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消え行く昭和のエロに思いを馳せて…『あの日のエロ本自販機探訪記』著者インタビュー

取材・構成=編集部

インタビューのアポ取りは執念の電話攻勢で

――自販機本の規制の歴史など、関連情報の収集もかなり時間がかかったのではないですか?

黒沢 そうですね。でも本を出すと決まってからは、もう一度しっかり洗いなおさなければ、と。あわせて、担当編集さんと本を出すなら業者さんに取材をしたいという話になりまして。

 あまり詳しくはお話できないんですが、ぼくがある場所から連絡先を入手してきたところ、担当編集さんがそこにしつこく連絡を入れ続けてくれましてね。毎日一回ずつ何カ月間も(笑)。

 そうしたらある日、「黒沢さん! 返事がきましたよ!」「マジですか!」と。そこから事情を説明して交渉して取材をお願いして――最初は警戒されましたけどね、自販機業者にとってメディアに出ることは、(当局に)目をつけられやすくなるんじゃないかとか、マイナスなことのほうが多いらしくて。でもマメに連絡し続けることで、次第に信頼してもらえるようになって、「いいですよ、お話しましょう」となったんです。

――どうしても怖い人たちがやっているのでは、という先入観があるんですが。

黒沢 全然そういうことはなかったですよ……人によって、昔はやんちゃだったのかもしれないなと思える人もいましたけど(笑)。むしろ逆に怖い人たちに脅されたりしたことが過去にはあったみたいですね。

――全部で3組、業者の方へのインタビューが掲載されていますが、お会いしてみてどうでした?

黒沢 実際会って顔がわかると、印象が変わってきますね。どういう方がやっているか、どういう思いでやっているのかがわかってくると、「ああがんばっているな」と思えてきたり、最初に行ったときはなかったポスターなんかが貼ってあって「おお」と思ったり。

――やはりマメに管理されているところと、そうでもないところとで、かなり差があるものですか?

黒沢 ええ、それはもちろん。ゴミの片付けひとつとっても、綺麗なところ、汚いところがありますし、販売しているグッズも差があります。また、ずっと行っているとお客さんの顔も見えてくるんですよ。極稀にお客さんとすれ違ったり、買い物をした痕跡が残っていたりすると、色んな人が来ているなと実感したりもして。

zihanki07.jpg高校生が実に入りづらそうな自販機。「アルバイト募集中」の貼り紙も

――高校生ぐらいの子が入り口前でためらっていたなんて、微笑ましいエピソードもありましたね。

黒沢 今はスマホでなんでも見られるのに、可愛いですよね(笑)。自販機でエロ本を買いに行くときのドキドキ感、買ったあとの充足感に年齢は関係ないんだなとも思いました。ただ、お客さんとして多いのはやっぱり高年齢層です。

――自販機の土地を貸している地主の方や管理をしている高齢の方などにも出会われていますよね。

黒沢 印象に残っているのは山口県の自販機で出会った管理人代行のおばちゃんですね、「あんた(管理を)やらない?」なんて、聞かれたりして。

 なんというか……エロ本自販機に土地を貸しているような方は、実は地元で疎まれていたりするのではないか、なんて考えたりしていたんですけど、全然そんなことなくて。さばけた人が多かったし、後ろめたく思っていたりもしませんし、自販機の周りに花壇を作って花を植えたり、植木鉢を置いてみたり、駐車場の草を抜いてくれたりしていて。

 土地のいいおじいちゃん、おばあちゃんがほとんどで、業者の方とも気軽に挨拶をしあっていたりする方もいましたね。

印象に残った数々の自販機たち

――全国津々浦々、自販機を巡られているなかで、印象深いものはありましたか?

黒沢 まずは「宇都宮市徳次郎町」(P.86)でしょうか。ネットで情報を得て行ってみたところ、鍵のかかった小屋に「営業時間夕方6時から朝6時」という張り紙がありまして。これはと思って、夜に出直したら、ちゃんと扉が開いていて、アダルトDVDを売っている自販機が小屋の中に鎮座していた、なんてこともありました。

――毎日ちゃんと鍵の開閉をやっているということですか?

黒沢 「アルバイト募集」の張り紙もありましたから、定時に鍵を開け閉めするだけのバイトがいるんだと思います。

 行ってみて驚いたのは「おもしろ館 妙高市姫川原店」(P.158)でしょうか。これは橋の上なんですよ。川に架かっている、地面からの高さも結構ある橋の横になぜかエロ自販機小屋がありまして。ストリートビューを見た段階では、なぜこんなところに? と思ったんです。現地に行って、裏から見てみてようやくわかったんですけど、そこは建物の2F部分なんです。2Fが橋に面していて、そこの踊り場のような場所に自販機を置いていたという。これ、隣の建物、多分母屋だと思われる建物なんかは半分崩落しているんですよ(笑)。先ほどのとは逆で、夜に行っていたらこんな構造になっていたことに気づかなかったでしょうね。

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zihanki06.jpg「おもしろ館 妙高市姫川原店」。上:2F部分が自販機スペース 下:半壊している母屋

――なんでこんなところに? という場所はやっぱり家賃が安いんでしょうか。

黒沢 それもあると思いますが、あとは建築基準法に引っかかるから家などを建てられない場所に自販機が置かれているケースもありましたし、これは明らかに違反しているだろうなという建物もありました(笑)。元々なんのために作られたのだろうと、不思議に思う建物もありましたよ。

「残る150カ所を見つけられるだけ見つけて、がんばって回っていこうかな」

――「いずれなくなるだろう」とセンチメンタルに触れられていましたが、改めて、今、エロ本自販機を追うことに、どんなロマンを感じられましたか?

黒沢 担当編集さんには「(エロ自販機を追うことは)黒沢さん自身の青春時代を追いかけているってことなんじゃないですか」と言われて初めて、ああ、そうかもしれないなと思いましたね。

 自分が大学生のころは、自販機もいっぱいあって、夜中にドキドキしながら買いに行ったりしていたんですよ。その後、ライターとして自販機エロ本の原稿を書くようになって、その本が自販機の中に入っているのを見ると、自分の妄想が自販機に閉じ込められているような感覚を覚えたんです。すごくエロ本が艶かしく見えたりして(笑)。

 ところが、その後あっという間に自販機の数は減り、自分の意識からも一度は消えました。それが「あ、まだあるんだ」となったときに、写真を撮っておこうと思ったというのは、やはり「今はまだあるけど、急がないとなくなってしまうかもしれない」という焦りもあったんだと思います。

――「この間まではあったのに、いつの間にか更地になっている」というケースがあるわけですものね。

黒沢 そうなんですよ。実際、本の執筆中に消滅した自販機も結構ありました。今後どんなに時代が変わっても、これから増えるということはもうないでしょうからね……。

「ギリギリ間に合う、最後のタイミングだったのではないか」と担当編集さんとも話したことがありました。同じことを3年後にやったら全然違う結果になっていたと思いますね、自販機の台数も、取材に応じてくれた業者の方たちも、状況はよりネガティブになっていたと思います。今このタイミングで、ギリギリ間に合ったというか。

 SNSやストリートビューなど、見つけるためのツールは進化する一方で、自販機はどんどん減っていく。ITの進化の傾斜線と、自販機のどんどん降下していく傾斜線とが、ちょうどいい具合に交差するタイミングだったのかなと考えています。

――自販機どころか、紙の成人向け雑誌も大分減っていますものね。今後の野望などはありますか?

黒沢 まぁ、見つけたスポットは取材に行かなくてはいけませんからね。その結果もどこかで発表できればと思います。掲載するとしたら自分のブログでしょうか、さすがにもう一冊分構成するほどの量はないでしょうから。

 この本に掲載したのが約350カ所、その後発見したのが50カ所。僕がまだ見つけられていない分をあわせても、現在、日本全国で多分500カ所弱ぐらいしかエロ本自販機はないんじゃないかな。だから、あと残る150カ所を見つけられるだけ見つけて、がんばって回っていこうかなと思います。
(取材・構成=編集部)

『全国版 あの日のエロ本自販機探訪記』
出版社:双葉社
発売日:2017年4月21日
定価:本体2,200円+税

『あの日のエロ本自販機探訪記』発売記念
誰も知らないエロ本自販機とエロ本小屋の話をしよう

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Loft PlusOne West 大阪府大阪市中央区宗右衛門町2-3 美松ビル3F
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