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漢方薬にまつわる誤解が蔓延!「効き目が穏やか」「副作用がない」…危険を煽る記事も大嘘

文=森真希
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漢方薬の副作用の知識すらない医師もいる

 今回は「漢方薬には副作用がない」という安全神話が生まれた背景と、漢方薬の主な副作用について紹介していきたい

 私たちは一般的に「自然の恵みから生まれた」「長い歴史を持つ」治療法を、安全だと信じやすい。ましてや、その治療法を西洋医学の医師も使っていたら、「西洋医学的な裏打ちもあるのだろう」と思い込んでしまう。

 よく考えてみると、自然は人間にとって大きな脅威だ。想定できない大きな被害をもたらすのは自然災害だ。また、野菜などを栽培している人は経験があると思うが、同じ畑からとれたレタスでも味が大きく異なることがある。

 つまり「自然の恵み」はいつも一定ではない。長い歴史の中で、気候は変動するし、地形は変化する。大気は汚染され、農薬が散布されることもある。環境だけでなく、人間の体も栄養状態などで変化するわけだから、治療法も古い歴史にあぐらをかいてはいけない。

 さらなる問題は、漢方薬を理解せずに処方する医師だ。いわゆる「カリスマ医師」の本に、次のような記述があり唖然とした。

「胃の調子が悪いから、ある漢方薬を飲んだ。これがよく効いたから、胃痛予防として継続的に飲み続けた。すると体が冷えて、体調がとても悪くなってきたので驚いた。それからは、漢方薬を一切使わないようにしている」

 驚いたのは、本を読んだ私のほうだ。その医師が飲んでいた漢方薬は、抗炎症作用があり、基本的に長期使用してはいけないものだったからだ。つまり、医師といえど、漢方薬の副作用の知識すらない人もいるということだ。

 自然は人間に「恵み」とともに「脅威」を与える存在で、また長い歴史のなかで環境も人間も変化する。医師も免許を持っているからといって、知識や経験は同じではなく人それぞれだ。こうしたことを踏まえたうえで、漢方薬を使いたい。

極端な事例を引きあいに出したがるメディア

 漢方薬の主な副作用は、以下のとおりだ。

○肝機能障害:肝臓が正常に機能しなくなり、食欲不振や体重減少、全身の倦怠感などが現れる。

○間質性肺炎:肺でガス交換を行う「肺胞」という組織と毛細血管は、接近して絡み合っている。肺胞の壁(肺胞壁)や肺胞を取り囲んで支持している組織が「間質」。間質に炎症が起こった状態が「間質性肺炎」で、突然の発熱や乾いたせき、呼吸困難などが起こる。

 間質性肺炎は、これまでに抗がん剤、市販の感冒薬などさまざまな薬剤で確認されていて、死亡例も報告されている。

○偽アルドステロン症:「アルデステロン」というホルモンが過剰に分泌されていないにもかかわらず、あたかも過剰に分泌されているかのように高血圧、むくみ、脱力感といった症状を示す。

○発疹:かゆみのある湿疹や赤みなどが皮膚に現れる。

 漢方薬を飲み始めて上記のような症状が現れた場合は、使用をすぐに中止して、飲んでいた薬を持参して受診することを強く勧める。また、手軽に買えるからといって、素人判断で複数の漢方薬を同時に飲んだり、合成医薬品やサプリメント、健康食品と一緒に飲んだりするのはやめたほうがいい。

 漢方薬に副作用があるのは事実だ。ただ、極端な事例を引きあいに出して、あたかも「漢方薬に殺される」かのように糾弾しているメディアのほうが、私には嘘つきに見える。
(文=森真希)

森真希(もり・まき)
医療・教育ジャーナリスト。大学卒業後、出版社に21年間勤務し、月刊誌編集者として医療・健康・教育の分野で多岐にわたって取材を行う。2015年に独立し、同テーマで執筆活動と情報発信を続けている。

※ 初出/健康・医療情報でQOLを高める「ヘルスプレス」

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