事実だ。遠からず、これを支持する論文や反対する論文が発表され、研究者間での議論が活発化していくことだろう。データとなる化石が少ないという点で、「じゃあ、もっと初期の恐竜の化石を探そうじゃないか」という動きが出てくるかもしれない。その意味で、今後の展開に注目である。
(文=土屋健/オフィス ジオパレオント代表、サイエンスライター)

●取材協力/北海道大学総合博物館 小林快次 准教授

【参考資料】
Matthew G. Baronほか,2017,A new hypothesis of dinosaur relationships and early dinosaur evolution,nature,vol.543,p501-506

大人のための「恐竜学」』(祥伝社/小林快次監修、土屋健著)

『古生物学事典 第2版』(朝倉書店/日本古生物学会編)

土屋健/オフィス ジオパレオント代表、サイエンスライター

土屋健/オフィス ジオパレオント代表、サイエンスライター

修士(理学) 日本古生物学会会員 日本地質学会会員 日本文藝家協会会員
日本地質学会刊行一般向け広報誌『ジオルジュ』デスク
オフィス ジオパレオント

Twitter:@paleont_kt

『大人のための「恐竜学」』 「恐竜に夢中になるのは子どものうちだけ」。そんなふうに思っていないだろうか。 しかし、恐竜を知ることは大人にとっても楽しく、知的刺激に溢れている。 恐竜学の発展は日進月歩。「首長竜や翼竜は恐竜ではない。一方、鳥類は恐竜で ある」など、今は常識であっても、意外に知らない人も多い。最新の図鑑を見ると、 かつてとは異なる姿が描かれていることに驚くはずだ。 本書では、実際にウェブ上で募集した質問に、恐竜学の第一人者が答えていく。 基本から最新研究成果まで、一冊で手に入る、これまでにない大人のための入門書。 amazon_associate_logo.jpg

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