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宅配ドライバーたちをパンクさせる、客の際限なき「おもてなし」要求…元ドライバーが告白

文=二階堂運人/物流ライター
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 利用者のなかには、封もしないで荷物を出そうとする人、お皿やグラスをまったく梱包せず箱に放り込み荷物を出そうとする人がいる。そのような人たちは、悪びれる様子もなく、済まなそうな顔もせず、当たり前な顔をしてドライバーに荷物を渡す。もちろん、運賃には梱包料など含まれていない。つまり、「おもてなし」を強要しているのだ。ドライバーは、仕方なく自ら梱包し、発送する。このようなことがドライバーの配達時間を圧迫し、疲労の増幅と労働時間超過につながる。

 荷物もただ日付通り、時間通りに届けても満足してもらえない。チャイムの鳴らし方から、声の掛け方、荷物の渡し方まで注文が入る。随分前にクロネコヤマトのテレビCMに「一歩前へ」とあったように、常に一歩前へ進んだサービスが求められている。

 今や「おもてなし」はあって当たり前となった。そして、「おもてなし」=クレーム回避のための対応となりつつある。お客に向けての心を込めたサービスから、お客の顔色を窺う形式がかったものへと変わってきている。「おもてなし」は、お客の「わがまま」に拍車をかけている。

 東日本大震災の翌日、信じられないクレームが入った。「荷物が届かない。その荷物を待っているので、今すぐ届けてほしい」という内容だ。耳を疑った。もちろん、その日は営業所に荷物など1個も入ってこない。事情を説明して納得してもらえたらしいが、ドライバーにはやるせない気持ちが残ったという。だが、「そんな時だからこそ、届けることができたら感動は起こる。これが『おもてなし』なのかもしれない」と本気で思っていたドライバーもいたのも事実だ。

宅配ドライバーの会社、上司への「おもてなし」

 ドライバーは、現場を管轄する支店長の評価で成績が決まる。会社も支店長に一任している。したがって、ドライバーにとって支店長の指示は“絶対”だ。上から支店長に無理難題の命令があれば、ドライバーたちにも無理難題の命令が降りかかる。

 だが、現状の人員や体制では、会社にとって満足な成果は得られない。では、どうしたらいいか。しかも、36協定違反(法定労働時間超過)をしないためにはどうすべきか――。

 その答えは限られてくる。必然的にドライバーはサービス残業を余儀なくされる。ドライバーが自らを欺く行為が、会社に向けての「おもてなし」となっている。会社は見て見ぬふりをする。もちろん、そこには感動や満足はない。そのドライバーの「おもてなし」に甘んじる会社の姿勢が、取り返しのつかない労働環境の悪化を招いた。

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