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土屋健「楽しい古生物・化石の世界」

夏休みに必見!「ギガ恐竜展」が大迫力!ティラノサウルスの3つの謎&戦いの痕跡を堪能

文=土屋健/オフィス ジオパレオント代表、サイエンスライター

 しかし、ワイレックスに関しては、実は「生きているうちの傷ではないか」と指摘されている。骨に、壊疽に似た感染症の兆候が見つかったのだ。その一方で、治癒の痕跡は確認されなかった。

夏休みに必見!「ギガ恐竜展」が大迫力!ティラノサウルスの3つの謎&戦いの痕跡を堪能の画像3ワイレックスの尾の“先端”部分。(撮影=オフィス ジオパレオント)

 感染症の兆候があるということは、化石化後の欠損ではないことを示唆している(化石は感染症にはならない)。そして、治癒していないということは、この傷を負ったのちに長く生きていたというわけでもない(傷が軽いものであれば、生き続ける間に治癒が進み、その痕が骨に残る)。

 そう考えられることから、ワイレックスはまさにその死に際して、この傷を負ったものとみられている。そして、ティラノサウルスであるワイレックスの尾を噛みちぎるほどの肉食動物といえば、その最有力“容疑者”は、やはりティラノサウルスとなる。つまり、これは“ティラノサウルス対ティラノサウルスの戦いの痕跡”ではないか、と指摘されているのだ。

 もっとも、この戦いがなんのために行われていたのかは不明である。ワイレックスが「獲物」として狙われたのなら38%も残存しなかったかもしれない。なにしろ、ティラノサウルスは「獲物を骨ごと噛み砕く」のだ。こうした推理を楽しむのも、古生物学の醍醐味のひとつである。ぜひ、自分なりの“回答”を探したり、家族や友人、恋人と議論したりしてほしい。

ティラノサウルスの体は羽毛?鱗?

 2つ目は、指に注目しよう。ティラノサウルスといえば、その巨体に似合わない小さな手が有名であり、特徴のひとつでもある。指は2本。一方で、原始的な近縁種は3本あったとされるため、進化の過程で指を1本失ったものと考えられている。

 ところが、である。ワイレックスの手をよく見ると、2本の指のほかに小さく細い指の骨があるように見えるのだ。「うわ、これは大発見! ティラノサウルスの復元が変わるのか?」と思われる方もいるかもしれない。……しかし、実はそうではない。

 これは、「中手骨」と呼ばれる、いわば「手のひら(甲)の骨」である。指の骨(指骨)は相変わらず2本のみ。それでも、「1本の指に1本の中手骨」は手の骨格の基本である。

 つまり、「指は2本だったけれど、手の中には3本目の指の“根っこ”があった」ということになる。祖先の名残とみられる、この特徴が確認できるのは、とても貴重なことだ。ちなみに、会場にはディロング(Dilong)やユウティラヌス(Yutyrannus)など、原始的な近縁種の標本も展示されているので、その指を確認したい。

土屋健/オフィス ジオパレオント代表、サイエンスライター

土屋健/オフィス ジオパレオント代表、サイエンスライター

修士(理学) 日本古生物学会会員 日本地質学会会員 日本文藝家協会会員
日本地質学会刊行一般向け広報誌『ジオルジュ』デスク
オフィス ジオパレオント

Twitter:@paleont_kt

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