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ガソリン車が世界的禁止、中国が世界自動車業界リーダーへ…日本勢、EV出遅れ危機的

文=河村靖史/ジャーナリスト
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 中国政府がEVの普及に本腰を入れるのは、都市部で深刻化する大気汚染の問題への対応に加え、自動車産業で中国企業が覇権を握るチャンスと見るためだ。中国は世界最大の自動車市場だが、主要ブランドは日米欧自動車メーカーとの合弁で、グローバル市場で中国系自動車メーカーの知名度は低い。中国政府としては世界に通用する中国系自動車メーカーを育成したいとの野望を持つが、現実的には難しい。

 ただ、EVなら可能性がある。EVは、2万~3万点で構成するガソリン車などの内燃機関の車と比べて部品点数が6割程度と少なく、コモディティー(汎用)化しやすい。コモディティ製品の得意な中国系企業が、EVでなら存在感を打ち出すことができる可能性がある。実際、テスラや中国のBYD(比亜迪)など、新興自動車メーカーはEV専業ながら短期間で急成長を遂げてきた。さらに、EVのキーデバイスであるリチウムイオン電池はスマートフォン向けなどで中国系企業が高いシェアを持つ。EVの世界的な普及は、中国系企業が自動車業界で存在感を高めるチャンスと映る。

新興EVメーカーの勃興

 中国政府のこうした意向は、自動車メーカーの戦略にも反映されている。7年前に中国の浙江吉利控股集団の傘下に入ったボルボは19年以降、販売する全モデルを電動車にすると突然発表、業界を驚かせ、世界で進むEVシフトの背中を押した。

 EVの普及に向けてはフランスと英国が40年にガソリン車、ディーゼル車の販売を禁止する方針を公表したが、ここにも欧州自動車業界の勢力図をめぐる政府の思惑が透けて見える。フランスの自動車メーカーのルノーとグループPSAは、「ジャーマン3」と呼ばれるVWグループ、ダイムラー、BMWの攻略が長年の経営課題だ。

 ルノーは背後に控える日産、三菱自動車とともに、EVでは業界をリード、EV需要が本格化するとジャーマン3のシェアを侵食できる可能性がある。しかもフランスは原発大国で、EVを増やすことは環境保全効果が高い。EVの普及は、欧州自動車業界でフランスが存在感を高めることにつながる。

 英国は、自動車生産工場はあっても自動車メーカーが存在しない。このため、自動車メーカーに配慮するより環境対策を重視する。

 自動車の電動化をめぐっては、政府の規制も関係することから強制力があり、自動車業界は激変の波にさらされる。EV専業のテスラは時価総額でゼネラルモーターズ(GM)を抜いて、米国トップの自動車メーカーとなった。トヨタとマツダが資本提携した理由のひとつが、両社ともに出遅れているEVを共同開発するためで、EVに端を発する業界再編が本格化すると指摘する声もある。

 今後、電池メーカーからEVメーカーとなった中国のBYDなど、新興のEVメーカーが相次ぎ、将来的に日米欧の自動車メーカーの地位に取って代わる可能性もある。
(文=河村靖史/ジャーナリスト)

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