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人間は馬と同じ道を歩んでいる!? 機械との競争にさらされ、経済格差を広げる人類

新刊JP編集部
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人間は馬と同じ道を歩んでいる!? 機械との競争にさらされ、経済格差を広げる人類の画像1※画像:『ザ・セカンド・マシン・エイジ』(エリック・ブリニョルフソン、アンドリュー・マカフィー/著、村井章子/訳、日経BP/刊)

 かつてアメリカにおいて、馬は必需品でした。農村部では農業の労働力として、都市部では貨物や人を運ぶ移動手段として重宝されました。鉄道や電報が発明され、従来の馬の仕事を奪ってもさしたる影響は無く、1900年にはアメリカ国内だけで2100万頭もの馬がいたといいます。

 しかし、「内燃機関」という原動機が発明され、自動車やトラクターが普及すると馬の数は激減。都市部での馬の仕事は自動車に、農村部ではトラクターに取って代わられ、1960年の時点では馬の数は300万頭と、1900年の数の1/7にまで減りました。馬は内燃機関というテクノロジーとの競争に敗れたのです。

 人間は馬と同じ道を歩もうとしているのかもしれません。テクノロジーの発達により機械化が進み、かつては人間が手作業でやっていたことも機械が行っているという時代です。この現象に対しては、「確かに昔ながらの手作業は機械が行うようになったが、機械化が進んだことで新たな仕事が生まれたし、人々の暮らしは昔よりも豊かになっている」という意見を唱える人たちも少なからずいます。でも、本当に私たちは平均的に豊かになったのでしょうか?

 その答えは「NO」だと、『ザ・セカンド・マシン・エイジ』(エリック・ブリニョルフソン、アンドリュー・マカフィー/著、村井章子/訳、日経BP/刊)は述べます。経済学者のトマ・ピケティ氏の『21世紀の資本』が話題となり、格差の拡大が取り沙汰されたのは記憶に新しいですが、本書もまた「資本の偏在」「経済格差」が起きていると主張します。

「平均値」ではなく「中央値」を見よ

 現在のアメリカの1人当たり実質GDPは、40年前の約2倍となっており、大きな経済成長を遂げたことが分かります。しかし、この数字は所得の「平均値」を算出したものであり、決してアメリカ国民の中間層の所得を正確に表したものではありません。

 そこで、100人の所得のデータがあるとして最も所得が低い方から50番目の所得のデータを取ることで求められる「中央値」という算出方法を用います。たとえば100人が英語のテストを受験したとして、全体の平均点が「平均値」であり、下から50番目に高い点数が「中央値」となります。一部の優秀な生徒たちが高得点を取ることにより平均点が異常に高くなることもあり、必ずしも平均値は中間層の点数を表したものとはなりません。そこで中央値を用いて中間層の数値を求めようとするのですが、一人当たりGDPにおいては通常、平均値も中央値も似たような数値になります。

 ところが、1980年以降、平均値が中央値を上回り始め、2010年には一人当たりGDPの平均値は、中央値の約1.8倍にまでになりました。これが意味するのは、テストで一部の優秀層のみが高得点を独占しているのと同じように、一部の富裕層のみが所得を増やしているということです。

 技術革新により全体の生産性は確かに上昇しましたが、所得の増加の恩恵を得られているのは富裕層のみだったのです。

機械との競争にさらされる人々

 この不平等の拡大はもちろん大きな問題ですが、より本質的な問題は別にあります。それは、機械が人々の職を奪うということです。

 本書の中で、確定申告作成ソフトである「ターボックス」というソフトウェアが登場しますが、たったの49ドル(約6000円)で確定申告を作成してくれます。従来のように、企業に確定申告作成を頼むよりもずっと安価で済みます。おまけに、人の手ではなく機械の力で作成するため、より速くより正確なサービスを受けられるのです。

 もはや企業が確定申告サービスを提供する優位性は無きに等しく、数千人の職が危ぶまれる事態となっています。これは、デジタルカメラの普及がアナログカメラを扱う企業を滅ぼしたことと同じです。感光剤や現像液や印画紙などの素材を前提としていたアナログカメラは、デジタル化と画像共有ソフトの流通により一気に時代遅れのものとなり、132年続いたカメラ会社コダックは破産に追い込まれました。

 テクノロジーが発達した事により、馬は車に取って代わられ、アナログカメラはデジタルカメラに取って代わられました。そしていよいよ、人が機械に取って代われる時代がやってきたといえます。

 機械が多くの富を生み出しても、それを享受できるのは一部の富裕層のみであることはすでに述べたとおりです。では、私たちはこれからどうすればよいのでしょうか?

 本書の後半には、これから個人がどうすべきかの提案が書かれており、私たちの未来を描いています。本書を読むことで、私たちが置かれている状況と、それにどう対処すべきかが見えてくるはずです。
(新刊JP編集部)

※本記事は、「新刊JP」より提供されたものです。

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