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南清貴「すぐにできる、正しい食、間違った食」

エナジードリンクは「死の飲み物」なのか?飲用で死亡例…流産や胎児の発育阻害のリスク指摘も

文=南清貴/フードプロデューサー、一般社団法人日本オーガニックレストラン協会代表理事
エナジードリンクは「死の飲み物」なのか?飲用で死亡例…流産や胎児の発育阻害のリスク指摘もの画像1「Thinkstock」より

 筆者は自他共に認めるコーヒー好きです。いや、コーヒー好きでした。というのも、突然5~6年前からコーヒーが飲めなくなってしまったのです。友人の中の、口さがない連中などは「KIYOさんは一生分のコーヒーを飲んじゃったんだから、もう飲まなくてもいいでしょってことなんだよ」と無責任なことを言いますが、当の本人にとっては結構センシティブな問題です。したがって、今は「コーヒー好き」とは言えず、「コーヒー好きでした」と言っております。未練たらたらなのです。

 こんなことになる以前は、1日に少なくとも3杯、多い日は4杯、5杯と飲んでいました。ほとんどは自分で淹れていました。そのため、飲めはしませんが、今でもコーヒーを淹れるのには自信があります。

エナジードリンクは「死の飲み物」なのか?飲用で死亡例…流産や胎児の発育阻害のリスク指摘もの画像2

「飲めなくなった」と言いましたが、実際には飲めます。飲めますが、その後、ひどい目に遭うのです。夜中に胃のあたりが痛み、七転八倒するのです。いささかオーバーな表現ですが、痛みで目が覚めてしまうのは事実です。ひとり寂しくお湯を沸かして、痛みに耐えて、ゆっくりとお湯をすすり、それでも治まらない時は小さく切った昆布を食べたりします。それで、しばらくすると痛みが軽減するので、また寝るというようなことをしばらくの間繰り返していました。

 何人かの知り合いの医師にも聞いたのですが、原因はとんとわからず、結論として「どこかが痛くなるようなことはしないほうがいい」という、愛情のかけらも感じられない答えでした。アレルギーなのではないかという説もありましたが、そんなことはもうどうでもよく、ただひたすらコーヒーが飲みたい衝動が起こった時に耐え忍ぶだけという惨めな日々を送っています。ちなみに、コーヒーを飲まなければ、夜中の痛みは起きません。

 筆者の場合は、「とにかくコーヒーが飲みたい」という強い衝動が起こるだけなのです(それでも本人にとってはつらいわけです)が、いわゆるカフェイン中毒とは違うようです。

 常時カフェインを摂取していると、体にはカフェイン耐性が起きます。カフェインに対して反応しにくくなるのです。そのため、もっとカフェインを欲するようになる。これが依存症の始まりですが、まるで麻薬と一緒です。そして、カフェインを断つと頭痛がしたり、極度の眠気に襲われたり、精神的に不安定になったり、集中力が低下したりと、さまざまな症状が出ることがあるようです。

エナジードリンクで死亡例も

 最近は、そのカフェインを大量に含んだ「エナジードリンク」と名付けられた飲み物が流行し、売れ行きを伸ばしているといいます。また、栄養ドリンクと呼ばれるものにも、市販の風邪薬にも、思わぬほどの量のカフェインが入っています。妊婦がカフェインを摂取すると流産のリスクが高まるといいますし、胎児の発育が阻害されることもあるようなので、飲んだとしても少量に、できればカフェインを摂取しないほうがいいかもしれません。

 妊婦でなくともエナジードリンクを一気に大量に飲むと、心臓に異常をきたし、不整脈を起こし、最悪のケースは死に至ることもあるので、本当に気を付けてほしいところです。アメリカでは、16歳の男子が、日本でも20代の男性が、エナジードリンクの摂取が原因で死亡したことが伝えられています。

 筆者は人のことを言えた義理ではありませんが、コーヒー何杯分ものカフェインを一時に摂ることが、体に良いはずはありません。言い訳がましく申し上げておきますが、無類のコーヒー好きの筆者は、確かに1日に何杯ものコーヒーを飲んでいましたが、一時に飲んだわけではありません。時間をおいて、数時間に1杯というペースで飲んでいました。さらに言い訳いたしますが、別段、カフェインを欲してコーヒーを飲みたいと思うわけではないのです。あの馥郁たる香りと、口に含んだ時の得も言われぬ苦みと、酸味と、微かな甘みのハーモニーを感じたいだけなのです。

 昔、コーヒールンバという曲があり、西田佐知子(司会者・俳優の関口宏氏の奥様)が歌ってヒットしましたが、あの鼻にかかったハスキーボイスはよかったですね。それはともかく、コーヒールンバの中で歌われているとおり、その情熱のアロマは心をうきうきさせ、不思議なムードを醸し出し、飲めば陽気になって踊りたくなるような素敵な飲みものなのです。

 しかし、それはあくまでも適量を飲んだ場合であって、エナジードリンクを何本もまとめて飲むのは決して適量とはいえません。エナジードリンクを飲んで体調を悪くした人の例は枚挙にいとまがないほどですが、問題はそれがわかっていながら、なぜ飲む人が後を絶たないのかということです。

 私たちの体は自然の一部です。だから、体に起こる現象にはきちんとした理由があるのです。その理由を無視して、起こっている現象だけを、その場、その時の事情だけしか考慮せずに無理やり抑えつけようとするのは、大きな間違いだということに気づいていただきたいものです。

眠気は栄養不足が原因?

 多くの方がエナジードリンクを飲むのは、眠気を抑えるためのようですが、その眠気の背後には、単なる寝不足以外に根本的な栄養素の不足や欠落があるかもしれません。また、糖の摂取の仕方が悪く、低血糖状態に陥っているかもしれません。少なくとも、頻繁にファストフードや、コンビニエンスストアの食品を食べている人は、自分の体に重要な栄養素が不足、または欠落していることを疑ってみたほうがいいでしょう。エナジードリンクを飲む前に、そのことを考えるべきです。

 もし、栄養素の不足、または欠落があるのであれば、いくらエナジードリンクを飲んで眠気を吹き飛ばしたとしても、それはあくまで一時的なもので、またすぐに眠気に襲われることでしょう。その時にまたエナジードリンクを飲み、それを繰り返すことになってしまったら、もう健康を保つことはできなくなります。

 エナジードリンクを一気に何本も飲んだり、毎日飲んだりすることがそもそも異常なことだということくらい、多くの人はわかっていると思います。その、わかっている人たちには、ぜひもう一歩先まで考えてほしいのです。自分のこれまでの食生活を振り返ってみれば、そこから見えてくるものが必ずあるはずです。

 食事は、私たちが生きていく上で、もっとも重要視されるべきファクターであり、基盤のひとつです。そのことを考えずにほかの方法をとることが、いかに愚かであるかに早く気づいてほしいと思います。エナジードリンクを製造販売している企業は、売り上げを伸ばすために、ネガティブな情報は流しません。消費者が自分で気づく以外に方法がないのです。同様に劣悪な食品を販売している企業も、自分たちが販売している食品のネガティブな情報は流すはずがないということにも、お気づきいただきたい。

 ところで、筆者は、もうこのまま一生、コーヒーを飲めないのでしょうか。どなたか、この問題の解決策をご存じでしたら、あわれな筆者にその妙案をお教えください。
(文=南清貴/フードプロデューサー、一般社団法人日本オーガニックレストラン協会代表理事)

南清貴

南清貴

フードプロデューサー、一般社団法人日本オーガニックレストラン協会
代表理事。舞台演出の勉強の一環として整体を学んだことをきっかけに、体と食の関係の重要さに気づき、栄養学を徹底的に学ぶ。1995年、渋谷区代々木上原にオーガニックレストランの草分け「キヨズキッチン」を開業。2005年より「ナチュラルエイジング」というキーワードを打ち立て、全国のレストラン、カフェ、デリカテッセンなどの業態開発、企業内社員食堂や、クリニック、ホテル、スパなどのフードメニュー開発、講演活動などに力を注ぐ。最新の栄養学を料理の中心に据え、自然食やマクロビオティックとは一線を画した新しいタイプの創作料理を考案・提供し、業界やマスコミからも注目を浴びる。親しみある人柄に、著名人やモデル、医師、経営者などのファンも多い。

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