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鈴木祐司「メディアの今、そして次世代」

日テレ、バラエティ視聴率トップ10の8割占有、フジはたった1本…歴史的独走の秘密

文=鈴木祐司/次世代メディア研究所代表

視聴者の年齢層も好バランス

 現在、日曜夜8時台で競合関係にあるのは、平均視聴率13%前後のNHK大河ドラマ『おんな城主 直虎』だけ。ところが、その大河ドラマの視聴者は、大半が60歳以上と偏っている。一方、『イッテQ』は男女とも年齢層の構成に極端な偏りがない。

 例えば、前クールのフジテレビの“月9”『貴族探偵』は女性視聴者が多く、しかもF2層(女35~49歳)が突出していた。どちらかといえば今の月9は今クールの『コード・ブルー~ドクターヘリ緊急救命~THE THIRD SEASON』以外は“一部の視聴者がディープに見る番組”となっており、『イッテQ』が家族全員で視聴されるなど、幅広い層に支持を得ているのと大きく異なっている。

『イッテQ』の放送が始まった07年は、放送のデジタル化が始まり、テレビがブラウン管から液晶など薄型・大型テレビに替わっていった時期だった。もともとは一家に1台の家電としてテレビは普及したが、1980~90年代は一家に複数台、一人1台の個電になっていた。F1など若年層に特化したフジが好調だった所以である。

 ところが日テレにとっては、デジタル化でリビングの大型テレビで家族が揃ってテレビを見るようになり、『イッテQ』のような随伴視聴型番組が波に乗り始めた。さらに2011年の東日本大震災を受け、家族の絆が見直されるようになり、日テレの狙いといよいよシンクロし始めた。

 番組のテイストも大きい。若年層に特化したフジの黄金期、『THE MANZAI』から始まり、『オレたちひょうきん族』『笑っていいとも!』などで一世を風靡した同局の番組には、“毒”が絶妙に散りばめられていた。ビートたけし、明石家さんま、タモリなどは、こうした番組の華だった。

 ところがここ何年か、不快感・嫌味のない番組が好まれるようになっている。例えば1980~90年代に多用された“苦痛・忍耐・屈辱”を笑いの対象にするような番組は、今や数字を獲れない。

 一見似たような場面も、『イッテQ』では芸人によるギリギリのがんばりと、途中に散りばめられた笑い、その結果伴う感動に包まれている。時代の風を受け止めうまくつくり変えた結果、家族で安心して見られる、幅広い層に支持される番組になったのである。

鈴木祐司/メディアアナリスト、次世代メディア研究所代表

鈴木祐司/メディアアナリスト、次世代メディア研究所代表

東京大学文学部卒業後にNHK入局。ドキュメンタリー番組などの制作の後、放送文化研究所、解説委員室、編成、Nスペ事務局を経て2014年より現職。メディアの送り手・コンテンツ・受け手がどう変化していくのかを取材・分析。特に既存メディアと新興メディアがどう連携していくのかに関心を持つ。代表作にテレビ60周年特集「1000人が考えるテレビ ミライ」、放送記念日特集「テレビ 60年目の問いかけ」など。オンラインフォーラムやヤフー個人でも発信中。
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Twitter:@ysgenko

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