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平野雅章「FP相談1600件でわかった全体最適マネー術」

家購入の危険な罠…買う時も買った後も支払う、ローン返済以外の高額費用

文=平野雅章/横浜FP事務所代表、CFP、1級ファイナンシャル・プランニング技能士

 こうした購入の諸費用を金融機関から全額借りて家を購入することは可能だ。だが、これらを借りることを私はお勧めしていない。これらを借りる人は、貸す側の金融機関から信用力が低く評価されても仕方がない。審査により金利優遇が少なくなる、つまり住宅ローン金利が高めになってしまうことも多いのだ。また、住宅ローンの金利自体は低くても、購入の諸費用分は別のローンとなり、高めの金利が設定されていることもある。

 また、そもそもであるが現時点で貯金があまりなくて諸費用を支払うことができないのであれば、今の家賃で家計が収支トントンということである。ローン返済額が今の家賃並み、あるいはそれに近い資金計画であれば、住宅ローン以外の保有コストもあるので短期間で家計は赤字に転落してしまう。自己資金ゼロで購入しようとしている人の相談を受けると、こうした資金計画を不動産販売業者から提案されている人も多いが、リスクが高いと考えざるを得ない。

「賃貸は損。家は買ったほうが得である」か?

 家は買ったほうが有利なのだろうか。家を買うと、継続的に必要になる支払い、つまり住宅保有コストが意外に多いのは、前述した通りである。

 住宅保有コストで比重の大きい住宅ローンの利息は、現在の超低金利により固定金利を想定すればかなり少なく見込むことができる。これにより現在では、賃貸と保有の総コスト比較で保有が有利とシミュレーションできるのであるが、大きな差になるわけでもない。また、エリアの特性により、賃貸が有利になりやすいエリアと保有が有利になりやすいエリアがある。つまり、単純に「買ったほうが得」とも言い切れないのだ。

 優良企業に勤めている人などでときどき見かけるのは、家賃十数万円の賃貸住宅に住んでいても勤務先の手厚い住宅補助などで、自己負担は月3~4万円程度という人だ。こうした人も「賃貸は損だから、家を買いたい」と思っていたりするのだが、この程度の負担であれば標準的なファミリータイプのマンション保有コストを下回っているので、損得で判断するのであれば今すぐ購入する理由は見当たらない。また、住宅を購入すると、勤務先から支給されている月5万円の住宅手当がなくなるという人もいる。勤務先の制度もよく確認した上で、購入は検討したい。

 住宅の妥当な予算や、その人がいま買ったほうがよいかの判断は、毎日のように相談者の生涯収支シミュレーションを行っている私から見ると、簡単なものではなく、個別性が高いといわざるを得ない。これら3つは大事なポイントではあるが、そのまま鵜呑みにせず、一度、長期的な視点で考えてみよう。
(文=平野雅章/横浜FP事務所代表、CFP、1級ファイナンシャル・プランニング技能士)

平野雅章/横浜FP事務所代表、CFP、1級ファイナンシャル・プランニング技能士

平野雅章/横浜FP事務所代表、CFP、1級ファイナンシャル・プランニング技能士

お金の不安を相談で解消する相談専門ファイナンシャルプランナーとして、保険・住宅ローン・ライフプランを中心に相談4000件超の実績。家計分析ツール「生活費ポートフォリオ©分析」考案、短大の非常勤講師、執筆など活動は多岐に渡る。全国FP相談協会 代表理事も務める。
横浜FP事務所

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