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利権にたかる経団連と同友会 高速道路&東電の主要ポストめぐるゲスな争い

文=編集部
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 4月末、経済同友会(以下、同友会)の代表幹事が武田薬品工業の長谷川閑史会長から、三菱ケミカルホールディングスの小林喜光会長に交代した。

 長谷川氏は、東日本大震災直後の2011年4月27日、リコーの桜井正光会長(当時)の後を受けて代表幹事に就任し、復興や経済再生をテーマに掲げた。退任会見では、2期4年について「政府の経済財政諮問会議などと連携し、具体的な成果に結びついた。行動する同友会というものをある程度、実現できた」と振り返った。

 しかし、いささか手前味噌のきらいがある。

高速道路会社の人事で問われた政治力

 長谷川氏が率いる同友会は、民主党政権の指南役を自負した。民主党が自民党べったりの日本経済団体連合会(以下、経団連)を嫌ったからだ。長谷川氏が代表幹事としての力量を問われたのが、高速道路会社の社長人事だった。

 かつて、官製談合と天下りの代名詞といわれた日本道路公団は、小泉純一郎首相(当時)による改革を受けて、6社に分割民営化された。それでも、高速道路各社の社長は、旧道路公団や旧建設省OBが占めていた。

 09年9月に、脱官僚を大きな柱に掲げた民主党政権が誕生する。前原誠司国土交通大臣(当時)は10年6月、天下り排除の方針のもとに、高速道路各社の社長を民間出身者に切り替えた。

 同友会に人選を依頼し、同友会系の民間人を社長に抜擢したのだ。この頃、財界の主導権が経団連から同友会に移ったといわれた。

 2年後の12年6月。任期満了を迎えた高速道路会社の社長人事で、経団連が巻き返しに出た。経団連は国土交通省に接近し、国交省も先の前原人事で失った天下りポストを復活させたいと考え、両者の思惑は一致する。そして、同友会降ろしが実現した。

 これに激怒したのが、同友会の長谷川氏だ。首相官邸に乗り込み、野田佳彦首相(当時)に直談判したが、消費税増税で頭がいっぱいの野田首相は、高速道路会社の社長人事など眼中になく、長谷川氏の訴えを黙殺した。

 その結果、経団連の米倉弘昌会長(当時)のお膝元である住友化学から、廣瀨博副会長が東日本高速道路の社長に就くなど、経団連が圧勝。同友会枠として確保した高速道路会社社長の椅子を経団連に奪われたことから、長谷川氏の政治力に疑問符がついた。

安倍首相のゴルフ仲間は経団連の面々

 12年12月、民主党から自民党に政権が交代すると、長谷川氏が率いる同友会は素早く自民党に乗り換えた。安倍政権は13年1月23日に発足させた産業競争力会議の民間委員に長谷川氏を起用した。

 安倍政権が長谷川氏を遇したのは、経団連が米倉会長の“オウンゴール”によって失点したのが大きい。米倉会長は政権交代前に、安倍氏の経済政策・アベノミクスを「無鉄砲」と批判したために嫌われ、経済財政諮問会議など民間議員の選定で、米倉氏が率いる経団連は蚊帳の外に置かれた。

 14年6月3日、経団連会長が米倉氏から東レの榊原定征会長(当時)に交代し、経団連と官邸のパイプがやっとつながった。それが今や、安倍首相のゴルフ仲間は、経団連の御手洗冨士夫名誉会長、榊原会長など経団連のお歴々だ。

長谷川氏が提案した「残業代ゼロ」制度

 政府の労働者派遣法改正案が、5月12日の衆議院本会議で審議入りした。今国会で成立を目指す労働基準法改正案と共に、安倍首相が進める労働改革の柱となる。

 労働基準法改正案は、安倍首相が掲げる「岩盤規制」の改革のひとつだ。長谷川氏は、産業競争力会議の雇用・人材分科会主査として、14年4月22日に、いわゆる「残業代ゼロ制度」を提言した。

 会社が従業員を1日8時間を超えて働かせたり、深夜や休日に出勤させると、割増賃金を払う義務がある。長谷川氏が提案したのは、時間ではなく仕事の成果にお金を払う働き方だ。

 長谷川提案は、年収1000万円以上の専門知識などを持つ人に加え、労使が合意すれば年収の低い一般社員も対象となる。

 民主党は、これを「残業代ゼロ法案」と名付けて反対した。日本労働組合総連合会(連合)も、「長時間労働を助長しかねない」と猛反発している。労働者派遣法改正案は、6月19日午後の衆院本会議で自民党、公明党、次世代の党の賛成多数で可決された。

 改正案に反対している野党は「一生派遣の人が増える」と批判しており、「キャリアアップをしようとしても、年を取れば辞めさせられる。雇用の安定には役立たない」との声が強い。与党は今国会の会期を大幅に延長し、改正案を成立させる方針だ。改正案の施行は9月を予定している。

東電の社外取締役に就いた理由

 長谷川氏のお膝元である武田薬品は、15年3月期決算の最終損益が1430億円の赤字となった。糖尿病の治療薬「アクトス」をめぐり、アメリカで起きた集団訴訟により、和解金や訴訟の関連費用として3241億円の引当金を計上したためだ。同社は1949年の上場以来、初めての赤字となった。

 会長兼CEO(最高経営責任者)だった長谷川氏は、今年4月にCEOを外れて会長専任となった。そして、東京電力の社外取締役に、6月末の株主総会を経て正式に就任する。同ポストは、同友会が押さえている数少ない指定席だ。

 経団連は、東日本大震災で原子力発電所事故を起こした東電の経営陣の人選をめぐり、米倉会長が首相官邸と衝突した。経団連は、東電擁護の立場から、迷走を繰り返す菅直人首相(当時)を糾弾、官邸とのパイプが途絶した。

 漁夫の利を得たのが同友会で、東電の役員は同友会系経営者が占めた。數土 文夫会長(JFEホールディングス相談役)は元副代表幹事で、藤森義明社外取締役(LIXILグループ社長)は前副代表幹事だ。

 社外取締役だった小林氏が同友会の代表幹事に就いたため、後任に長谷川氏が座った。同友会の代表幹事と東電の社外取締役のポストが入れ替わったことになり、わかりやすい“たらい回し”人事である。

 數土会長の後任に、長谷川氏が浮上しているとの見方がある。東電のトップ人事は、政治力学で決まる。安倍政権とのパイプを太くした経団連が、東電の会長獲りに動くのは間違いない。榊原氏が率いる経団連と小林氏が率いる同友会が、東電会長をめぐってバトルを繰り広げることになりそうだ。

 武田薬品の巨額赤字転落は、長谷川氏の経営者失格を意味している。東電会長のポストなど望まないほうがいい。
(文=編集部)

BusinessJournal編集部

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