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【森友問題】籠池氏は逮捕、背任罪の財務省主犯者は国税庁長官に栄転…国家の破滅

文=青木泰/環境ジャーナリスト
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 こうした状況のなかで2015年1月、大阪府私立学校審議会で法人の認可が下り、2月には国有財産近畿地方審議会で国有地の賃借を含めた払い下げの許可も下り、晴れて15年5月に賃借契約を結んだ。管轄行政が異なる複数の審議会にわたり、森友の経済事情を考慮した賃借を含む許可が下りたのである。

 当の当事者である籠池氏が証人喚問で語ったように、「神風が吹いたように」うまくいった背景には、縦割り行政の日本で、横糸で紡ぐような行政手腕と、「賃貸借」で小学校用地を貸し付けるという例外的処置を見て取ることができる。

 ところが、例外的な動きは賃貸借から売却へと進む。

 買うお金がないはずの森友学園に、近畿財務局が用地売却を持ちかけた直接のきっかけは、3m以深の地中から新たにごみが見つかったということであった。その際、ごみの撤去料として売買価格を9割値引くという「悪知恵」が働いていなければ、賃借から売却への転換は可能ではなかった。

 土地の売買や払い下げにおいてその土地に埋設ごみや土壌汚染があったときには、売り主にはその「瑕疵(かし)」を解消する責任が発生し、買い主に対して埋設ごみの撤去や汚染土壌の除染費用を支払わなければならなくなる。それを利用すれば、購入できない森友学園に格安で払い下げ、売却することができる。

 近畿財務局は国の国有財産売却を担う専任的な部署であり、賃貸から売却に切り替えるこの知恵は、近畿財務局ならば容易に考えることができた。その際、新たに見つかったごみの量をどの程度にするのか。9億5000万円という鑑定価格を、森友が購入できる約1億円に値引きするためには、1t当たり4万円の撤去費用が相場として、約2万tの埋設ごみがあったことにする必要があった。しかし森友が賃借時の1回目のごみ撤去で、約3mまでの深さから撤去したごみの量は、約1000tであった。その20倍の2万tが新たな埋設量として見つかったという、途方もない想定をする必要があった。

 これまで、16年3月11日に委託事業者である藤原工業株式会社が校舎の基礎杭のボーリング工事中に9.9mの深部から新たなごみを見つけた、という筋書きで説明されてきたが、国からすれば、その発見自体が織り込み済みでなければ、すぐ売却へと移行することができなかったはずである。

 実際には、この荒唐無稽な2万tものごみが3m以深に埋設されていると算定され、その撤去料8億円を値引きされ売却したのである。もちろんこの土地は、国交省大阪航空局が所有し、払い下げなどの一切の手続きは財務省近畿財務局が行っていた。9割もの値引きは財務省本省での確認が必要であり、国の関与なしに不可能な手続きである。 

 その財務省は、森友との交渉経過情報を廃棄し、国会でのやり取りでも虚偽の答弁を繰り返し、事実の隠ぺいに入った。

 この情報隠蔽による森友問題の手詰まり状況を打開したのは、当事者の籠池氏だった。保管していた交渉の経過についての録音テープや会議メモ、そしてやり取りメールなどが次々と民進党国会調査チームなどで発表され、多くのメディアでも取り上げられた。

 籠池氏によるこうした情報提供は、権力者の縁故者に便宜を図る事実経過を次々と明らかにしてきたのである。作家・菅野完氏の協力も見逃せない。一方事実隠しを行った筆頭が佐川氏である。籠池氏逮捕、佐川氏の栄転はすべからく権力者におもねり、ヒラメ族になれということを示している。

(3)3m以深から出た2万tのごみの「仮装」問題

 3m以深に2万tのごみがあったのか、なかったのか。もし、「なかった」ごみを「あった」と偽り値引きしたのであれば、国有財産に損害を与える大問題である。そして今年6月末、2万tのごみは小学校建設工事を請け負った藤原工業によるマニフェスト(産業廃棄物管理票交付等状況報告書)によって、なかったことが明らかになった。

【参照】
7月12日付当サイト記事『【森友問題】土地払い下げ根拠のごみ、存在しないこと示す証拠公開…財務省の背任が決定的』 

 マニフェストに報告されていたのは、「新築系混合廃棄物」が194.2t、100分の1しか報告されていなかったのである。2万tはまったくの仮装でしかなかった。この3m以深の2万tのごみの有無については、財務省による情報隠しの下でも、また籠池氏の交渉経過を示す膨大な情報とは、まったく別個に突き止めることができた。

 筆者は国会議員、専門家、豊中市議、弁護士、市民団体との連携のもとに継続的に調査したが、3m以深にごみがあり、校舎の建設用の9.9mの杭打ちや校舎建設に支障をきたすとして想定した新たな埋設ごみの総量は、国の算定では1万9500t、約2万tであった。

 すでに校舎の建設は17年2月には終了し、建設に当たって掘り出し、校庭に積み上げられていた土壌は一部を除きほぼ全量、敷地外に運び出されている。事業を実施する敷地外にごみを排出すれば、その種類と量を逐一、マニフェストで報告しなければならない。その中には、埋設ごみではなく、記載されていたのは「新築系混合廃棄物」で、しかも2万tの100分の1の量でしかなかった。これらは、豊中市への情報公開請求などで分かったのである。

 国が国会質問や質問主意書、そしてメディアによる取材に対して、情報を廃棄し重要な情報を黒塗りにして情報を隠す。これは、公用文書等毀棄罪に当たり、違法な対応である。このような役人たちの情報隠しに対しては、なされた説明の虚偽を暴く、新資料や論理矛盾を指摘していく取り組みが必要となる。いわゆる調査報道である。

 情報隠しの違法対応を繰り返すお役人に対して、多くのメディアは情報を隠していると批判はしつつ、いつの間にか「情報は隠されているから事実はわからない」と事実解明をあきらめている様子が感じられる。官僚たちが情報隠しに入ったときには、国会での追及に加え、メディアが独自に調査することが必要になる。

 今回の場合、一度校舎予定地全域の3m以浅のごみの撤去を行っている場所に、改めて3m以深にその20倍の2万トンものごみが埋まっているというのが、国の説明であった。事実の調査資料を集め、科学的に分析し、官僚たちの嘘を突き詰めていくという手法について、多くのメディアに課題を残したのではないかと筆者は考える。

 官僚などの関係者への聞き込みだけでなく、自然科学的な手法による事実確認の取り組みが必要とされることが認識されたのではないか。記者自身の博識と根性に頼るだけでなく、事実解明に対して専門的な知見を持つ市民グループとの連携をとることが必要だと考える。

 いずれにせよ、マニフェストで2万トンのごみは仮想だということがわかった。どのメディアが最初にその点を報道したということではなく、森友問題の核心たるこの大ニュースを大手メディアが報道し、担当した官僚や大臣への取材が必要ではないか。

 マニフェストという公文書で2万トンがないことが明らかになったにもかかわらず、財務省は「国家の資料ではなく、地方自治体の資料だ」などととぼけている。もともとマニフェストは地方自治体に提出されるものであり、そのような国の仕組みを知らないような返答だけをみても、検察による担当者への捜査が必要不可欠であるといえよう。

籠池逮捕の狙いは?

 籠池氏の逮捕理由は、実際に使った工事費が15億5520万円であるのに、23億8464万円だと届け出、補助金を5600万円多く詐取したというものである。しかし、籠池氏は、前項で見た森友問題で解決に当たらなければならない以下の3点のうち、(1)(2)の問題については、積極的に情報提供している当事者である。

(1)安倍首相や夫人が、格安払い下げにどう関与していたのか
(2)忖度した官僚たちが、格安払い下げ実現にどのように協力し、その過程で違法な対応はなかったのか
(3)ごみを2万tと虚偽算定し国家財政に損失を与えた財務省や国交省の役人たちの責任をどうするのか

 しかも特捜検察の役割は、国家レベルの犯罪、権力者や国の官僚機構が大きく関与し放置することが許されぬ犯罪行為を捜査する、いわば巨悪の犯罪を許さないための特別な組織である。

 郷原信郎元特捜検事も、籠池氏は補助金の過大受け取り分はすでに返還し、所在も明らかである。なぜ今、逮捕・勾留しなければならないのかと疑問を投げかける。籠池氏は国会での証人喚問に出席し、大阪府議会でも参考人招致に協力している。安倍首相の関与について重大な発言を行い、国家の官僚たちが国会でも隠してきた事実経過に対して、積極的に情報を提供してきた貴重な証人である。そうした人物を、なぜ逮捕するのか。

 警察・検察は、犯罪者の逮捕のために国民に情報提供協力をお願いしているが、今回の籠池氏逮捕は、国民に「政権に不都合なことはしゃべるな」と言っているようなものではないか。

 検察は、国家犯罪に蓋をするような逮捕を行っているのではないか。

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まとめ

「李下に冠を正さず」とは、疑いを持たれるようなことをしてはならないという教えである。閉会中の国会で安倍首相は「心得ている」と言いながら、実態はまったく異なっている。

 万が一、便宜供与が法令に基づいた処理であり、官僚たちの通常業務の「裁量権」の下に行われ、手続きがよりスピーディーに行われ依頼者側の難問が解決したということならば、事実経過をオープンにし、誰に対しても対応できる「前例」とすれば問題にならなかったはずである。

 ところが、佐川氏をはじめとする官僚たちは、虚偽の事実に基づき9割引きの売却をおこない、事実を覆い隠し、国会答弁でも虚偽の事実を重ね、背任罪と公用文書等毀棄罪の疑いが濃厚である。

 森友問題でいえば、佐川氏は権力者の“手先”として働いた官僚であり、いまや日本の国家・行政機関の中でも最重要な「徴税」機関=国税庁のトップにつき、就任の記者会見すらできない事態となっている。つまり、国家の根幹を揺るがす事態となっている。

 一方、籠池氏逮捕は当事者として問題の所在を訴えようとした証人の口を封じるための逮捕であり、前川喜平氏への人格攻撃にも類する恐ろしい事態になっている。森友問題における佐川氏の栄転と籠池氏逮捕は、権力者に同調するか、批判するかで栄転と弾圧を区別する独裁国家のような国民への攻撃といえる。

 米国では次々と官僚を罷免し、批判や異論を差し挟むことができない独裁者のようなトランプ大統領の振る舞いに批判が高まっている。トランプ氏の白人至上主義への曖昧な見解に、大統領の諮問会議委員の辞任が相次ぎ、諮問会議自体が解散に追い込まれた。日本でも森友問題をめぐり、各種審議会や諮問会議の参加メンバーに同様の動きが出るのだろうか。

 森友・加計問題で安倍首相に引導を渡すのは、国会、メディア、そして国民の役割である。
(文=青木泰/環境ジャーナリスト)

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