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『直虎』、徳川家最大の悲劇に驚嘆の嵐…戦国の世の不条理を絶妙に演出

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『おんな城主 直虎』公式サイトより

 柴咲コウが主演するNHK大河ドラマ『おんな城主 直虎』の第46回が19日に放送され、視聴率は前回より1.3ポイント増の12.0%だったことがわかった(ビデオリサーチ調べ、関東地区平均)。

 今回も前回に続き、徳川家康(阿部サダヲ)が正室と嫡男を同時に失った「徳川信康自刃事件」が描かれた。家康の嫡男・信康(平埜生成)は織田信長(市川海老蔵)から武田と内通したとのいわれのない罪を着せられるが、お家のために死を甘んじて受け入れる覚悟を決めていた。だが、瀬名(菜々緒)は我が子の命を救うために自分が罪をかぶることを決め、武田と内通したという嘘の手紙を残して逃走した。瀬名の思いをくんだ家康は家臣に命じて瀬名を処刑し、その首を携えて信長に信康の助命を嘆願するが、信康が罪を免れることはなかった――という展開だった。

 謎が多いとされる徳川信康自刃事件を、お家を守るために死を覚悟した者とその身代りになろうとした者がともに命を落とすという悲劇的なストーリーとして描き出した脚本の素晴らしさをまずたたえたい。前回の流れにより、この事件を直親(三浦春馬)や政次(高橋一生)の死と重ね合わせて描いていることは明らかになっていたが、今回はそれがより明確に示された。直虎(柴咲)は、死んでいく者は一様に「お家のために命を捨てるは己の本懐」と言うが、残された者、助けられなかった者の無念を考えたことがあるのかと瀬名に対して激高。鬼のような形相で「もう二度と私はあのような思いはしとうない」と訴えた。ここまでずっと観てきた視聴者にとって、「あのような思い」が政次の一件を指しているのは明白。この時に見せた直虎の表情が政次を槍で一突きにした時に似ていたのもかなり意図的な演出だろう。

 直虎が何をしようが、武家が存続するためには時々誰かが理不尽な理由で死ななければならないという現実は少しも変わらない。信長の人間性や背景が意図的に描かれず、あらがうことのできない現象もしくは「恐怖」として描かれているのも効果的だ。信長に何をされても、徳川家の人々は「信長憎し」では結束しない。ただただ戦国の世の現実を受け入れるのみだ。

 こうした一連の流れにより、脚本の森下佳子は今回のラストにおいて直虎・家康・万千代(菅田将暉)といった主要な登場人物たちと視聴者との間に共通の思いを抱かせることに成功したといえよう。「戦国の世は早く終わってほしい、終わらせたい」という願いである。あのイケイケだった万千代ですら、「かようなことはいつまで繰り返されるのでしょうかね」と戦国の世に疑問を感じ始めた。直虎は、家康に戦のない世を実現してもらうために万千代を支援すると決めた。直虎から「信康の志を宿せ」と諭された万千代は、さっそく家康に「負けた意味は次に勝つためにある」との政次の教えを伝授した。戦が好きではなく、瀬名に尻を叩かれてばかりだった家康が後に天下を取るまでに至る原点が信康自刃事件にあり、さらに元をたどれば井伊家に降りかかった災厄にあったという本作の解釈は、非常にユニークだが筋は通っている。

 ネット上に見られた感想にも、「戦国の世を生きていたら、何度心が壊れてもおかしくない。その度に仕方ないなんてことでは済ませられない」「戦国時代好きで生まれ変わったりタイムスリップするならぜひ行きたいと思っていたけれど、もう武家も乱世も絶対嫌だわ」「これまでの大河は『戦の話早く』ってなりがちだったが、今回ばかりは『戦の無い世早く』ってなる」など、戦のない泰平の世の到来を願う声が少なくなかった。

 また、直虎や万千代の台詞で、何度も政次の顔を視聴者に思い出させるのに、一秒たりとも回想シーンを挿入しない演出にも関心が集まった。視聴者からは「すべて政次につながってくるこの脚本はすごい」「政次の名前が出てこないのに何回も顔が思い出される回だった」「回想を入れないからこそ、観覧しているそれぞれの人の心に残るシーンが回想される」といった感想が上がっていた。最終回に向けて、さらに視聴者をうならせてくれる展開を期待したい。
(文=吉川織部/ドラマウォッチャー)

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