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新国立建設、国・JSCと大成建設のせいで過労死の23歳現場監督…無理な工期強要の疑い

文=長井雄一朗/ライター
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 工事の着手が16年12月になり、その時点で遅れが生じています。新国立競技場は国や政治に翻弄されたことがわかります。そして遅れを取り戻そうと地盤改良工事に大成JVが無理な工期を設定したこと、さらにはその工期を守ろうとしたため、下請の建設会社がこの現場監督に無理な過重労働を強いたことです。

 発注者が無理筋な工期・コストを設定し、それを大成JVが実行するためにさらに無理を下請の建設会社に強いて、その建設会社が立場の弱い現場監督に無理をさせる、そういう構造が浮かび上がります。下請の悪質性が高いのは、当初残業時間を80時間と申告したことです。実は、新国立競技場に限らずこれはよくある話です。立場の弱いほうに責任を負わせ、工事が間に合わない局面になれば、その弱いほうのせいにする構造的な問題があります。

――元請と下請の関係が健全でないということですか。

Aさん そういうことです。建設業は重層下請構造ですから、下請が元請に異を唱えることは困難です。ですから、元請は当然、下請に対して工期やコストで無理をいいます。その結果、このようなことになったのは大変残念です。昔、工事を無事に終わらせるために、「人柱」がありましたが、現在でも「人柱はいきている」のです。

建設業界の健全化のために

――建設業界は「ブラック業界」なのですか。

Aさん そうは思いたくありません。もし、建設業界が「ブラック業界」であるならば、私の人生そのものを否定することになります。もちろん、建設業界も「働き方改革」が必要で今のままでいいと思っていません。それでも構造物を建設した「やりがい」は他の業界と比較して高いと考えております。

――建設業界では、どのような「働き方改革」に取り組んでいますか。

Aさん 公共工事から始めていますが、「週休2日制モデル工事」を実施中です。そして生産性向上のため、情報化施工などを行っています。しかし、これは土木工事が多く、民間主体の建築工事では難しいですね。

――どうすれば、このような事案がなくなるとお考えですか。

Aさん 今の体制では必ずや第二第三の悲劇が繰り返されます。まず、発注者にお願いしたいことは、工期に余裕を持たせ、コストも十分に見てもらうこと、それにより、公共工事であれば国民にも負担を強いることになりますが、それはぜひともご理解いただきたい。そして民間工事マンションであれば価格が上がったとしても理解してほしいです。
 
 今、建設業界の従事者の人口は50代が多く、20代は圧倒的に少ないのです。今後50代以上の方が引退されるとなると、社会資本整備に支障を来します。現場監督や施工管理の方々の担い手確保・育成は待ったなしです。構造物は「安ければ良い」というのは今のことしか考えない発想です。将来にわたって社会インフラの整備、民間工事の建築を考えれば、国民のみなさまに必要なご負担をお願いしたいです。

――建設業に不利な話もされましたが、なぜ今回このインタビューを受けられたのでしょうか。

Aさん 国民の皆様に本当の実態を知ってほしいからです。現場監督にせよ、職人にせよ、綱渡りで過酷な労働を強いられていることの現実をみなさんにご理解いただくことで、少しでも建設業界がよくなることを信じています。そして若い方が喜んで入職され、担い手として成長できれば良いと願っています。

――ありがとうございました。

 今回、大成建設は筆者の取材に対し、次のような回答を寄せた。

「お亡くなりになられた故人のご冥福をお祈りするとともに、元請として専門工事業者に対し、今後も労働法令を含む法令順守の徹底について指導し、専門工事業者とともに過重労働の発生の防止に努めてまいります」

 また、作業員詰め所も夜8時に閉所することも明らかにした。建設業界は「働き方改革」を実行に移さなければ、建設業界に入職する若者がいなくなることを理解すべきだ。このような悲劇は二度と起こしてはならない。
(文=長井雄一朗/ライター)

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