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教会聖職者やタレント、児童性的虐待の一大スキャンダル…7万人の小児性愛者ネット摘発

文=高月靖/ジャーナリスト
教会聖職者やタレント、児童性的虐待の一大スキャンダル…7万人の小児性愛者ネット摘発の画像1「Thinkstock」より

バチカンを直撃したスキャンダル

   豪・ビクトリア州警察、ジョージ・ペル枢機卿を複数児童の性的虐待で訴追――。

 6月29日に現地メディアが伝えたこの事件は、歴史的トップニュースとして全世界のメディアを駆け巡った。同性婚や避妊に保守的な立場だったペル枢機卿は、豪カトリック教会の頂点に立つ人物。それだけでなく、全世界のカトリックを統括するローマ教皇庁で財務を司るナンバー3だ。豪ABCは「このような容疑で訴追された聖職者のうち、近代以降で最高位の人物」と伝えている。

 ペル枢機卿は1970年代に行われたとされる複数の性的虐待で捜査されている。実はペル枢機卿も豪カトリック教会での小児性犯罪を調査する立場だったが、かねてから自身の関与が疑われてきた。

 ローマ教皇庁を擁するイタリアのメディアは、このスキャンダルに怒り心頭だ。オーストラリア出身のペル枢機卿を「騒ぎを起こすカンガルー」と呼び、同国を「聖職者の7%が小児性犯罪で告発された怪物のパラダイス」とこき下ろしている。

欧米で吹き荒れた児童虐待疑惑

 もちろんカトリック教会の小児性犯罪問題は、今に始まったことではない。80年代後半からアイルランド、カナダ、オーストラリア、アメリカを中心に、数十年に及ぶおびただしい被害の訴えが噴出してきた。ローマ教皇庁によれば、約3000人の司祭が絡んだ性的虐待が半世紀に遡って提起されているという。7月18日には、ドイツでも1945~90年の間に少なくとも547人の被害があったことが報じられた。

 欧米の小児性犯罪といえば、イギリスを騒然とさせた小児性愛者ネットワーク疑惑も記憶に新しい。まず2012年、前年に他界した元テレビ人気司会者が70年代に出演者の児童らを常習的にレイプしていたことが判明。警察による一連の捜査で、ミュージシャンやラジオ司会者ら7人が小児性犯罪で有罪判決を受けた。12年にはまた70~80年代に英政界要人らの組織的な小児性犯罪があったとする疑惑が浮上。警察が15年まで4次に及ぶ捜査を行い、当時の政界要人らが少年3人を殺害したとの証言も飛び出した。しかし関係者の多くがすでに他界、また80年代の調査報告書114点が何者かに遺棄されるなどの妨害・隠蔽もあり、真相究明に至っていない。

ICPOの通報から日本のネットワーク摘発

 日本でも80年代の幼女連続殺人事件以来、小児性犯罪は重大な関心事だ。今年4月、千葉ベトナム女児殺害事件が日本中を震撼させたのも記憶に新しい。

 その割に海外の事例への関心は低い。これはカトリック教会に馴染みがないだけでなく、海外の事例は男児・少年の被害が多く含まれていることも一因だろう。冒頭のペル枢機卿及び英政界のスキャンダル、またドイツでの例も、被害者は男児・少年ばかりだった。

 だからといって、日本が男児・少年への組織的な性的虐待と無縁というわけではまったくない。それどころか、インターネットに流出した日本製の男児ポルノが海外の捜査機関で問題視されるケースもある。2015年10月には国際刑事警察機構(ICPO)が、日本で撮影された児童ポルノ動画について日本の司法当局へ通報。これを受けて京都府警が28~40歳の男5人を逮捕している。摘発時に確認された被害者47人はすべて男児・少年だ。

 また古い例では07年に男児の児童ポルノサイトが摘発され、神奈川県などで男5人が逮捕された事件がある。当時の報道によれば、これも日本が児童ポルノの発信源という海外からの非難を受けて捜査が行われた結果だという。

男児ポルノを生産していた国内コミュニティ

 男児・少年も性的虐待の被害者になり得る――。海外ではずっとあたり前だったこの認識が日本でも広く共有され始めたのは、ここ数年のことだ。それまで日本で男児・少年と児童ポルノといえば、むしろ加害者となる場合の議論ばかりだったが、単純所持を処罰する14年の児童ポルノ法改正以後、ようやく摘発が相次いでいる。

 今年5月25日には広島など4県警が、大阪府や愛知県などで歯科医師(32)や看護師(42)ら男4人を逮捕。やはり男児・少年のいかがわしい動画を撮影し、SNSで提供するなどした疑いだ。警察がこの4人の犯行の糸口を掴んだのは、今年2月。男児らへのわいせつ行為を撮影するなどしていた男6人が、神奈川など7県警に逮捕・追送検されたのが発端だ。6人のなかには現役の小学校教師(45)、また引退した元小学校教師(66)もいた。7県警の合同捜査本部は、10万点を超える男児の児童ポルノを押収。被害者は未就学児から中学生まで168人に及ぶ。

小児性犯罪の被害者は男児のほうが多いのか

 日本で小児性愛というと即「ロリコン」、つまり女児への性的関心が連想されるようだ。「ロリコン」コンテンツが女児レイプの原因といった短絡的な議論も喧しい。

 だが、精神疾患としての小児性愛=Pedophilia は、「女児・男児・または両方」が対象と定義される。アメリカでの80年代の研究では、小児性犯罪の被害者数は男児・少年が女児・少女の1.6倍という報告もある。2011年にICPOが摘発した世界最大規模のオンライン小児性愛ネットワークも、男児・少年を対象としていた。ネットワーク参加者は世界7万人、摘発時点で670人の容疑者と230人の被害者が特定されている。

 一方、小児性犯罪の加害者は99%以上が男性。男児相手だと軽いいたずらのように考える向きもあるかもしれないが、背筋の寒くなるような猟奇犯罪も多い。11年にはレイプ目的で養子を育てていた2人の男がアメリカで逮捕され、各国を震撼させた。

 赤ん坊は犯人の1人がロシア人の代理母に8000ドル支払って産ませた子供。目的は、生後すぐ引き取り性の玩具として育てることだ。2人は遅くとも2歳前には性的虐待を始めていた。

 摘発のきっかけは、2人が撮影し続けた膨大な画像と動画の一部が上述のオンライン小児性愛ネットワークに流出したことだ。逮捕と同時に保護された男児は、すでに6歳に成長していた。2人は13年と14年、それぞれ30年と40年の懲役を宣告されている。法廷でそれぞれ「人生で最高の6年間だった」「息子が恋しい」などと発言し、改めて人々を戦慄させた。

 相次ぐ摘発により、日本でもようやく存在が知られ出した小児性犯罪ネットワーク。国内ではこうした陰惨な事件が氷山の下に埋まっていないことを願いたい。
(文=高月靖/ジャーナリスト)

高月靖

高月靖

ノンフィクションライター、イラストレーター。主著『キム・イル 大木金太郎伝説』『独島中毒』『韓国芸能界裏物語』『ワリカンにする日本人 オゴリが普通の韓国人』『徹底比較 日本vs.韓国』『南極1号伝説』『ロリコン』『韓国の「変」』など。

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