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大崎孝徳「なにが正しいのやら?」

「うまくいかない」と思われたLCC・ピーチ、極めて順調の「秘密」…ANA社長の英断

文=大崎孝徳/名城大学経営学部教授

 冒頭で述べたANALCC参入の背景に関して、日本経済新聞の連載「私の履歴書」(ANA元社長・大橋洋治氏)に興味深い話が載っていたので紹介したい。

 まず、そもそもの契機は香港を拠点とする投資会社の会長からの誘いであったということには驚いた。「お金はあるから、LCCをやってほしい」と畳みかけられたそうだ。その後、社内では「ANAがLCCをやってはいけない」など、反対の声も強かったようだが、「LCCに負けるようなANAなら、のみ込まれてしまえっ」といった社長の檄により、LCC参入が決定している。

 参入にあたっては、「FSC(ANA)の子会社路線ではなく、自立したLCCとして独自の発想でやらせる」という方針が固められており、これは現在の成功の大きな要因になっていると考えられる。なぜなら、ピーチの斬新なデザインやイメージ、LCCの王道を行く圧倒的な低価格は、この方針により実現していると思われるからだ。

 今後に関してANAは、「FSCとLCCを組み合わせることで、お年寄りから子供まですべてのお客様にご満足いただけるサービスを提供していきたいと思っている」とコメントしている。

 先日、筆者が受け持つゼミの学生との海外研修のために、あるLCCのサイトで全員分のチケットを予約することがあった。なかなか使い勝手の良いサイトではあったものの、預け入れ荷物の重さの選択、機内食の手配など、FSCと比較すると若干の煩わしさを感じた。現地到着は深夜、恐らく座席も狭いのではないかと危惧される。このように考えると、個人的にはFSCにしてもよかったと思う半面、何よりも価格を優先するであろう学生は大喜びするはずだ。

 FSCとLCCのそれぞれに対しては明確に異なる顧客のニーズがあり、今後もうまく共存していくのだろうとしみじみ感じた。
(文=大崎孝徳/名城大学経営学部教授)

大﨑孝徳/香川大学大学院地域マネジメント研究科(ビジネススクール)教授

大﨑孝徳/香川大学大学院地域マネジメント研究科(ビジネススクール)教授

香川大学大学院地域マネジメント研究科(ビジネススクール)教授。1968年、大阪市生まれ。民間企業等勤務後、長崎総合科学大学・助教授、名城大学・教授、神奈川大学・教授、ワシントン大学・客員研究員、デラサール大学・特任教授などを経て現職。九州大学大学院経済学府博士後期課程修了、博士(経済学)。著書に、『プレミアムの法則』『「高く売る」戦略』(以上、同文舘出版)、『ITマーケティング戦略』『日本の携帯電話端末と国際市場』(以上、創成社)、『「高く売る」ためのマーケティングの教科書』『すごい差別化戦略』(以上、日本実業出版社)などがある。

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