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山田修「間違いだらけのビジネス戦略」

イオン、過去最高益の「知られざる内実」…本業・流通業の利益はゼロに等しい状態

文=山田修/ビジネス評論家、経営コンサルタント

 しかし実態は、「流通を表の顔として、本業は不動産開発と金融サービス」というのが正しい。イオンは展開している事業を7つの「セグメント」として分類している。今回発表した前半期決算について紹介しよう。

 総売上は4兆1586億円、そのうちの大きなセグメントは以下のとおり。

(1)GMS(総合スーパー)事業:1兆5251億円
(2)SM(マックスバリューなど、イオン以外のスーパーマーケット)事業:1兆6228億円
(3)ドラッグ・ファーマシー(ウエルシア薬局など)事業:3411億円

 これらの流通事業御三家の売上合計は3兆4890億円に上り、総売上の83%を占めた。非流通事業は以下のとおり。

(4)総合金融(金融、保険、銀行など)事業:1979億円
(5)ディベロッパー(イオンモールなど)事業:1649億円
(6)サービス・専門店(ツヴァイ、メガスポーツなど)事業:3977億円
(7)国際事業(海外店舗展開)事業:2039億円

 これらの合計が総売上の17%となった。

 売上を見ると、イオングループは従来型流通業の巨大企業のように見えるが、利益で見ると様相は一変する。(1)~(3)の流通業セグメントが上げた前半期の営業利益額は142億円にすぎない。この金額は3つのセグメントの売上総額約3兆5000億円に対して、ないに等しい。

 一方、(4)~(7)の非流通セグメントの営業利益の合計は704億円に上り、実に前半期グループ合計の営業利益額850億円のほとんどを叩き出している。特に(4)総合金融事業の329億円、(5)ディベロッパー事業の235億円という営業利益額は、イオングループが実はこれら2つの事業に大きく支えられていることを示している。

 イオンの2つの柱の事業というと、実は金融と不動産開発であることを指摘しておきたい。実態は、大規模な流通業の展開を表の顔として、その顧客である消費者に金融サービスを提供して儲け、自らのGMS店舗などを核としたショッピング・モールを立ち上げて外部の店舗を招聘してテナント家賃を稼いでいる、という業態なのだ。利益分析的には、イオンの流通店舗群は、真の利益構築への導線、あるいは隠れ蓑として理解できる。

山田修/経営コンサルタント、MBA経営代表取締役

山田修/経営コンサルタント、MBA経営代表取締役

経営コンサルタント、MBA経営代表取締役。20年以上にわたり外資4社及び日系2社で社長を歴任。業態・規模にかかわらず、不調業績をすべて回復させ「企業再生経営者」と評される。実践的な経営戦略の立案指導が専門。「戦略カードとシナリオ・ライティング」で各自が戦略を創る「経営者ブートキャンプ第12期」が10月より開講。1949年生まれ。学習院大学修士。米国サンダーバードMBA、元同校准教授・日本同窓会長。法政大学博士課程(経営学)。国際経営戦略研究学会員。著書に 『本当に使える戦略の立て方 5つのステップ』、『本当に使える経営戦略・使えない経営戦略』(共にぱる出版)、『あなたの会社は部長がつぶす!』(フォレスト出版)、『MBA社長の実践 社会人勉強心得帖』(プレジデント社)、『MBA社長の「ロジカル・マネジメント」-私の方法』(講談社)ほか多数。
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