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ウザイ中国人観光客“爆増”でホテルが取れない!台湾と争奪戦、ネックはあのお台場の名所

文=小川裕夫/フリーランスライター
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ウザイ中国人観光客“爆増”でホテルが取れない!台湾と争奪戦、ネックはあのお台場の名所の画像1「Thinkstock」より
 安倍晋三政権は2013年夏から段階的に、東南アジア諸国に対するビザ発給要件の緩和を進めている。そうした背景もあって、訪日外国人観光客は増加の一途をたどっている。

 これまで外国人観光客といえば、中国、韓国、台湾、香港からの訪問が圧倒的多数を占めていた。しかし今後は、東南アジア諸国から訪れる外国人観光客をターゲットにした商戦が激化すると予想される。

 訪日外国人観光客誘致のメリットは、単純に外貨流入によって日本経済が潤うだけではない。中国人観光客が押し寄せた2月は、日本の観光業界では閑散期に当たる。そうした閑散期にホテル・旅館をはじめとする観光業界が稼働すれば、期間雇用から正規雇用に切り替えられる観光産業従事者は多数に上るだろう。いわば、外国人観光客の誘致は雇用政策という側面も持つのだ。

 もはや外国人観光客の消費行動は、日本経済にとって大きな割合を占めるまでに成長した。そうした外需で、やはり無視できないのは中国人観光客だ。

 昨年から今年にかけて、東京・銀座では中国人観光客が団体で歩く姿がやたらと目立った。14年の訪日中国人観光客は240万人を突破している。前年比約83%増だから、中国人観光客が目立つのは当然だ。特に2月は中国の春節とも重なり、今年も多くの中国人が観光目的で訪日した。

 中国人観光客がショッピングで山のように商品を買う“爆買い”は、社会現象と化した。中国人観光客の消費行動は2月の百貨店売り上げを押し上げ、低迷が続く百貨店にとって久々に訪れた福音といっていい。

 ビジネスや観光で訪日した中国人1人当たりの平均滞在日数は18.6日と長期にわたり、支出額も約23万円と他国を圧倒している。訪日する中国人全体で約5580億円もの消費が生み出され、それらが日本経済を刺激している。

 安倍政権発足以来、日中関係は冷え込んでいるといわれるが、少なくとも観光客レベルでは日中関係の影響は見られない。引き続き中国人観光客によって日本経済が刺激を受ければ、日本にとってもプラスだ。今年も訪日中国人観光客は増加傾向にあり、その波に乗って日本経済は復活する――と思いたいが、その頼みの綱でもある中国人観光客を狙っている国は日本ばかりではない。

中国人観光客取り込み戦争激化

「中国人にとって憧れの海外旅行先はヨーロッパとアメリカです。しかし、価格や時間、ビザ等の問題などがあって、気軽には行けません。対して、アジアは中国人にとって敷居が低く気軽に行けることから、毎年多くの旅行客がアジア各国を訪れています。日帰り感覚で行くことができるマカオや香港を除けば、費用面やビザといった面から気軽に行ける韓国、タイ、台湾が人気の旅行先です」(日本政府観光局プロモーション部)

 例えば、中国人に人気の韓国は、数年前から中国国内で韓流ドラマが流行した影響がある。中国では韓流ブームが続いており、それらが韓国人気を押し上げている。韓国も中国人観光客を積極的に誘致している。

 さらに日本にとって手ごわいライバルになりそうなのが台湾だ。中国と台湾は歴史的な経緯から、これまで静かな対立が続いてきたが、台湾海峡両岸をめぐる状況は少しずつ変化し、台湾を観光で訪れる中国人は、ここ数年で急増している。その理由は、台湾のビザ発給要件が緩和されていることにある。中国は08年から団体旅行に限定して台湾への旅行を解禁した。さらに11年には制限付きながら個人旅行も解禁された。これで台湾人気はますます上昇し、日本を猛追している。

 台湾の言語は厳密には大陸のそれとは異なるものの、おおよそは通じる。生活習慣も近い。実際の距離も近いため、旅行のハードルは高くない。そうした理由から、台湾は中国で人気の旅行先になり、訪台中国人観光客は年間約400万人まで増加している。台湾を旅行する外国人観光客は年間約800万人だから、2人に1人が中国人であり、台湾経済に与える影響も大きくなっている。

日本観光業界の中国人観光客誘致策

 台湾が攻勢を強める中、日本はどのように中国人観光客の呼び込みをかけるのか。

「鍵は“ブランド価値の向上”と“リピーターの獲得”です。具体的な施策としては、新聞や交通広告、現地の旅行会社や航空会社との共同プロモーションを展開しています。特に重視しているのは、中国人同士の“口コミ”です」(同)

 口コミといっても現代ではインターネットを通じた情報伝達だが、日本では当たり前に使われているツイッターやフェイスブックは、中国本土では使用が制限されている。代わりに用いられているのが中国版ツイッターの微博(ウェイボー)や中国版LINEの微信(ウェイシン)だ。

 これらのSNSでは、例えば、あるユーザーが日本に行ったときの写真を掲載して、他のユーザーが「いいね!」を押したりコメントを付け合ったりするといったコミュニケーションが頻繁に行われている。

 中国本土に住む中国人は海外旅行が解禁されてから日が浅く、まだ海外旅行を経験している人は多くない。貴重な海外旅行は、周囲に自慢できるステイタスになっている。日本観光業界は、そうした中国人の心理をくみ取り、友人や会社の同僚などに“羨ましがられる”観光地や体験を積極的にPRし、観光地のブランド化を図っている。

 これまで中国人観光客の間で人気が高かったのは、成田に到着した後、東京-京都・大阪をバスで移動しながら観光するコースだ。成田から入国し、関西国際空港から帰国する、もしくはその逆のルート。東京-京都・大阪間は業界関係者の間でゴールデンルートと呼ばれ、その間には中国人の間でも人気が高い富士山もある。バスで移動するのは、新幹線代が高いということもあるが、たくさん買い物をしても大量の荷物を積めるというメリットがあるからだ。

 連日、ゴールデンルートは中国人観光客でにぎわっているが、今後に向けた課題もある。ゴールデンルートは外国人客が集中するので、繁忙期には東京、京都、大阪のホテルがいとも簡単にパンクしてしまう。宿が取れなければ、みすみす中国人観光客を逃してしまう。機会損失は経済的な損失にもつながる。

 少しでも中国人観光客を取り込むため、日本政府観光局はゴールデンルートから外れた地方に分散する観光プロモーションも始めている。その先兵として挙がったのが、中国と地理的にも近い九州だ。観光地を開拓するのは、地方都市へ経済効果を波及させようという狙いもあるが、リピーター向けの集客戦略でもある。

船舶利用の観光客への対応分かれる

 対してライバル・台湾は、ターゲットを富裕層に切り替える戦略を取り始めている。これまで中国からの台湾旅行商品は日本に比べ価格が安かったため、呼び込む観光客のターゲット層が異なり、図らずもうまく棲み分けができていた。しかし、富裕層に手を伸ばし始めた台湾は日本と競合するライバルとなり、中国人観光客の誘致合戦が激化している。

 台湾が富裕層にターゲットを切り替え始めたのは、近年海外から船舶でやって来る観光客が増加していることも一因である。昨年、中国大陸以外から航路で訪台した外国人観光客は約60万人。クルーズ船で来る観光客は富裕層であり、台湾はそうした富裕層の需要を察知した。台湾は手始めに台北近郊の基隆港と南部の高雄港の整備に乗り出し、これらが完了すれば台湾はクルーズ船を多く受け入れられるようになる。必然的に訪台する富裕層は増加するだろう。

 日本もクルーズ船による富裕層の取り込みを始めているが、港湾開発はそれほど熱気を帯びていない。なによりレインボーブリッジやベイブリッジの高さ制限にひっかかり、海外の大型豪華客船は東京港や横浜港に入港することができない。こうした事態がクルーズ船に乗って観光に来る富裕層を逃す要因にもなっている。しかし、日本の港湾行政は観光よりも工業や物流に重きを置いているためか、あまり問題視されていないようだ。

 現在、円安が進んだこともあって、中国人観光客は堅調に増えている。しかし、肝心の観光コンテンツに魅力がなければ、円安のメリットがあっても観光客からそっぽを向かれてしまうだろう。円安というアドバンテージも、いつまで続くのかはわからない。

 台湾、韓国、タイ、ベトナム、カンボジアなどが攻勢を強める中、日本は中国人観光客争奪戦を制することができるだろうか。
(文=小川裕夫/フリーランスライター)

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