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V・ファーレン長崎の「死角」…奇跡のJ1昇格の光と影

文=編集部
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高田明氏の経営力が奇跡をもたらす

 外国選手を含めた大型補強は一切行わず、監督やスタッフの交代もしなかった。職場環境の改善に重点を置いた。

 テレビショッピングで培ったマーケティング手法やさまざまなアイデアを駆使して観客を動員した。試合前に家電のチャリティオークションを行うなど、観客が楽しめる企画を実施。観客が増えれば選手や監督・コーチのモチベーションが高まるからだ。さらに、元五輪陸上選手の為末大氏をフィジカルアドバイザーに招いた。

 事務局に対しては業務の質と効率を重視するよう指示し、不足している人員を補充した。ことサッカーに関してド素人社長は、社員が気持ちよく働ける職場環境づくりに邁進した。

 3月ごろにはクラブが消えるかもしれないとの不安に怯えていた選手やスタッフが、元気印社長の登場で前向きになり、戦う姿勢をとった。

 地元紙の西日本新聞は11月12日付記事で、経済的支援とテレビの通販番組で培った「対話力」でクラブを救ったと報じた。

「『スポーツを通してみんなを元気にする。ビジネスもそう。人を幸せにすることを起点に考えれば難しくない』。9月には長崎県佐世保市の自宅でバーベキュー会を開き、選手と一緒にカラオケを熱唱。村上祐介主将は『この人のためにも戦おうという雰囲気になった』と振り返る」(西日本新聞記事より)

 これがJ1昇格という奇跡をもたらす原動力となった。11月11日のホーム最終戦は本拠地・トランスコスモススタジアム長崎が過去最多の2万2407人で埋めつくされた。

 高田氏は、奇跡は一過性で終わることを百も承知だ。J1へ昇格したチームのいくつかは、翌年にJ2へ降格している。長崎もJ2に逆戻りする可能性がある。J1にとどまって戦い続けられるかどうかは、資金力が勝負と見ている。

 2016年度のサッカークラブの事業規模を表す営業収益(売上高)は、浦和レッズの66億6600万円が最高だ。一方、J1に所属するクラブの平均は36億4000万円。V・ファーレン長崎の17年1月期決算は営業収益が7億4900万円、最終損益は1億3800万円の赤字。累積赤字は3億2400万円に膨れ上がった。資本勘定は1300万円の黒字で、かろうじて債務超過を免れた状態だった。高田氏が再生に乗り出し、収支を均衡する体制を整え、債務超過の危機を乗り切った。

 J1で戦い続けるには観客動員数2万人以上、営業収益20億円が必要だ。J1で1ケタ台の営業収益のクラブは1チームもなく、ましてや赤字経営のクラブはない。V・ファーレン長崎の営業収益はJ2の平均(13億1300万円)を大きく下回る。しかも赤字経営だ。

 そんな弱小クラブがJ1に昇格した。Jリーグ史上に残る奇跡といわれるゆえんだ。J1で勝つには、有力選手を補強して、なおかつ赤字にならないように経営を安定化させなければならない。高田氏は自らトップセールスに乗り出し、多くの企業にスポンサーになってもらうつもりだ。

 高田氏はサッカーのFIFAワールドカップなどをテレビで観戦するほどスポーツ好きだ。2年をかけて選手、スタッフ、サポータが一体になるクラブにしていく。「将来は、J1の首位争いに食い込めるようなクラブにしたい」と高田氏は夢を追い続ける。
(文=編集部)

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