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日本人の知らない「気仙沼」の現在…街壊滅から6年、奇跡の復活の物語

文=高井尚之/経済ジャーナリスト・経営コンサルタント
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地元特産を使った食品を開発

気仙沼の玄関口・JR気仙沼駅の駅前には、当地を代表する3つの魚、サメ、メカジキ、カツオのオブジェがある。新鮮な魚は気仙沼の特徴だが、従来は料理店や観光施設などが個別に訴求していた。それを地域一体の取り組みにあらためたのだ。菅原氏がこう説明する。

「観光事業の重点テーマを3つに再構成しました。ひとつ目は『商品をつくる』で、観光商品の開発です。2つ目は『人をつくる』で、市民の観光意識を高めることです。3つ目は『仕組みをつくる』で、これがDMOを推進する組織づくりや活動となります」

 地元食材を使った具体的な観光商品が「気仙沼 メカ×カレー」だ。全国の生鮮水揚げ量の7割以上を占める「メカジキ」をカレーの具材に使ったもので、市内のカフェや飲食店ではカレーライスだけでなく、カレー味の唐揚げやカレー風味のソースカツ丼といったメニューもある。観光誘致の事務局「一般社団法人・気仙沼地域戦略」の理事でもある小野寺靖忠氏が経営する「アンカーコーヒー」のメカ×カレーは人気メニューだ。

「メカジキは、もうひとつの気仙沼名物・サメ(フカヒレ)と同じ漁船で捕獲でき、一年を通じてとれます。地元では肉代わりの食材としても使われるので、夏以外の時期は『メカしゃぶ』『メカすき』といった鍋物メニューも開発しました」(菅原氏)

 ここまで観光に力を入れる理由は、地域経済の8割を占めた「水産業」が震災と津波で95%の製造・貯蔵設備が被災する壊滅的な打撃を受けたからだ。6年がたち回復してきたが、震災以前には戻り切っていない。そこでもうひとつの地域資源「観光業」の強化を図る。

 実は、気仙沼にはモデル企業がある。前述の阿部長商店だ。水産事業部と観光事業部が事業の柱で、観光部門では気仙沼市と南三陸町に3つのホテルを運営する。地震と津波で大きな被害を受けたが立ち直り、前期の売上高は約142億円と震災前の売上高に並んだ。

 復活要因のひとつに、気仙沼の特産物を一般消費者向けに新開発した食品もある。たとえば震災直後に開発した「気仙沼ふかひれ濃縮スープ」(ホテル観洋グループ総料理長監修)は、現在まで累計500万パックを販売した。2014年には、さんま、いか、ぶりを用いた食品「ajillo×アヒージョ」シリーズも開発。「水産」と「観光」が連携した成功体験があるのだ。

日本人の知らない「気仙沼」の現在…街壊滅から6年、奇跡の復活の物語の画像3阿部長商店が開発した「気仙沼」の食品シリーズ

 三陸の水産物を県外企業と連携して輸出も行う、社長の阿部泰浩氏はこう話す。

「気仙沼の『観光経営』には、当社の取り組みも“縮図”となるように思います。地元の観光意識も変わり、『気仙沼には何々の特徴があります』と具体的になりました」

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