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ヒアリ特需期待外れの殺虫剤業界に「プシューッ」と異変…アース製薬は業績悪化、フマキラーは最高益

文=編集部
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ヒアリ特需期待外れの殺虫剤業界に「プシューッ」と異変…アース製薬は業績悪化、フマキラーは最高益の画像1ヒアリ(「Wikipedia」より)

 強い毒性を持つ特定外来生物のヒアリが、中国広東省広州市から神戸港に運ばれたコンテナの中から国内で初めて見つかって以降、全国各地で確認され、大騒ぎになっている。

 環境省は2005年に外来生物法に基づく「特定外来生物」の第1号にヒアリを指定して以来、警戒を続けてきた。ヒアリは南米原産だが、1930年代に米国に侵入。21世紀に入り、太平洋を越え豪州や中国、台湾など各地に広がっている。

 ヒアリは人を刺し、家畜を襲う。また、電化製品や通信設備の中に入り込み故障の原因にもなる。経済的損失は米国で年間6200億円、豪州で1400億円と推計されている。

 ヒアリの国内への定着が危惧されるなか、殺虫剤の出荷は伸びたが、殺虫剤市場全体に占めるアリ用製品の売り上げ規模は5%以内だ。

 ヒアリ関連銘柄は、フマキラーとアース製薬が双璧だが、両社の決算を見る限りヒアリ効果は限定的で、むしろ厳密にいえば、ほぼなかったといってもいいほどだ。

 アース製薬は8月4日、17年1~6月決算を発表し、17年12月決算(通期)の連結純利益が前期比47%減の20億円になる見通しとしたことから株価は急落。7日には5660円(470円、7.7%安)と5カ月ぶりの安値に沈んだ。当初予想は13%増の38億円だったが、一転して減益予想となり、業績悪化を嫌気した売りが出た。

 投資家が問題にしたのは、収益性の高い殺虫剤の売り上げが計画を下回ることだ。1~6月期の殺虫剤売り上げは452億9400万円。前年同期比1%増(4億6500万円増)にとどまった。アナリストは「(通期決算の)下方修正はネガティブ」と指摘している。

 大塚製薬グループのアース製薬の株価は、6月下旬のヒアリ報道から殺虫剤の売り上げ増の期待が膨らみ、株価は大きく上昇した。しかし、この決算でヒアリの業績寄与は限定的との見方が定着した。

 一方、フマキラーが8月7日に発表した17年4~6月期の連結決算は、純利益が11億6700万円で、前年同期に比べて8.6%減った。殺虫剤のかき入れ時の夏に向けてテレビCMを増やすなどしたことから、広告宣伝費の増加が重荷になった格好だ。

 フマキラーの場合、殺虫剤に占めるアリ製品の割合は3%程度。「ほかの外来種にも効く総合型の殺虫剤を拡販していく」方針だ。18年3月期の通期業績は当初予想を据え置き、純利益は前期(17年3月期)比6.6%増の14億8000万円と、過去最高を見込んでいる。

 フマキラーの株価も、アース製薬が急落した7日に88円安の1120円で終わった。決算発表翌日(8月8日)の安値は1040円(80円安)、終値は1045円(74円安)だった

投資家はヒアリ来襲に熱い視線

 投資家はヒアリ来襲に熱視線を注いできた。

 国内の殺虫剤メーカーは、アース製薬、フマキラーと合わせて、蚊取り線香の「金鳥」を主力とする大日本除虫菊(非上場)が3強とされる。トップメーカーのアース製薬の年商は1817億円(17年12月期の予想)で、フマキラーの460億円(18年3月期の予想)の4倍だが、ことアリに関してはフマキラーが先行しており、株価の上昇率でもフマキラーが勝った。

 インパクトが大きかったのは、7月4日に大阪市の南港で女王アリと見られる個体を含む50匹を確認したと環境省が発表したことだ。女王アリが見つかったことで、すでに繁殖している可能性が高まり、東京株式市場ではヒアリ銘柄の株価が急騰した。

 7月10日、フマキラーの株価が一時1370円をつけ、これまでの高値(1987年の1280円)を30年ぶりに更新、上場来高値となった。7月だけで上昇率は30%を超えた。年初来の安値は4月13日の704円なので、そこからおよそ2倍に爆騰した計算だ。

 フマキラーは兵庫県内でヒアリが国内で初めて確認された際、環境省と神戸市にアリ用殺虫剤を無償で提供。駆除作業にいち早く協力した。11年に東京・大田区で確認された特定外来生物アルゼンチンアリでも、環境省や独立行政法人国立環境研究所と連携して駆除で協力してきた。こういった実績が評価され、ヒアリ関連銘柄の大本命に浮上してきた。

 ヒアリ対策で参考になるのが、同じ島国のニュージーランドの例だ。06年に巣が見つかると、半径2キロ圏の土壌などの移動を制限し、殺虫エサや捕獲わなを使った監視を3年間続けて定着を阻んだ。

 日本では官民挙げてのヒアリ対策が始まっている。水際で阻止できるかは、3年間が勝負どころとなる。

 アース製薬は7月10日に330円高の6400円と急伸し、翌11日には6520円の上場来高値をつけた。1月4日の安値(4725円)と比較すると4割近い値上がりを記録したが、その後、減益予想の決算から株価は急落した。8日も8円安の2250円と続落した。

 アース製薬と資本提携している大幸薬品は7月7日に2430円の高値(安値は2月13日の1746円)。上昇率は4割となった。8月7日の終値は2258円。

 シロアリ駆除のアサンテは7月7日に2157円の上場来高値をつけたが8月7日の終値は1961円。サニックスは7月5日に320円の年初来高値をつけ、8月7日の終値は280円。

 殺菌剤のエス・ディー・エス・バイオテックは7月5日が年初来高値で980円。その後、8月7日の終値は863円、8日は4円安の859円と推移している。

 虫が嫌がる網を製造するニックスは、7月5日に年初来高値の1645円を記録したが、8月7日は1372円で引けた。

 こうして見ると、ヒアリ相場もいったんは終わったのかもしれない。
(文=編集部)

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