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鈴木祐司「メディアの今、そして次世代」

日テレ、緻密編成が完全成功で45カ月連続三冠王…日曜夜は5時間ずっと視聴率2桁

文=鈴木祐司/次世代メディア研究所代表

春改編の結果

 さて、その唯一の改編ポイントだが、結果は思惑通りとなった。土曜夜10時台に『嵐にしやがれ』が置かれていた今年3月までの1年間、同番組の平均視聴率は10%弱だった。去年4~6月期と今期同時期で比較すると、10時台で10.5%だった同番組は、9時台に移動し12.5%と2%上昇した。特に男女とも子供から30代にかけて、視聴率がかなり上がっているので、営業上は大きな進歩といえよう。

 そして10時台に移動した『土曜ドラマ』だが、4~6月期の『ボク、運命の人です。』は平均視聴率9.6%。10時台だった『嵐にしやがれ』と比べさほど遜色がない。また前年同期の『お迎えデス。』は7.9%だったので、この分は大きな進歩だ。また7月からの『ウチの夫は仕事ができない』も、7話までの平均は9.1%とまずまずだ。前年同期の『時をかける少女』は6.7%だったので、やはり大幅改善となっている。

 ちなみに『土曜ドラマ』は9時から10時に下がったことで、「ティーンとその親世代の随伴視聴狙い」から、「F1~2(20~49歳女性)狙い」へとターゲットが変更されている。これにより、ティーンを意識したがためのエキセントリックな部分がなくなり、今期の『土曜ドラマ』は安定感が格段に増している。視聴率の改善にもつながっているように見える。

 昨年10~12月期『THE LAST COP』は8.3%、今年1~3月期『スーパーサラリーマン佐江内氏』は9.6%。ドラマはシリーズごとの高低が激しいので判断は難しいが、ドラマを10時台に下げたのは、今のところ正解だったように見える。少なくとも『嵐にしやがれ』が9時に繰り上がり視聴率が上昇した分、改編は成功だったといえよう。

 編成全体を見渡しても、土曜夜のテコ入れは全体への波及効果をもたらしたようだ。17年度第1四半期を前年同期と比較すると、G帯全体は11.5%から12.1%と0.6ポイント上昇した。P帯も11.5%から11.7%と0.2ポイント上がっている。明らかに土曜の2時間が上昇した分以上に全体の数字は改善している。土曜夜の“視聴フロー改善”もあるだろう。

『土曜ドラマ』が「F1~2狙い」で“恋愛ドラマ色”を強めたことで、水曜の「女性向け」と日曜の「大人の男性向け」と3枠のドラマのコンセプトが明確になったこともある。ドラマ全体に勢いが出ているように見える。

 そして何より、「タイムテーブルの要衝である夜9時台の強化」が図られたことで、視聴者の選局習慣が進んだようにもみえる。「日テレ=バラエティ=外れのない“面白さ”」という方程式が、視聴者の中でできているようだ。

 以上が日テレの春編成の結果だ。かねてより、“弱点の補強”により“タイムテーブル全体の強化”を図る方針がとられてきた。今春の改編は、それが一歩進んだようにみえる。8月26~27日に放送された『24時間テレビ』の好調さも、毀誉褒貶はあるものの、同局への信頼の高さを示す結果だったのではないか。

 三冠王を爆進する日テレ。その強さはますます大きくなり、死角が見当たらなくなってきた。
(文=鈴木祐司/次世代メディア研究所代表)

鈴木祐司/メディアアナリスト、次世代メディア研究所代表

鈴木祐司/メディアアナリスト、次世代メディア研究所代表

東京大学文学部卒業後にNHK入局。ドキュメンタリー番組などの制作の後、放送文化研究所、解説委員室、編成、Nスペ事務局を経て2014年より現職。メディアの送り手・コンテンツ・受け手がどう変化していくのかを取材・分析。特に既存メディアと新興メディアがどう連携していくのかに関心を持つ。代表作にテレビ60周年特集「1000人が考えるテレビ ミライ」、放送記念日特集「テレビ 60年目の問いかけ」など。オンラインフォーラムやヤフー個人でも発信中。
次世代メディア研究所のHP

Twitter:@ysgenko

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