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若いうちのEDは動脈硬化の危険?不妊の原因の5割は男性、早めの受診が重要

取材・文=名鹿祥史
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若いうちのの画像1不妊の原因の半分は男性である(depositphotos.com)

 日本では現在、1130万人が満足できる勃起ができていないといわれます。具体的には40代の2割、50代の4割、60代の8割がED(勃起不全)であると推測されているのです。

 EDは、男性ホルモンのテストステロンの低下が引き起こす症状のひとつだ。

 メンズヘルスクリニック東京院長の小林一広医師は、EDは動脈硬化と関係があるという。

「EDとは結局、血管の障害といわれています。どうしてEDになるかというと、動脈硬化で最初に海綿体の細い動脈がまずやられてしまう。これを放置していると、太い血管も動脈硬化になって、詰まって心筋梗塞になったり脳梗塞になったりもします。だから若いうちからEDが出ると、その人は動脈硬化が出やすい人だから注意してくださいねという話をします。EDは動脈硬化注意へのサインでもあるんですよ」

 テストステロンには神経や血管に作用し、一酸化窒素(NO)やその標的であるサイクリックGMPという分子を産生し勃起を促すという大切な働きがある。また異性を惹きつけるフェロモンを発生させる働きもあり、ドーパミンという興奮作用のある神経伝達物質を増やす効果もある。

 だからテストステロンが減少すると、身体と心からEDになってしまうという。

「男性力ドック」でテストステロンの状態を判定

 メンズヘルスクリニック東京の男性更年期専門外来では、男性更年期障害を疑うべき症状と、それを引き起こす要因を「身体」「精神」「性」の3つのカテゴリーに分けて測定する「男性力ドック」を勧めている。テストステロンがその患者さんにどのような影響を与えているのかを数値化するものだ。

 個々人の状態に合わせてテストステロン注射やオリジナルのアンドロゲンゲル(男性ホルモンゲル)、サプリメント、さらには一般的なシアリス レビトラなどの勃起不全の改善薬も処方される。

低侵襲で副作用のない最新のED治療法

 さらに新しいED治療として注目されている「ED1000」による治療が、同クリニックでは受けられる。低強度の衝撃波を陰茎に与え、加齢などの原因により弱ってしまった血管に新たに新生血管を再生して血流を増幅させることで陰茎部の血流が良くなり、EDの症状を根本的に改善することができるという。

「心疾患・脳疾患などの持病でED薬が飲めない、ED薬の副作用が不安、または服用しているが効果が感じられない、薬に頼らず根本的に治療がしたい、などの場合には、侵襲性が低く副作用のない治療として行っています」(小林医師)

 その効果は、どの程度なのか。

「一般的には、約80%の方が効果を実感できるとされています。挿入可能な硬度が得られない患者さんでは、治療後約60%で挿入可能な硬度が得られています」(同)

 ED1000を使った治療はまだ世界でも少なく、この機器自体も世界で約200台、日本で25台しかないという(2014年12月現在)。

男性の不妊の原因はほとんどが精子の問題

 ED同様、妊活の相談のために同クリニックの<男性妊活外来>を利用するケースも増えてきた。日本での不妊の定義は「健康な夫婦が避妊をしないで夫婦生活を送っているにもかかわらず、1年間妊娠しないこと」とされている。

「不妊症という診断がついたカップルについては、不妊の原因の半分は男性です。実際に調べても、その比率はほぼ半々。ということは、男性もそういう問題に真摯に取り組んでいかないといけない。そうは言っても、産婦人科には行きにくい。そこで男性のことなら男性用にということで、当院の男性妊活外来が窓口となるわけです」(同)

 男性が不妊の原因となる場合は、射精がうまくいかない(性機能障害)、射精される精液の中の精子の数や運動率が悪くなっている(精液性状低下)、という2つの場合に分けられる。

 さらに、男性不妊には先天性と後天性のものがある。先天性のものとしては、遺伝的要因や発育段階で受けた影響などがあり、後天性のものには、ストレス、アルコール、喫煙、肥満、病気や薬の影響、精巣の損傷もしくは機能障害、精子の産出あるいは射精に関するトラブルなど、さまざまな要因が考えられる。

 相談に来た男性に対し、クリニックでは射精に至るまでのプロセスと射精してからの精子の状態がどうかを調べる。家で射精した精子を持ち込んでも検査まで時間がかかってしまうと参考にはならない場合があるという。院内で射精も行ってもらい、出たばかりの精子を調べる。

「不妊の原因は、まず精子の数ですね。調べてみたら精子の数が圧倒的に少ない場合が少なくない。1回の射精で通常は億単位の精子が出ますが、それが極端に少ないかゼロである場合には、妊娠が極めて難しくなります。しかも、数が多ければそれでいいというわけでもなく、活発であることも重要です」(同)

 さらに「不妊を改善するために必要なのは、何よりも体質の改善です。ビタミンEやアルギニン、亜鉛、セレンなどが効果がありますから、患者さんを診断した上で、その症状に合ったサプリを提供します。また漢方薬やクリニック独自で開発した妊活アプリも供給しています」(同)

ブライダルチェックで男性妊活外来を利用

「結婚・出産年齢が上昇している現代の日本では、以前に比べて社会的に妊娠しにくい状況と考えられます。今や男の10人に1人が精子に問題を抱える時代。不妊の原因の半分は男性側にあるにもかかわらず、それを知っている人は少ないのが現状です。男性妊活外来には夫婦で来ることをお勧めします」(同)

 夫婦で相談に来るメリットとしては「生活習慣など非常に細かい話を聞けますから、対策も立てやすくなります。妊活中の男性はもちろん、今後結婚を考えている独身男性、第1子が生まれてその後なかなか子どもができないと気になっている方など、すべての方が対象です。最近はブライダルチェックというものもあります。結婚する前に健康かどうかを知っておきたいということで、不妊のチェックに来る方が増えています」(同)

 メンズクリニックでの診療に抵抗があるという人もいるかもしれないが、「医学は常に進歩しているので、悪いほうにはいかない。薄毛もそう、更年期もそう、EDもそう。だから何かあれば医師に相談することは決して間違いではないと思います」と、気軽に受診することを勧める。

「歳をとることに抗うことがいいことかどうかはわかりません。だからアンチエイジングという言葉は嫌いです。患者さんには『いい歳のとり方をしましょう』と話すようにしています。そのためにどうすればいいかを一緒に考えましょうと」(同)

 小林院長の基本姿勢は、きわめて自然体だ。
(取材・文=名鹿祥史)

小林一広(こばたし・かずひろ) メンズヘルスクリニック東京院長
北里大学医学部卒業。同大学病院にてメンタルヘルスを中心とする医療に従事する。
その後、医療社団法人ウェルエイジングを設立。頭髪治療専門の城西クリニックを東京及び福岡に開院すると共に国内初の総合アンチエイジングセンター『AACクリニック銀座』を2006年3月に開院。2014年6月にメンズヘルスクリニック東京開設、現在に至る。
精神科医としての経験を生かし、積極的に心身両面からの治療に取組んでいる。

精神保健指定医、医療法人社団ウェルエイジング 理事長
聖マリアンナ医科大学幹細胞再生医学寄附講座講師

※ 初出/健康・医療情報でQOLを高める「ヘルスプレス」

名鹿祥史

名鹿祥史

東京都を中心に活動するフリーカメラマン・フリーライター。 ステージ撮影・舞台撮影の他、広告写真、音楽系アーティストやタレントの宣伝用写真も手がける。

Twitter:@tokyojinbutsuga

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