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日本とEU、「米国抜き」の世界見据え強固な連携達成…かつてない経済的互恵関係構築

文=真壁昭夫/法政大学大学院教授
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 EPAの大枠に関する評価として、国内産業に一定の配慮を示しつつも、双方の利害にとって好ましい内容をまとめることができたといえるだろう。基本的な認識として、TPPをはじめとする多国間の経済連携は今後も加速させるべきだ。関税撤廃、投資や競争に関するルールの統一化を実現することが国際社会の連携を強化し、日本の経済基盤を強化することにもつながると考えられるからだ。

日EU経済連携協定の意義

 
 日本とEU双方の経済基盤の強化に加え、国際社会における連携の重要性を示すためにも、双方がEPAの大枠に合意したことは重要だ。ハンブルクで開催されたG20サミットでは、米国の孤立が浮き彫りとなった。サミットの首脳宣言では、米国のトランプ大統領が重視する保護主義に反対することが明記された。また、「パリ協定から脱退するとの米国の決定に留意する」ことも記された。パリ協定とは、気候変動を抑えるための国際的な合意である。

 今、中国と米国の緩やかな景気回復が、世界経済全体の安定を支えている。しかし、中国は過剰な生産能力を解消できていない。不動産バブルや民間セクターでの債務累積も懸念材料だ。米国の景気回復にも、徐々に弱い部分が見えつつある。北朝鮮問題などの地政学リスクも高まっている。それに加え、欧州では英国のEU離脱交渉がどう進むかもわからない。世界経済の先行きは不透明だ。

 このなかで、国際社会の連携を強化することは、危機対応時の迅速な対応を支えるために重要だ。中長期的な経済活動を支えるためにも、経済連携を強化し、各国の潜在成長率の引き上げに注力すべきである。一方、米国が主張するように自国第一主義の政治が進み、保護主義的な通商政策が本当に実行されると、世界経済は縮小均衡に向かう恐れがある。そうした展開は避けるべきだ。

 こうした危機意識が、サミット前の経済連携協定の大枠合意につながった。言い換えれば、日本とEUは自由貿易、直接投資の促進を重視し、米国などを抜きにしても従来の経済の自由化を進める意思を表明した。それは、今後の経済連携を進めるための求心力を高めることにもつながるはずだ。

 今のところ、米国が短期間のうちに自国第一ではなく、国際協調を重視した政治に回帰するとは考えづらい。それには時間がかかるだろう。その間に、日本は国際社会の連携を強めるために、経済連携のイニシアティブをとることに力を入れるべきだ。

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