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大江英樹「おとなのマネー学・ライフ学」

「元を取りたい」で余計に損をする人たち

文=大江英樹/オフィス・リベルタス代表

サンクコスト

 このように「元を取りたい」という気持ちが、もっと損を大きくしているというケースはほかにもあります。たとえばランチビュッフェに行ったときなど、ついつい無理して食べてしまうことがありませんか。目の前にごちそうがならんでいると、あれもこれも食べたくなるという気持ちはよくわかります。

 たとえば料金が2000円だったら、絶対2000円以上に食べて元を取ってやろうという気持ちにもなりがちです。その結果、お腹が一杯なのについ無理して食べ過ぎてしまうということは、割とよくあることです。

 そもそも飲食店のコスト構造は固定費と変動費から成り立っています。お客がひとりも来なくてもかかるのが固定費、来た人数分に比例してかかるのが変動費です。したがってお客がひとりも来なければ固定費分はまるまる赤字になります。お客がひとり来れば(ひとり当たりの料金-変動費)だけ赤字が減ります。いうまでもなく、たくさん来れば来るほど儲けは多くなります。

 たとえば、あるレストランで1000円のランチの変動費が300円だとしましょう。このお店ではひとりのお客が来るたびに700円利益が出ます。一方、このお店が2000円のランチバイキングをしたとすれば、仮に来たお客が3人分食べても変動費は300円×3=900円ですから、このお客から上がる利益は1100円となります。つまりお客は「3人分食べてやったぞ、どんなもんだ!」と思っていても、店も普通のお客以上にがっちり利益を稼いでいるのです。

 食べ盛りの中学生や高校生ならともかく、ある程度の年齢の大人であれば食べ過ぎるということは何も体に良いことがありません。食べ過ぎてその日一日気分が悪かったり、場合によっては次の日まで胃がもたれてしまったりします。

 このように「元を取りたい」という気持ちが往々にしてさらに大きな損を呼び込んでしまうということには注意しなければなりません。

 経済学ではこのようにすでに使ってしまっていて戻ってこないお金のことを「埋没費用(=サンクコスト)」といいます。サンクコストにこだわり過ぎると損をしてしまうということになりがちです。本来、サンクコストはもう戻ってこないお金ですから考えてもしょうがないのですが、人はどうしてもそれにこだわりがちです。
 
 大切なことは、すでに使ってしまったお金のことはできるだけ考えないようにすることです。常にゼロクリアで考え、「ここからどういう判断と行動をすれば最も得になるのか」ということを考えるべきでしょう。
(文=大江英樹/オフィス・リベルタス代表)

大江英樹/経済コラムニスト

大江英樹/経済コラムニスト

1952年、大阪府生まれ。野村證券で個人資産運用業務や企業年金制度のコンサルティングなどに従事した後、2012年にオフィス・リベルタス設立。日本証券アナリスト協会検定会員、行動経済学会会員。資産運用やライフプラニング、行動経済学に関する講演・研修・執筆活動を行っている。『定年楽園』(きんざい)『その損の9割は避けられる』(三笠書房)『投資賢者の心理学』(日本経済新聞出版社)など著書多数。
株式会社オフィス・リベルタス

Twitter:@officelibertas

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