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熊谷修「間違いだらけの健康づくり」

肉=脂肪摂取が寿命を延ばす…老化を遅らせる食べ物とは? 40代以前の生活が重要

文=熊谷修/東京都健康長寿医療センター研究所協力研究員、学術博士

老化という変化

 ここで今一度、老化という変化をおさらいしよう。老化とは骨格と筋肉が縮減されからだが歪曲変形する変化である。われわれのからだは、30歳から70歳までの40年間に10年ごとに3~8%ずつ除脂肪組織(リーンマス、Lean Mass, LM)が減少する自然経過を余儀なくされる。この場合のLMとは、主に骨格と筋肉を指す。かなり若い頃から老化による体組織のファンダメンタル変動が起きていることがわかる。最近、老化に関しては若い頃から学んだほうがよいといわれる所以である。

 骨格と筋肉の構成栄養素の半分以上は、たんぱく質である。意外かもしれないが、骨格はカルシウムよりたんぱく質のほうが多い。老化はからだのたんぱく質組織で再生が崩壊を凌駕する変化なのである。若ければ老化による崩壊を再生リノベーションがしっかり補い、組織は新しく更新される。若年期のたんぱく質組織のバランスは、プラスサムあるいはゼロサムである。

 一方、シニアはマイナスサムだ。「シニア世代とは何歳が分岐点?」という質問をよく受ける。個人差が大きく一概に言い表しがたいが、45歳から55歳頃だろう。この年齢付近から普段の所作、立ち居振る舞いが20歳代の頃とは明らかに違う。老化によりからだの機敏性、敏捷性が失われている。からだのたんぱく質組織が脆弱になり始めている証左だ。

 そんなことはないと嘯いている方もいるだろう。老化が軽微でまだ許容範囲のため、ただやり過ごせているだけのことである。からだのたんぱく質組織の脆弱性の本格的な始まりを客観的に捉えるのであれば、50歳は老化の世代といえる。老化そのものを真摯にみつめる態度と合理的な対策法は、若い頃に会得しておくべきである。

 さて、からだの栄養状態を良好にして老化を遅らせる食事手段のカギは、日本人の平均寿命(0歳余命)の延びとその背景にあった食生活の変化にある。平均寿命は国民の老化速度の総平均と捉えることができる。

 日本の第1回生命表(1891~1898年集計)によれば、男性の平均寿命は42.8歳、女性は44.3歳とある。その後、男女ともに50歳をこえたのが1947年(男性50.06、女性53.96歳)である。そして、2016年簡易生命表によれば、男性80.98歳、女性87.14歳となる。この水準は世界1位である。最近、参考値であるが香港を最長寿とするデータが発表されたが、人口700万の香港を国際比較の対象に入れるか議論の余地がある。

熊谷修/博士(学術)、一般社団法人全国食支援活動協力会理事

熊谷修/博士(学術)、一般社団法人全国食支援活動協力会理事

1956年宮崎県生まれ。人間総合科学大学教授。学術博士。1979年東京農業大学卒業。地域住民の生活習慣病予防対策の研究・実践活動を経て、高齢社会の健康施策の開発のため東京都老人総合研究所(現東京都健康長寿医療センター研究所)へ。わが国最初の「老化を遅らせる食生活指針」を発表し、シニアの栄養改善の科学的意義を解明。介護予防のための栄養改善プログラムの第一人者である。東京都健康長寿医療センター研究所協力研究員、介護予防市町村モデル事業支援委員会委員を歴任

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