パナソニックのパナホーム完全子会社計画ではオアシスに軍配
株式交換かTOBか――。買い手企業と売り手企業の少数株主の利害は、対立することが多い。買い手にとって株式交換方式による買収はメリットが大きい。最大のメリットは現金の必要がないことだ。現金で賄えば買い手の負債比率が増大する。株式交換方式であれば株式を発行すれば済むため、買収資金を準備する必要はない。大型買収はほとんどが株式交換方式なのは、このためだ。
一方、売り手側の少数株主はTOBが望ましい。TOB価格には時価にプレミアム(割増金)が上乗せされるのが普通だ。
オアシスは、これまでにも株式交換方式を覆してTOBに切り替えさせた実績がある。昨年12月、パナソニックは住宅子会社のパナホームを株式交換で完全子会社にすると発表。パナホーム1株に対してパナソニック株0.8株を割り当てるとした。
オアシスはパナホーム株を買い付けて5%を保有する第2位の株主として登場。「著しく過少評価されており、少数株主に不公平だ」と主張し、「1株1050円でパナホーム株式を買う」と通告した。
オアシスの揺さぶりにパナソニックは腰砕けとなり、株式交換方式を断念。今年4月に1株1200円でのTOBに変更した。この結果、パナソニックは6月に522億円を投じてパナホーム株式を取得、保有比率は80%(TOB前は54%)に上昇した。パナホームは8月末の臨時株主総会でパナソニックの完全子会社になることを承認。9月27日付で上場廃止となった。
株式交換方式だと理論上、1株1002円で買い取られるところを、1200円で売却できたのだからオアシスの勝利だ。パナソニックは現金を使わず買収する予定だったのに、522億円の大金を支払う破目に陥った。
オアシスは、アルプス電気・アルパインで“二匹目のドジョウ”を狙う。アルプスが1株2400円以上でのTOBに切り替えるかどうかが今後の焦点となる。
(文=編集部)