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鈴木祐司「メディアの今、そして次世代」

日テレ、バラエティ視聴率トップ10の8割占有、フジはたった1本…歴史的独走の秘密

文=鈴木祐司/次世代メディア研究所代表

なぜ日テレのバラエティは強いのか?

イッテQ』に限らず、同局の夜帯の大半を埋めるバラエティがいかに強いかをデータで確認しておこう。ビデオリサーチ社は、ジャンル別に番組平均視聴率ベスト10を毎週出している。今年4月から8月まで、ランクインした合計228本のバラエティ番組を局別に数えると以下の通りとなる。

1位:日テレ(180本)
2位:TBS(28本)
3位:NHK(16本)
4位:テレ朝(3本)
5位:フジ(1本)

 実に8割近くを日テレ1局が占めている。実は16年1年間を振り返っても、ランクインした全527本のなかでは、日テレが7割強を占めた。しかも昨年度と今年度8月までを比べると、日テレの占有率は高まっている。

 日テレの改編は1つの番組ではなく、縦の流れを改善すること。さらに1週間で見ると、弱点を減らし、編成表の面全体を良くしていく方針を採ってきた。その面の大半を構成するバラエティが強いため、独走状態が保たれているのである。

日テレのバラエティの歴史

 日本のバラエティ番組は、1953年放送の『ほろにがショー 何でもやりまショー』が最初だった。もともと小屋や劇場での歌謡・落語・漫才などを中継するだけだったが、歌・トーク・コントを織り交ぜて番組化した。

 大きな転機は80年代。「楽しくなければテレビじゃない」のキャッチフレーズで、フジがバラエティ番組を大きく進化させた。数字の獲れる人気タレントを囲い込み、高視聴率を連打した。『オレたちひょうきん族』『笑っていいとも!』『ねるとん紅鯨団』などが代表だ。

 対照的に日テレは低迷した。とんねるず、ダウンタウン、ウッチャンナンチャンなど、数字を計算できる新世代のスターをキャスティングできずにいた点が大きい。
 
 そこで“開発”されたのが、『進め!電波少年』だ。松本明子、松村邦洋、猿岩石など、無名のタレントを使い、アポなし取材・海外放浪など、企画力と熱量で人気を博すようになっていった。バラエティには、情報・トーク・コント・クイズなどの種類があった。日テレが90年代に新たに開発したのは、ドキュメントバラエティと呼ばれる分野だ。番組が用意した過激で過酷な企画に、出演者が体を張って挑戦するタイプの番組だ。

 源流には80年代の『天才・たけしの元気が出るテレビ!!』がある。『電波少年』で花開き、『ウッチャンナンチャンのウリナリ!!』『ザ!鉄腕!DASH!!』『イッテQ』に連なる。さらにここで培われた熱量やリアリティは、『しゃべくり007』『人生が変わる1分間の深イイ話』『嵐にしやがれ』などにも、DNAとして受け継がれている。

 今期でいえば、この流れが大きく花開いたのが『イッテQ』の8週連続20%超えだ。今年1~8月に計28回放送があったが、うち15回が20%を超えている。直近の2回は22%を超えている。近年のバラエティ番組では、例を見ない快進撃だ。

「バラエティ番組は暇つぶしで見る」という声をよく聞く。ところが『イッテQ』は、満足度や次回見たい率が人気ドラマ並みに高い。明らかに暇つぶしの域を超え、目的視聴となっている。熱量とリアリティを極めたドキュメントバラエティならではの快挙といえよう。

 この姿勢とノウハウを他局が学び、それを超える新たなバラエティを開発しない限り、日テレの独走は続く可能性が高い。各局の奮起を待ちたい。
(文=鈴木祐司/次世代メディア研究所代表)

鈴木祐司/メディアアナリスト、次世代メディア研究所代表

鈴木祐司/メディアアナリスト、次世代メディア研究所代表

東京大学文学部卒業後にNHK入局。ドキュメンタリー番組などの制作の後、放送文化研究所、解説委員室、編成、Nスペ事務局を経て2014年より現職。メディアの送り手・コンテンツ・受け手がどう変化していくのかを取材・分析。特に既存メディアと新興メディアがどう連携していくのかに関心を持つ。代表作にテレビ60周年特集「1000人が考えるテレビ ミライ」、放送記念日特集「テレビ 60年目の問いかけ」など。オンラインフォーラムやヤフー個人でも発信中。
次世代メディア研究所のHP

Twitter:@ysgenko

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