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鈴木祐司「メディアの今、そして次世代」

テレ朝、深刻な不振突入…バラエティG帯視聴率上位入りゼロ、人気ドラマS頼みの危険さ

文=鈴木祐司/次世代メディア研究所代表
テレ朝、深刻な不振突入…バラエティG帯視聴率上位入りゼロ、人気ドラマS頼みの危険さの画像1六本木ヒルズ内にあるテレビ朝日本社(「Wikipedia」より/Wiiii)

 本連載ではこれまで、視聴率競争で独走する日本テレビの強さの秘密を分析してきた。実はこの日テレに対して、テレビ朝日が2012~13年に視聴率首位争いで肉薄したことがある。なかでも12年度は、G(ゴールデン)帯(夜7~10時)とP(プライム)帯(夜7~11時)でトップに立ったが、全日でわずかに0.1ポイント届かず、開局以来初の三冠王をあと少しで逃していた。そして翌13年度はP帯で首位を守ったが、G帯と全日(朝6~夜12時)で日テレに及ばず、1冠に終わった。

 その後、14年以降に失速し、日テレに大きく水をあけられるようになってしまった。最新のデータでは今年度上半期(17年4~9月)、全日0.8%、G帯3.1%、P帯2.4%と、日テレに大きく離されている。

テレ朝の勃興

 
 13年4月1日のテレ朝新入社員入社式。それまで10年の同局大躍進の立役者で、初の生え抜き社長となった早河洋氏は、「今日は歴史に残る記念すべき日」と表現し、喜びを素直に表した。「(12年度の実績で)文字通り視聴率業界トップ」「“新しい時代”のテレビを創造するのは当社」など、絶対的な自信を覗かせるスピーチだった。

 躍進の原動力はいくつかあった。「ニュースの商品化」「バラエティ強化」「スポーツ中継による活性化」「ドラマでの勝利の方程式」などだ。

「ニュースの商品化」は、1985年の『ニュースステーション』開始から始まった。民放のP帯として初めて平日夜10時台にニュースを毎日編成し、視聴率を獲るようになったからだ。このあと同局は、『朝まで生テレビ!』『サンデープロジェクト』『ビートたけしのTVタックル』など、硬派な番組で視聴率を上げていった。

「バラエティ強化」も、実は『ニュースステーション』の影響だ。夜10時台がニュースとなったので、他局がニュースを並べる11時台をバラエティとした。いわゆる「ネオバラエティ」といわれる時間帯だ。娯楽番組として事実上競争相手がいない状態で、そこで人気となった番組をG帯に格上げする好循環が生まれた。『お試しかっ!』『シルシルミシル』『ナニコレ珍百景』『お願い!ランキングGOLD』『Qさま!!』等の強力なバラエティ番組が量産されるようになったのである。

「スポーツ中継による活性化」とは、各種スポーツの中継権を取得し、視聴率向上に寄与させ始めたことだ。1997年までにゴルフの全英・全米オープンを放送し、01年に世界水泳選手権をおさえた。02年はアジアサッカー連盟(AFC)が主催するイベントの独占放映権、05年には国際スケート連盟(ISU)が承認するフィギュアスケートも手掛け始めた。他にも、オリンピックやサッカーワールド杯はいうに及ばず、プロ野球日本シリーズやWBC(ワールド・ベースボール・クラシック)などでも、積極的に権利をおさえてきた。他局が手放した中継権も拾い集める間に、種目を問わず日本代表戦が同局のキラーコンテンツに成長し、強力なエンジンになっていったのである。

鈴木祐司/メディアアナリスト、次世代メディア研究所代表

鈴木祐司/メディアアナリスト、次世代メディア研究所代表

東京大学文学部卒業後にNHK入局。ドキュメンタリー番組などの制作の後、放送文化研究所、解説委員室、編成、Nスペ事務局を経て2014年より現職。メディアの送り手・コンテンツ・受け手がどう変化していくのかを取材・分析。特に既存メディアと新興メディアがどう連携していくのかに関心を持つ。代表作にテレビ60周年特集「1000人が考えるテレビ ミライ」、放送記念日特集「テレビ 60年目の問いかけ」など。オンラインフォーラムやヤフー個人でも発信中。
次世代メディア研究所のHP

Twitter:@ysgenko

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