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浜田和幸「日本人のサバイバルのために」

ホーキング博士「人類の残り時間はあと100年」…北朝鮮の核脅威で900年短縮か

文=浜田和幸/国際政治経済学者

 今や北極や南極の氷が解けだしているくらいだ。かつて伝染病で亡くなった人や動物が埋められた墓地や埋葬地から、亡霊の如く感染症の遺伝子が再生する可能性が高くなっている。予防ワクチンの開発と配布が欠かせないだろう。とはいえ、最悪の場合には、現代版「ノアの箱舟」計画が必要になる。ゲイツ氏はこうした危機的状況を先取りし、ノルウェーのスピッツベルゲン島に人類救済のための種子の保存を目的とした地下基地を建設しているほどだ。

 杞憂にすぎなければ良いのだが、冷静に今日の世界情勢を分析すれば、ホーキング博士やゲイツ氏の危機感や厳しい見通しに耳を傾ける必要があるだろう。日本でも身近なところで、そうした危機的状況の萌芽を感じることもできる。

キラー・ロボット

 実はアメリカでは、国防総省(ペンタゴン)が音頭を取り、未来の戦場で活躍するロボット兵士、別名「キラー・ロボット」の研究が急速に進んでいる。毎年のように、ペンタゴンの国防高等研究計画局(DARPA)主催でキラー・ロボットのコンテストが実施されており、民間の優秀な頭脳をゲットしようとするアメリカ政府の意図が明確に打ち出されているわけだ。日本を含む世界各国からロボット工学の専門家を自負する大学生や若きエンジニアのチームが参加している。

 この「ロボティクス・チャレンジ」と呼ばれる競技大会では、ペンタゴンが未来の戦場で導入を図りたいと構想している各種のロボット関連技術が競われる仕掛けになっている。優勝チームには2億円を超える報奨金が授与される。飲まず、食わず、休まず、不平も言わず、働き続けるロボット兵士の実用化が目前に迫っていることを実感させるイベントである。

 現在、世界80カ国で殺傷能力を持つロボットの研究開発が進んでいる。その背景には、「将来の戦争においては、ロボットが主役になる」ということが確実視されているためであろう。わが国においても新設された防衛省の防衛装備庁が目的として掲げる主要な研究テーマのなかに「防衛技術のスマート化・ネットワーク化・無人化」がきっちりと組み込まれている。概ね20年後の将来の装備品のコンセプトをまとめ上げ、その実現に向けての研究開発のロードマップづくりがすでに始まっているといえよう。

 いうまでもなく、わが国はロボット技術に関しては民生分野において、世界をリードする立場にある。『鉄腕アトム』『鉄人28号』『エイトマン』『ドラえもん』など漫画の世界から始まり、自動車や半導体の製造工場はいうまでもなく、介護や癒し系の人型ロボットの実用化に関しては、世界を圧倒する技術の蓄積を誇っている。ペッパー君が銀行やホテルを舞台に接客で愛嬌を振りまいている国はほかにはないだろう。「デュアル・ユース」と呼ばれる民生技術を防衛装備として活用する動きは当然の流れになろう。日本政府では新たな輸出産業に育てる戦略を構想中だ。

「インパクト」と呼ばれる「革新的研究開発推進プログラム」に代表されるように、日本では防衛省が音頭をとり、内閣府、経産省、環境省など他の府・省が推進する国内の先進技術育成プログラムのなかから、デュアル・ユース技術として利用できる可能性を徹底的に追求しようとする方針が打ち出されている。

 新たにスタートした防衛装備庁においては、最大の同盟国であるアメリカの国防高等研究計画局や防衛分析研究所(IDA)、国防契約管理庁(DCMA)等と情報交換や人的交流を深めることで、ロボット関連技術についての日米の共同研究開発も視野に入れている。テロ対策にもロボット兵士の活躍が期待されているようだ。

 民間の分野においては、グーグルが進めるGPS機能を活用した無人自動車が注目を集めているが、国防の分野においては自律型無人航空機など、無人装備品の研究が着実に進んでいる。そして、両者の融合が差し迫った課題となっていることは論を待たない。こうしたニーズを先取りするかたちで、グーグルは世界中のロボット技術会社を買収し、ニュービジネスの中心に据えようとしている。グーグルはすでにヒューマノイド・ロボットの販売を本格化させつつある。

AIが人間を支配する日

 こうした動きは、外交・経済・技術といった各要素を一体化する戦略が世界の趨勢となりつつあることが影響している。さまざまな防衛装備品をステルス化・軽量化・無人化するためには、新素材の研究開発も欠かせない。こうした分野でも、日米の官民挙げての協力が要となる。とはいえ、こうした分野で技術の蓄積のある日本企業がアメリカ企業の傘下に入りつつある現状はもったいないといわざるを得ない。日本政府による自国企業支援策の強化が望まれる。

 現在、日本はアジアの近隣諸国に対し、気象海洋業務・航空気象分野・潜水医学といった分野で、防災や災害時の救援活動を視野に人材育成や技術移転協力を行っている。こうした分野においても、ロボット関連技術は極めて重要な役割を果たすものと期待が高まる一方だ。原発の事故現場など危険な環境下ではロボットの活躍が欠かせない。

 その半面、ロボット兵士に対する不安や懐疑的な見方も残っている。まさに、ホーキング博士が懸念するところである。確かに、瞬発力や破壊力は人間の比ではないだろうが、感情を伴わないロボットの行動には、人間らしさが欠落しているために、どのような行動をとるのか、予測不能の可能性もあり、人間のコントロールがどこまできくものか、不安視する声が出るのも当然であろう。専門家の間では「キラー・ロボットは原爆に次いで人類を絶滅の危機に追いやる恐れをはらんでいる」との見方も広がる。

 AIを身につけ、超人的な情報処理や瞬時の判断力は人間を上回るに違いないが、人間を超える存在になったキラー・ロボットたちが、人間を支配下に置くような想定外の行動に走る可能性も否定できないからだ。国連の場においても、キラー・ロボットの導入に関して、慎重な対応を求める声に耳を傾けるべきとの意見も出されているほどだ。

 ディズニーの夢の世界でドローンやロボットと非日常的体験を楽しむのは結構だが、現実の世界にロボットがわが物顔で侵入してくる事態は歯止めをかけておく必要があるだろう。ホーキング博士に限らず、ITの先駆者であるビル・ゲイツ氏やスティーブ・ウォズニアック氏までもが「人工知能ロボットは人類の終わりを意味するかもしれない」と警鐘を鳴らしているからだ。今年のノーベル文学賞に輝いた日系イギリス人作家のカズオ・イシグロ氏も同じような危機感を募らせている。

 生身の兵士に代わるロボット兵士の登場は時間の問題であろう。今から備えておくべきは、そうしたキラー・ロボットに人間的感情が移植されるようになった場合、どちらが主役の座を確保するようになるか、ということだ。また、人間とロボットの一体化、いわゆるサイボーグやヒューマノイドが人類に取って代わる時代も間近に迫っているように思われる。

 今年10月、サウジアラビア政府は世界で初めてロボットに市民権を与える決定を下した。労働力不足に悩む「アラブ世界の石油大国」では、これまで海外から優秀な人材を呼び寄せていたが、厳格なイスラム教のため、束縛を嫌がる欧米人に敬遠され、近年では必要な人材の確保が難しくなってきた。そこで苦肉の策として、ロボットに正式な雇用の場を提供することにしたわけだ。果たして、うまく行くのだろうか。

 こうしたロボット社会が広がれば、「人間に任せていたのでは地球環境は悪化する一方だ。今こそ、われわれロボットが地球を守るため、立ち上がらねば」という“ロボット革命”も起こるかもしれない。そうした近未来シナリオも無視できないだろう。感情を持ったロボットの研究開発も着々と進んでいる。手遅れにならないように、人類とロボットの境界線を明確化させておく必要がある。「あくまで人間が主役であること」を肝に銘じておかねばならない。このままではロボットに主役の座を奪われてしまう日も遠くないように感じられる。
(文=浜田和幸/国際政治経済学者)

浜田和幸/国際政治経済学者

浜田和幸/国際政治経済学者

国際政治経済学者。前参議院議員、元総務大臣・外務大臣政務官。2020東京オリンピック招致委員。米ジョージ・ワシントン大学政治学博士

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